かなり前だが、アフリカのコンゴ川に生息する生物を取材したドキュメント番組が放映された。その中で興味を持ったのが、「エレファントフィッシュ」という魚だった。この魚の口は、川底のエサを食べるためか口が長く伸びていて、一見象の鼻ように見える。電気を発する魚で、尾の方に発電器官があり、体の周りに電流の流れをつくっている。この電気の流れの乱れを体の表面で感じ取って周囲の状況を把握している。濁った川の中でも生きていくために獲得した能力である。この魚は高い知能を持っているという。更に詳しく知りたくて、図書館をいくつか回ってみたが、資料は見当たらなかった。
エレファントフィッシュと同じように、体の周りに電気の流れをつくっている魚がいる。南米アマゾン川に生きる「電気うなぎ」である。やはり同じように電流の乱れを感じとって、周囲の生き物や障害物を感じとっている。発電する魚の中でもその発電力は最強である。約500V〜800Vを出し、馬さえも気絶するほどだという。発電は尾の方がマイナス極で、頭のすぐ後ろがプラス極になっている。電流は頭から尾の方へ向って流れる。強力な発電といっても、ひとつの細胞の発電能力は0.15Vと小さい。だがこれを数千個“直列”でつなぐと強力な発電になる。
生物が発電できるのは、体が原子で出来ているからである。原子の構造は、真ん中にプラスの電荷を持つ「陽子」があり、その周りをマイナスの電荷を持つ「電子」が回っていて、バランスを保ち安定した状態にある。細胞も通常ナトリウムイオンとカリウムイオンで安定した状態にある。ところが感覚器官が刺激を受けると、細胞の外側にある陽イオン(ナトリウムイオンNa+)が細胞内に流れ込み電気信号が発生する。情報は電気信号として伝えられる。この電気信号は神経細胞(ニューロン)から次の神経細胞へと次々伝わっていく(但し、シナプス間は化学物質が中継)。この伝導が遅れれば生存が危うい。ネコはこの流れの速さが110m/秒だという。
我々ヒトの体でも当然同じシステムが働いている。目の網膜の視細胞は光を感じると、その情報を電気信号に変換する。これが脳に伝わり、我々は認識する。仮にこの情報が危険な情報であれば、脳は神経細胞を通じて筋肉を動かし、危険を回避する。この脳が出す電気信号が「脳波」である。心臓は生まれてこのかたずっと働き続け、血液をからだ中に送り込んでいる。この心臓が動くことで電気信号を発している。これを感知し、我々が見える形にしたのが「心電図」である。生物発電は、体をつくる原子に陽子があるということを考えれば納得がいく。この微弱な30mV〜40mVの電流をコントロールできれば、人間をもコントロール可能である。
注)『イオンとは・・・電気を帯びた原子。正の電気を帯びた”陽イオン”と、負の電気を帯びた”陰イオン”がある。』 |