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小説「ケネディ空港・着陸不能」 中国海兵隊・大幅増強3万人
植物の知性 十八銀行とFFGの経営統合

[2018/08/25]
小説「ケネディ空港・着陸不能」
「ケネディ空港・着陸不能」は、映画「ダイ・ハード2」の原作になった小説である。映画では、吹雪のクリスマス、ジョン・マクレーン(ニューヨーク市警)は、妻のホリーを迎えに空港へやって来る。そこで元陸軍大佐率いるテロ集団が、裁判を前にした麻薬王奪回のために上空の飛行機を人質にテロを起こす。いつものようにマクレーンが大活躍する映画である。
その原作となった原題「58MINUTES」のあらすじは次の通り。
巨大なクリスマスツリーが林立するマンハッタン島は、厳しい寒気に覆われていた。予報は数年来の大吹雪の襲来を告げている。フランク・マローン警部は、ロサンゼルスからTWA22便で来る娘・ケイト・マローンを迎えにケネディ空港に来ていた。
マローンは、抜群の統率力で、警察官の鑑(かがみ)として誰からも尊敬される存在だ。ニューヨーク市警の中でも精鋭の集まる対テロリスト課のチーフである。どんなテロリストに相対しても、冷静を保ち精神を集中させる。
クリスマスを前にしたケネディ空港では、秘かにテロリストたちが作戦を進めていた。アメリカ合衆国に戦いを挑もうとするプロの武装テロリスト集団だ。テロはマイクロ波の中継塔への爆破とともに開始された。
「強力な妨害電波です」。トラコン(端末レーダー着陸システム)はじめ、空港監視レーダー、空港面探知レーダー、計器着陸装置、進入指示灯装置すべての機能が失われた。「ケネディ管制塔です。どのスクリーンの、どの飛行機も〜地上も上空も〜すべて消えています」。
この非常事態に、マローンは市警本部へ完全武装の応援要員を要請。同時にFBI対テロリスト課へ緊急事態発生を報告。国防総省へは米軍のE-3A空中早期警戒管制機を要請。それはセントリーと呼ばれ、完全防備の可動偵察指令基地である。
アニー・グリーンは連邦航空局の管制官学校を首席で卒業した女性管制官である。アニーは、妨害電波がどこから発信されているかを見つけるため、沿岸警備隊の遭難救助用大型ヘリH-65の出動を提案。このヘリには、遭難船を見つけるための無線方位探知機がついている。
テロリストの要求が来た。「お前たち帝国主義者の汚いブタ箱にぶち込まれている同士7人の解放だ!」。同時に燃料を満タンにした逃走用の長距離ジェット機も要求した。マローンは、この手配と同時に、主犯格の男の声を、海軍秘密部局へ問い合わせた。
H-65は飛び立ち、操縦室が激しく揺れながらも、無線方位探知機のスイッチが入れられ、電子装置による反撃が始まった。「ここだ!」。小さな三階建ての倉庫を特定。マローンたちの襲撃で妨害電波の装置と、トラックに積まれた予備の装置も破壊された。だが人質にされた4千人の乗った飛行機は、刻一刻と燃料を消費していた。
海軍秘密局によって、テロリストの主犯は、ヴィリ・シュタウプと判明した。シュタウプは、残虐な行為で、世界のあらゆる諜報機関に知れ渡ったテロリストだ。シュタウプの真の目的は、裁判を控えた武器商人アーノルド・ロイドの奪回にあった。
シュタウプの目の前には、7人とともに逃走用ジェット機があった。勝利を確信したシュタウプだったが、マローンたちの激しい攻撃が始まった。シュタウプは、手の中の手榴弾で自爆する。
一方、なすすべの無い管制塔だったが、マローンが要請した米国空軍のE-3A早期警戒管制機が間に合った。「TWA22便へ、我々のレーダーで捉えた。左へ30度曲がれ」。TWA22便は無事着陸し、管制塔は全員が立ち上がり喝采を送った。E-3Aは次の旅客機の救援に向かった。
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[2018/08/19]
中国海兵隊・大幅増強3万人に
読売新聞 西日本新聞
米国国防総省が、中国の軍事・安全保障に関する年次報告書を公表した。読売新聞に掲載された報告書のポイントは次の通り。
中国海軍陸戦隊(海兵隊)は2020年までに3万人を超える規模に
ステルス長距離戦略爆撃機の実戦配備は10年以内か
中国軍の爆撃機が米軍基地を想定した訓練を行っている

