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随筆のページへ トップページへ File No.160607 |
2016年7月号 |
4月22日、国産初のステルス機「X-2」が初飛行に成功した。初飛行のパイロットは「きわめて安定した初飛行だった。すばらしい機体であることを確信した」とコメントしている。これにより日本は “ステルス機”開発能力があることを世界に知らしめた。アメリカ、ロシア、中国に次いで、世界で4番目である。ステルス機といっても、今回のX-2はあくまでも「先端技術実証」のための実験機である。戦闘機ではないので、ウェポンベイなど実戦機としての装備はない。この開発には日本の高度な技術を持つ多くの企業が参加している。日本のメーカーしか作れないという電波吸収材の宇部興産、機体は三菱重工、エンジンはIHI、主翼・尾翼は富士重工など、参加企業は220社に及ぶ。日本の技術の粋が集められ、日本独自で開発したステルス機が、実際に問題なく飛ぶか、期待した性能を発揮するかなどが今後研究される。この実証研究は当然、戦闘機開発を念頭に置いたものである。F-2戦闘機退役後のF-3開発を可能にする高度な技術基盤が築けるかどうかである。 |
X-2のエンジンにはIHIが開発した「XF5-1」が搭載されている。これは5tクラスのエンジンで、2基で10tの推力がある。試験機なので比較はできないが、F-22は15t×2で30tの推力がある。日本が独自にF-3を開発するとなれば、少なくともF-22と肩を並べるか、それ以上のエンジンの開発が必要である。IHIでは、15tクラスエンジンの開発の目途は立っているという。アメリカは、日本が独自の戦闘機開発するのがよほど気にくわないらしい。F-2開発のとき、日本の独自開発を嫌がって、戦闘機用のエンジンを提供しないと脅し、共同開発にしたという。しかもこの技術格差は、F-2開発費用の全額を日本に負担させ、重要な成果はすべてアメリカが取るという一方的なものだった。そんな過去を踏まえ、今回のX-2の開発は、組み立てが終わるまで極秘で行われ、初飛行にこぎつけた。ところが最近、アメリカでF-22の生産再開の話が出ている。日本に独自の戦闘機開発をさせないために、日本が欲しがっていたF-22を買わせようということらしい。アメリカの都合で日本の安全保障が揺さぶられる。日本が自立した国家であるためにも、F-3の開発は日本の最高技術を結集させた独自の戦闘機でありたい。 |
同「航空ファン」より |
防衛装備庁提供 |
南シナ海における中国の傍若無人ぶりは目に余る。たまりかねたフィリピンは、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。しかし、中国は判断が出たとしても従わないとはっきり言っている。それどころか、南シナ海・スカボロ礁の測量を新たに開始したという。武力の背景があるということは、こういうことである。日本が軍事力を強くすれば、相手もそれに応じて、軍拡競争になると左翼のバカどもは言うが、そんなことはお構いなしに中国は軍事力の増強に余念がない。南シナ海の制空権、制海権を中国が握れば、日本のシーレーンは断たれ、日常生活は即マヒすることになる。その中国が今回の日本のX-2初飛行成功をどう見ているか。中国メディアは『尖閣諸島および東シナ海における長期にわたる緊張した情勢を念頭に、日本は戦闘機の数の点で中国に及ばないことを深く認識しているため、中国に対して技術面でアドバンテージを取ろうとしている』と報じている。つまりこれは、中国がX-2の技術面を高く評価しているということだろう。 |
日本がF-2の試作機を開発して20年になるという。そのF-2は5年前、94機で生産を終了した。戦闘機をつくる高度な技術基盤は、失われれば復活は難しい。伊勢神宮の式年遷宮は、20年ごとに全く新しく作りなおすことで、1300年前の技術が受け継がれてきている。技術を受け継ぐとはそういうことである。そういう意味でも今回のX-2の開発は有意義である。X-2は、エンジンの開発はもとより、実戦機としての装備の搭載、さらに最も困難と思われるアビオニクスの開発がある。防衛省は戦闘機に搭載する「先進統合センサーシステム」を研究・試作している。次世代においては、相手の動きをセンサーで読み、得た多くの情報を一瞬で統合し、いかに先制攻撃できるか勝敗を決める。高度な技術の開発と維持が日本経済に大きな波及効果を与える。「航空ファン」には『技術力はかたちのないポテンシャルである』と書かれている。航空機産業のすそ野は広い。関連産業の期待も大きいだろう。X-2は、技術立国日本を見据えた開発の一歩となってほしい。 |
防衛装備庁提供 |
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2016/06/10 中国軍艦 尖閣接続水域に |
防衛省は、中国海軍のフリゲート艦1隻が、尖閣諸島に入ったと発表した。これまで中国海警局の船が領海侵入を常態化させていたが、中国海軍・軍艦が侵入したのは初めて。軍艦の侵入は、これまでより領有権をより強く主張しようとしたものである。 菅官房長官は「領土、領空、領海を断固として守る」と会見で強い意思を示した。だが、中国国防省は「中国軍艦がわが国の管轄海域を航行するのは理にかなっている」と発表。要するに中国は、自分の国の海域を航行して何が悪いと言っている。 今回の侵入に対する日本政府の対応は見事だった。侵入したのは9日午前0時50分ごろ。未明にこの件が伝わるとすぐ幹部にも緊急連絡が入り、首相から「不測の事態への備え」「米国との連携」が指示された。 今回の中国軍艦の侵入は、選挙前で首相や閣僚が東京を不在にすることが増えている時期を狙ってのこととの見方がされている。軍事力を背景に、南シナ海で傍若無人に振舞う中国だが、いよいよ東シナ海でも本格的な活動開始である。 |