映画「グレン・ミラー物語」について
昨年リバイバル公開されたのでごらんになった方も多いでしょう。また本年はじめには新・グレン・ミラー楽団が来日、その演奏に接された方も少なくないでしょう。グレン・ミラーが米空軍軍楽隊隊長、陸軍少佐という肩書きでヨーロッパ戦線に従軍中航空事故で亡くなったのが20年前の1944年、戦前の1939年ごろから死にいたる数年聞は彼の最も人気があった時代でした。戦前にダンス・バントの売れっ子、クラリネットがリードするいわゆるグレン・ミラー・スタイルを確立、軍服を着てからもダンス・テンポの音楽を軍楽隊で演奏、前線の将兵にも圧倒的な人気がありました。アメリカ人にとっては生活の一部にさえなっていたのです。この映画は清新なタッチでグレン・ミラーその人の人格と音楽、円満な家庭人としての温い人間味を数多くのエピソードを通じてたくみに描さだしており、とくにグレン・ミラーに扮したジェームズ・スチュアート、恋人でのちに愛妻となった、へレンのジューン・アリスンをキャストしたことが、音楽伝記映画として成功したゆえんでしょう。 映画は1953年に作られ、日本では翌1954年の正月映画として最初に公開されました。またルイ・アームストロング、ジーン・クルーパ、ベン・ポラックなどのトップ・ジャズメン、コーラス・グループのザ・モダネアーズが特別出演しています。
曲目紹介
(サイド/A)
1.真珠の首飾り
グレン・ミラー夫妻の愛をいろどるテーマとして、たくみに使われていました。数多いグレン・ミラー・サウンド中でも傑作の一つといわれ、壮麗なサックスのハーモニーとシャープなブラスの交錯は、発表当時(1942年)大センセーションをまき起したものでした。
2.セントルイス・ブルース・マーチ
軍楽隊を指揮して空軍の閲兵式に登場、ミリタリー・バンドにダンス・スタイルの音楽をもちこむことに反対していた人たちに、見事にその必要を認めさせる場面に使われ、ユーモラスな効果をあげています。ブルースの父といわれたW・C・ハンディの名曲をミラーがマーチにアレンジしたものです。
(サイド/B)
1.アメリカン・パトロール
イギリスのBBC放送局から全ヨーロッパのアメリカ軍将兵のために演奏される場面にあらわれます。1890年ころから有名だったといわれるずいぶん古い曲です。
2.ペンシルヴァニア6−5000
結婚10周年記念日にミラー家に集まった仲間のジャズメンたちによって演奏されます。当時グレン・ミラーが長期契約を結んだペンシルヴァニア・ホテルの電話番号がタイトルになっています。