急速な中国の軍事能力向上において、2017年の最も重要な変化の一つとして、中国海軍陸戦隊(海兵隊)の増強を挙げた。報告書は、2020年までに7個旅団計3万人以上に拡大すると予測している。現在は2個旅団計1万人であるから、一挙に3倍に増強される。この陸戦隊の増強は、尖閣諸島や台湾などに対する作戦能力の向上を目指している。さらに部隊の展開能力と攻撃能力を向上させるべく、航空旅団との統合もあり得るとしている。

一方、米国の年次報告書の公表を受け、日本の動きについて、読売新聞は次のように報じている。防衛省幹部の話として「中国が水陸両用作戦に力を入れていることが、改めて明らかになった。島しょ防衛の観点から注目すべき事象だ」。この中国軍の動きを視野に、年末の防衛大綱見直しには「島しょ防衛のさらなる向上」「日米同盟の強化」の方針が盛り込まれる。さらに、離島奪還作戦のために結成された自衛隊の「水陸機動団」は、現在2000人規模だが、21年度には3000人に増強するという。

日本版海兵隊である水陸両用部隊だが、いかんせん中国陸戦隊の1/10である。しかも中国の陸戦隊は、これまで陸軍兵士の配置転換によって形成されてきたが、最近は陸戦隊生え抜きの兵士の育成に力を入れているという。中国の部隊や兵器の近代化を見れば、自衛隊が単独で日本を守るのは明らかに困難である。しかも米国の年次報告書では、アジア太平洋における米軍の圧倒的優位が揺らぎつつある厳しい現実を表している。防衛大綱の見直しの方針にある「日米同盟の強化」は必須といえる。

さて、左翼・西日本新聞が米国の年次報告書をどう伝えたか。西日本新聞の記事には、「尖閣諸島」「南西諸島」については一言も書かれていない。私は、中国の軍事行動に関する報告書に、緊迫した尖閣諸島について、なぜ触れられていないのだろうかという疑問を持った。そこで、近くのコンビニに行って読売新聞を買ってきた。ひと目見て驚いた。『中国海兵隊3万人〜20年までに3倍』とあるではないか。しかも、『2017年の最も重要な変化の一つとして、中国海軍陸戦隊(海兵隊)の増強を挙げた』とある。

上の地図を見てほしい。読売新聞の方は、中国軍機の飛行ルート、中国軍の作戦領域、中国軍のH6K爆撃機の戦闘行動半径が書かれ、日本を取り巻く中国の脅威が一目瞭然である。ところが左翼・西日本新聞の地図は、単に第1列島線が示されているだけである。これでは地図を掲載する意味が無い。今回の報道から言えることは、左翼の偏向報道では、日本の領土・領空・領海、国民の生命がどういう状況に置かれているか、我々は正常な判断が出来ないということである。
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[2018/08/12]
植物の知性

ステファノ・マンクーゾ著
「植物は<未来>を知っている」

 吉良竜夫著
「生態学の窓から」

映画「オデッセイ」の一場面
主演:マット・デイモン
監督:リドリー・スコット
SF映画・ 2015年作品
動物と共通の祖先から分岐した植物は、太陽からエネルギーを得ることによって、動かず生きる道を選んだ。しかし、動けないというハンディキャップにもかかわらず、今、地球上の全生物の総重量の80%を占めるほど繁栄している。そこには生き延びるための優れた"知性"を持って環境に適応してきたからだ。「植物は<未来>を知っている」(ステファノ・マンクーゾ著)では、そのメカニズムを詳しく解説している。著者いわく、植物の知性とは、根の一本一本にそれぞれ自立した指令センターが備わっているなど、その"分散された知性"が問題を効果的に解決してきたのだという。

先日、私は「彼らの細胞は確かに、取り巻く環境を五感をもって把握し、生き残りの戦略を立てている」と書いた。植物は、力、方向、時間、強さ、刺激といった常に変化する状況を感じ取り、それに適切に対応し記憶すると著者は言う。体じゅうで呼吸し、体じゅうで見て、体じゅうで感じている。それが植物の"分散化された知性"なのだ。なかでも興味深いのが"視覚"である。ある植物学者の論文によれば、植物は表皮細胞を使って映像を知覚するのだという。またある教授は、葉の表皮が昆虫の目に酷似していることを発見した。葉の表皮細胞をレンズとして撮影した写真は、驚くほどはっきり写ったというのだ。

