刑事司法改革 | 随筆のページへ トップページへ File No.150519 |
平成25年12月、犯罪対策閣僚会議がまとめた『「世界一安全な日本」創造戦略』が閣議決定された。これは国民が安全で安心して暮らせる日本であるとともに、2020年の東京オリンピックを視野に、「世界一安全な日本」を目指すというものである。元々、世界で唯一、無人販売所が成立し、街頭のあらゆる場所に自販機が並んでいる国である。その勤勉で誠実な国民性は、すでに世界に認識されている。しかし、近年これまでに無かったようなタイプの犯罪や、高齢化社会においてますます増え続ける特殊詐欺など、犯罪が多様化している。その一方でベテラン警察官の大量退職などの問題も指摘されている。今、「時代に即した新たな刑事司法制度」が求められている。政府は、先ごろ刑事訴訟法の改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指している。取り調べの「可視化」を義務付ける一方で、「司法取引」という新たな捜査方法や、「通信傍受」の対象事件の拡大など、捜査の武器が検討されている。 |
「通信傍受」であるが、これは現在も実施されてはいる。今回、対象事件が拡大され、電話会社の立会を無くし、常時警察の施設で傍受できるようになる。これまでは薬物、銃器、組織的殺人、集団密航に限られていて、きつい縛りがあったため、ほとんど活用されていなかった。たが、今回これに窃盗、詐欺、殺人、傷害、放火、誘拐、監禁、爆発物、児童ポルノが追加され、より現実に即した捜査で本格的な運用が期待される。だがこういうことになると、必ず出てくるのが、野党や弁護士など左翼の反対である。「憲法が保障する通信の秘密」を持ち出し、「乱用の恐れ」があるというのだ。当然安易な傍受は行われないよう厳しい運用は求められる。しかし、理念だけが先行し、最初から聞く耳持たぬが左翼である。左翼はメディアも含めて、反対のための反対を、狂ったように撒き散らす。この障害物を「世界一安全な日本」のために排除しなければならない。 |
現在、テレビで「天使と悪魔」というドラマが放映されている。これは今回の刑事訴訟法改正案の中に盛り込まれている「司法取引」をテーマにしたものである。天使のような警察官・蒔田(剛力彩芽)と悪魔のような弁護士・茶島(渡部篤郎)が、迷宮入りした未解決事件を「司法取引」という裏取引で解決していく。実にタイムリーなテーマで、毎回観ている。先日の第6話では、危篤状態の里親に会いたいため、受刑者側から司法取引が持ちかけられる。疑うことを知らない蒔田にしてはめずらしく「何か裏があるのでは・・・」と直感がはたらき、事件は解決へと導かれる。この回の冒頭でこんな会話が交わされる。「アメリカでは受刑者から持ちかけられた司法取引の大半がガセネタです」「確かに可能性は高い。だが本当に未解決事件につながる情報なら仮釈放を早めるくらいたやすいことだ」。この会話が司法取引のポイントかもしれない。 |
今回の改正案には盛り込まれていないようだが「共謀罪」というのがある。これは犯罪について、二人以上で話し合い、合意すれば成立する。つまり立証には「会話」が証拠として必要になる。この捜査には「潜入捜査」や「通信傍受」「おとり捜査」などが効果的である。悲惨な被害者を出さないためにも、あらゆる捜査の武器を警察に与えなければならない。近年増え続ける「おれおれ詐欺」の被害は、高齢者を狙い撃ちし、過去最高を記録している。その被害額500億円である。定年後、命を繋ぐ預金を、電話一本で巻き上げる。被害者は悲嘆に暮れ、生きる希望さえも失う。これが許されてなるものか。カネの受け渡し役を逮捕しても未成年を使い、上部組織にたどりつけない。逮捕することが、一番の犯罪抑止になる。「10人の真犯人を逃すとも、一人の無辜(むこ=無実の人)を罰するなかれ」という格言があるという。無実の人を罰することはあってはならないが、10人の真犯人を逃がすなどもってのほかである。処罰すべきものは処罰する。そうでなければ「世界一安全な日本」などおぼつかない。 |
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