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 マントヴァーニ楽団はヴァイオリン群を中心とした大編成のオーケストラで、英国では最も高い人気を持っています。その弦のセクションの演奏はきわめて豊麗で、音色の美しいことは他の追ずいを許さぬものがあり、その独得な魅力と異彩ある演奏は、わが国でも非常な人気をもっています。この楽団のレパートリーは非情に巾が広く、ジャズ系統のものからラテン・アメリカ系のもの、あるいはセミ・クラシックのものにいたるさまざまなものを持っています。

「魅惑の宵」(Some Enchanted Evening)は、リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマーシュタイン二世の脚色したミュージカル「サウス・パシフィック」に挿入されている名詞です。このミュージカルは19541161925回にわたる輝やかしいロング・ランの記録を打ちたてて終演しましたが、これは「オクラホマ」につぐ記録で、近年最も大当りをとったものです。そしてこの曲は「バリ・ハイ」と共に「サウス・パシフィック」の中でも最もヒットした甘美な曲です。

マントヴァーニ楽団の演奏はヴァイオリン・セクションの高音部が、ユニゾンでピアニッシモでフェイド・インしながら、曲の第一のテーマから開始しますが、この部分はやがてヴィオラやセロなどの中音部のユニゾンによる合奏によって、もう一度くり返されます。この間弦の高音部は上行音階風なはやい合奏でバック・グラウンドに配されます。かくてフルートに第二のテーマが現われで情緒をともないながら演奏され、ふたたび第一のテーマはヴァイオリン群の高音都によって、この上なく美しく合奏されます。そして静かに甘く第二のテーマがもう一度フルートによってかなでられ、その終りの小節が消えて行くのにかぶせて次第に数とヴォリュームを増すヴァイオリン群のコーダに入ります。ゆるやかなテンポそしてビ−トを低く落してなだらかに、この曲の持っている魅力を十二分に発揮した演奏を聞かせます。

魅惑の宵
ラ・クンパルシータ

マントヴァーニ管弦楽団