異次元からの制御(3) 随筆のページへ

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FileNo.040710

久英は地球最後の生活をするため、この世に現れた。なぜなら、人類は2050年(±5年)に滅亡するからである。すでに、オゾンホール、温暖化、砂漠化、と滅亡に向けて確実に歩を進めている。人類は進化し、地球を制覇した。時は21世紀を迎え、科学は進歩し、今や最高の時代を過ごしている。その最後の栄華を楽しまない手はない。今回この世に現れるに当ってのゼロバランスレベルは、少なくともその栄華を十分に楽しめるプラスレベルでなければ意味がない。その前提条件を踏まえたうえで、今回の設定がなされたことは言うまでもない。過去からのDNAをたどり調整し、生まれ育つ環境も事前に充分設定された。但し、プラスレベルとは言え、そのレベルはあくまでも多くの人が意識する中流である。一小市民としての楽しみこそ人間本来の楽しみなのだから、設定レベルは、ごく普通の生活を前提とする事が大切だ。

地球に生きるものはすべてがDNAをもっている。そのなかでも大脳新皮質を持った人類は、特別の能力を得た。その能力とは、異次元から自分のDNAを過去に遡って、自分のたどった道を確認できることである。今の自分が関係しているすべてのあり方が、過去から永々と引き継がれ、積み上げられたものなのだ。それは、現在の自分の力で変えることは容易ではない。もちろん、それを凌駕するほどの激しい意思があれば異次元のバランス範囲内くらいは可能ではあろうが・・・。過去から引き継がれ、刻み込まれたイメージに、操り人形のごとく動かされる。弥生時代、北部九州にあった邪馬台国とその近隣の関係国に居たものは、当然卑弥呼や壱与の時代に、近畿へ東征した記憶が刻み込まれている。東征により近畿で大和朝廷を成立させた訳であるから、その歴史のなかでも深く記憶に刻み込まれた時代であったことは間違いない。

その刻み込まれた東征の記憶が現在どう現れているのかと言えば、象徴的なのが芸能界だろう。福岡県佐賀県から何と多くのタレントを輩出していることか。タモリさんはじめ松雪泰子、黒木瞳、井上陽水、松田聖子・・・あげればきりがない。では久英に刻み込まれた記憶はどうだったのか。東征に加わったものの奈良県に入る直前、戦いで命を落としてしまったようだ。長髄彦との激しい戦いによるものであろうか。久英は高校の時、修学旅行で近畿と関東に行った。京都見学の日は全く気配すらなかったが、翌日の奈良見学を前に 夜 突然発熱し、みんなが奈良見学をしている間、京都の旅館でただ一人寝ていた。ところが次の目的地である箱根・芦ノ湖へ向かう頃にはうそのように治っていたのである。久英のDNAは奈良へ足を踏み入れることを頑なに拒否している。以来40年、大阪までは行くものの、どうしても奈良県へは入ることができないでいる。

さて、久英は地球最後を楽しむことと、もう一つ目的を持って現れた。それは、刻み込まれた過去の居住地を回ることである。人間は、死の直前に走馬灯のように人生の各シーンを思い出すが、それに似ている。久英の一生をかけて回り、異次元でその時代とコンタクトをとり最後を惜しむ。福岡市では、前原・志摩・宇美・福岡市などである。就職して一番最初に福岡に居住したのが早良区であり、最初に訪れたのは糸島であった。早良区は吉武高木遺跡の記憶であり、糸島は、邪馬台国の実家であれば当然のことだ。その後、大分では古国府、宮崎では神宮に居住した。ここは説明はいらない。地名だけで充分だろう。久留米は、甘木・御井・八女などに囲まれた地に居住し、佐賀は吉野ヶ里の記憶である。因みに、久英は熊本に居住したことはない。狗奴国との確執の記憶は余りにも根深い。こうして私はもう少しで定年を迎えるが、ほぼその目的は達成しようとしている。

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