通りすがりの小さな命 随筆のページへ

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File No.160724

駐車場にポツンと咲いていた野花。いわゆる“根性○○”ということで撮った写真ではない。 植物は成長できる条件さえあれば、どこでも生きていく。 とはいえこの駐車場は、きちんとした区画のラインが引かれていないので、いつ車輪の餌食になってもおかしくない。 要は、頻繁に出入りする車が、この草花を轢かないように配慮してきたということなのだろう。 この草花に、人の心の優しさが見える。 ということで撮った写真である。

近くの小さなため池にいた魚。なまずに似ているように思うが、詳しくないので分からない。 水草に覆われたこの小さな世界が、この魚のすべてである。「井の中のかわず大海を知らず」。 しかし、我々人間も、銀河系の片隅の、豆粒みたいな小さな星に住んでいる。この魚にとってこの池は、天敵がいない、安住の地なのかもしれない。そうであればこんな楽園はない。 ハビタブルゾーンで、ぬくぬくと暮らす人間も、 この魚と大して違わない。

歩いていると、至近距離で、鳴いているセミがいた。 近づいても、一向に逃げる様子もなく、けたたましく鳴いている。 7年間(?)地下に居たセミにとって、一生の最後の十日間である。 種の保存のため、渾身の求愛をし、責任を果たして、命を終える。 文化の中で生きる人間の感覚では、何か哀れを感じるが、そうではない。 命を繋ぐために、長い時の流れの中で勝ち取ってきた生き方なのだ。



入口のドアを開けたら、うずくまっている小鳥を見つけた。 逃げる様子もなく、人懐っこいような目で、こちらを見ている。 余りにか弱そうで、何だか、またいでいくのが悪いような気にさせる。 この小鳥がどんな状態だったのか知る由もないが、ドアをそっと閉めて、別のドアから入った。 しかし、どうしても気になり、翌朝早く見に行ったら、もういなかった。 きっと仲間の所へ、元気に帰っていったと信じたい。


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「無題」