アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズは来日してすばらしい演奏を聴かせてくれました。どのコンサート・ステージでも、「モーニン」と「ブルース・マーチ」を演奏してくれました。「モーニン」はピアニスト、ボビー・ティモンズの名を不朽にした名作であり、「ブルース・マーチ」はテナー奏者ベニー・ゴルソンが特に、このバンドの性格に合せて書きおろした名曲です。このレコードは「サンジェルマンコンサート」(12月21日)に先立っておこなわれたパリの「オランピア劇場」におけるコンサートの現地録音です。
このコンポの最大の魅力は何といってもリーダー、ブレイキーのドラム・ワークです。仔細に検討してみますとメッセンジャーズの歴史には二つの大きな山があります。第一のそれはピアニストのホレス・シルヴァーが参加していた頃です。即ち1954~6年に至る期間で、この間のトランペットはクリフォード・ブラウン→ケニー・ドーハム→ドナルド・バードと名手が続き、サックスはルウ・ドナルドソン(アルト)→ハンク・モーブリー(テナー)と続いて、グループとしての基礎を確立しました。第二の山は、リー・モーガンとベニー・ゴルソンが参加した1958にみられます。すぐれたテナー・サックス奏者であったゴルソンは、また稀にみる作編曲者であり、従来ともすればユニゾン・リフと長いソロによってまとまりを失いかけていたこのグループに、グループとしての表現を確立し、美しいメロディを次々と作って大いに貢献したのです。
「サンジェルマン・コンサート」もこの「オランピア・コンサート」もジャズ・メッセンジャーズの第二期黄金時代のものだけにその感銘はひとしおのものがあります。アート・ブレイキーは1919年ビッツパークの生まれ。39年フレッチャー・へンダーソン楽団をふりだしに、今日の大を築いた名ドラマーであることは御承知の通りです。マックス・ローチと並ぶ現代黒人の二大ドラム奏者で、正確なテクニック、野性的なアタックはことに定評がありますが、フォルテとピアノ、デュミニエンドの繊細な演出のうまさは特記するに足りましょう。
■ ブルース・マーチ
モタン・ジャズが生んだ名曲のひとつです。ソロはトランペット(3コーラス)→ピアノ(1コーラス)の順です。「サンジェルマン・コンサート」とくらべてアドリブが全くちがっているのに驚きます。
■ ブルース・マーチ
「モーニン」と共にメッセンジャーズのヒット曲。ソロはモーガン→ブレイキー→ゴルソンです
モ ー ニ ン
ブルース・マーチ