「植物は<未来>を知っている」では、映画「オデッセイ」も紹介している。先日この映画はテレビで放映された。映画の内容は、火星を探査していた米国チームが、直径1200kmの猛烈な嵐に襲われる。この緊急事態に任務中止、緊急離陸の命令が下される。マーク・ワトニーは、嵐に吹き飛ばされ、生死不明のまま火星に置き去りにされる。しかし、ワトニーは生きていた。NASAの次のミッションまで4年を生き抜かねばならない。優秀な植物学者マーク・ワトニーのサバイバルが始まる。「火星よ、僕の植物学パワーを恐れるがいい」。宇宙食にあったジャガイモを、火星の土と、化学反応でつくった水で400株も育てる。想像以上に育ったジャガイモだが、ハブに小さな穴が開き、ハブが爆発、気圧が失われ、水は沸騰し蒸発、土に中のバクテリアも氷点下の大気にさらされ全滅する。「植物は<未来>を知っている」では、<環境適応能力>の項でこう書いている。『確かなことは宇宙に進出する人類は、植物なしに目的地にたどり着くことはできないということ。私たちが消費する食物も酸素も植物によって生産される。植物なしでは人間の生命は存在しえない』。

「生態学の窓から」(吉良竜夫著)の<植物のたすけあい>の項ではこんなことが書いてある。『スギの植林のみごとにそろったこずえの美しさは、めいめいの木がせい一ぱいのび上がりながら、しかも微妙につり合いをたもっているダイナミックな線である。植えられた場所に運不運もあるはずだが、木どうしの間に、何か力が働いている。それは、はげしい木と木の競り合いではなく、助け合いと調和そのものを現している』。この自然観が、生物の世界のもう一つの原理につながっているのだと著者・吉良氏は言う。恐らく、植物は生存するに必要な太陽からの光を得られれば、それ以上の無駄なエネルギーは使わない。しかも同じ種どうしなら当然共存の道を選ぶだろう。その結果としての美しい景観かもしれない。"助け合いと調和"に植物の"知性"が現れている。食物連鎖の土台が植物なら、我々は"知的生命体である植物"に感謝しなければならない。
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[2018/08/04]
十八銀行とFFGの経営統合
公正取引委員会が十八銀行とフクオカフィナンシャルグループ(FFG)の経営統合を承認する方向で最終調整に入った。平成28年2月の両行基本合意から2年半、随分時間がかかった。問題となったのはすでにFFG傘下に入っている親和銀行と合わせると、長崎県内シェアー70%となり、独占禁止法に抵触する恐れがあったためである。このため十八銀行は、1千億円に及ぶ債権を他金融機関へ譲渡する。これで公取委も承認する方向へ動いたようだ。

私は、少ないながら十八銀行の株主である。この株式は、父親が戦後持っていた株式で、その後母から私へと引き継いできた。従って、利ざやを稼ぐため売り買いをする株式ではない。株主には毎年春と秋、毎期の業績が送られてくる。経営状況は順調に推移している。低金利のこの時節、配当性向25%(1株当たり年間配当7円50銭)は有り難い。しかし、経営統合になると、FFG株と一定比率で株式の交換になるのかもしれない。父からの遺産としての十八銀行株が消えるのは残念である。

景気自体は緩やかな拡大基調にあり、政府の大規模な経済対策の実施も景気を押し上げた。先日の報道によれば、九州の設備投資は29%増で、伸び率は過去最高を更新したという。しかし、銀行の経営環境は依然厳しい。マイナス金利政策の長期化で、銀行の貸出利ざやの低迷が続いている。先日、日銀が長期金利の上昇を容認したことで、利ざや拡大の期待もあるが、当面大規模金融緩和の長期化が続くとなれば限定的だろう。

景気動向もさることながら、長期的な展望に立てば、少子高齢化が進む中、長崎県も生産年齢人口が減り続けている。さらに1行だけでの事業コスト削減には限界がある。経営状況が良好なうち、FFGとの経営統合による経営基盤の強化は、生き残るためには仕方あるまい。だが十八銀行と親和銀行が合併して新銀行が出来れば、文字通り長崎県内で寡占状態になる。長崎県の経済団体は経営統合を求めているようだが、金融機関の競争が失われた状態で、貸出金利高止まりなどの懸念はないのだろうか。

今、テレビで「ラストチャンス」というドラマが放映されている。主人公樫村(仲村トオル)は20年あまり勤務していた銀行がある日突然、他銀行と合併することになり、子会社への出向を命じられる。ところがその子会社では飼い殺し状態になり、転々と職を探すうち、倒産寸前の飲食業の再生に携わることになる。十八銀行とFFGの経営統合により生じた余力は、地元企業の付加価値向上や事業再生の支援に活用するという。耳には心地よい響きだが、簡単なことではないだろう。出向する人の苦労が目に見えるようだ。
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