道路に丸！

地図中心524号

地図の雑誌｢地図中心｣の2016年5月号(通巻524)は｢道路に丸！｣として、道路の形における"円形"を特集している。円形と言えば、まず誰もが知る大都市における環状道路、高速道路におけるインターチェンジ、高低差の激しい地形におけるループ橋などがある。特集ではさらに、交通量が少ない交差点でのラウンドアバウト、住宅地におけるクルドサック･サークルなど、道路に現れるいろいろな｢円形｣を解説している。人間が歩いて移動していた時代は、出来得る限り直線の方が効率がよかった。なぜ道路に円形が現れるのか？解説では人口増加による大都市の出現と、自動車交通の普及を挙げ、『曲線の方がスムースに走行できるので、大量の交通を効率的かつ安全・快適に走行させるため円形の道路が生じた』としている。今回｢クロソイド曲線｣というのを初めて知った。これは直線と曲線を繋ぐ緩和曲線のことで、曲線に入るとき徐々にステアリング回し一定の角度を確保する部分である。これまで何気に走っていた円形だが、今後はその効率的な走りを楽しむようになる。

今回の特集がきっかけで、いろいろ調べていくうち、福岡市中央区に｢ラウンドアバウト｣があることを知った。天神の南にあり｢清川ロータリー｣と呼ばれているという。しかし、何といっても福岡における円形の典型は、やはり福岡高速環状線だろう。4年程前、福重JCTから千鳥橋JCTが繋がって環状線になった。ウィキペディアによれば、都市高の両回り環状線としては、日本で2番目らしい。いかにも大都会の匂いである。福岡県には他にも円形の道路が存在する。篠栗町の鳴淵ダムのエントランスもその一つである。ここの鳴淵大橋に続くループ上の道路は、｢鳴淵ダム清流公園｣の中にあり、家族連れが、休日にゆっくりするのによさそうだ。筑後市には｢筑後陸橋｣というのがある。羽犬塚駅の近くにあり、線路を挟んで両側がループ状になっている。ここを初めて走ったときは感動した。ここに関する資料があまり無いが、福岡県では初めてのループ橋のようだ。市街地におけるこのループ橋は、地理的制約を最も合理的にクリアしている橋である。

福岡高速環状線

筑後陸橋

｢ループ橋｣は、筑後陸橋のように地理的制約による円形の道路として、低い所から高いところまでを結ぶ手段である。このループ橋に関する図書がないものかと検索したら1冊だけあった。寺西正勝著｢ループ橋物語｣(1993年・近代文藝社)である。ここに書かれているのは、通称｢奥出雲おろちループ｣(鳥取県)と呼ばれるループ橋である。三つのトンネルと11の橋を、二重ループ方式で結んだものだという。物語は｢古事記｣にある、須佐之男命(すさのおのみこと)がオロチにおびえる稲田姫に出会ったとされる神話がモチーフになっている。人生に絶望したひとりの男が｢おろちループ｣から身を投げて自殺する。ところが落ちていく途中、まぶしく輝く大きな光に包まれ、気がつくと橋の上に戻っていた。そこで出会った美しい女性と恋に落ちる訳だが、じつはその女性はおろちの化身だった。おろちは自分の魂を削って男を助けたのだ。結婚して東京に行こうと迫る男に、ここ奥出雲でしか生きられないと別れを告げ、巨大なおろちが天に昇っていく。

福岡県のループ橋で忘れてならないのが、2008年に完成した福岡市早良区にある｢三瀬ループ橋｣である。福岡市と佐賀市を結ぶ国道263号線の｢三瀬トンネル有料道路｣の福岡市側にある。報道では｢九州最大級のループ橋｣ということだった。ループ直径約220m、高低差約100mで、近くで見るとかなり迫力がある。運転するとステアリングを一定の角度にして、非常に効率よく走ることができる。この｢三瀬トンネル有料道路｣は、福岡と佐賀にまたがっている。管理は佐賀県道路公社がしているが、事業費は双方で出している。トンネルは折半で、ループ橋の工事は全額福岡市が負担したという。このループ橋完成までは、つづら折りになった高低差100mの道をくねくねと走って三瀬トンネルを通っていた。それを思えばループ橋完成による通行料金値上げも納得せねばならないのかもしれない。無料開放は十数年先だという。だが山道を走るのが決して嫌いではない私としては、時間があればハンドルさばきもあざやかに(？)、つづら折りの旧道で山越えしている。

三瀬ループ橋

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三瀬ループ橋　(福岡市早良区)

鳴淵ループ橋　(福岡県篠栗町・鳴淵ダムエントランス)	清川ロータリー(福岡市)
	(ラウンドアバウト)

鳥栖ジャンクション	九州自動車道・福岡ＩＣ

寺西正勝著｢ループ橋物語｣		奥出雲おろちループ(島根県)

地図と学ぶ月刊誌｢地図中心｣（2016年5月　通巻524号）より
野辺町ラウンドアバウト(長野県)	河津七滝ループ橋(静岡県)	クロソイド曲線