ロングライフデザイン
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File No140303

昨年、博多駅近くにある承天寺(じょうてんじ)横に、「D&D福岡」という店がオープンした。この店は『長く続いていることや、ものには、大切な本質がある。そうしたものの中には、わたしたちが生活の中で大切にしなければならない基本がある』を考えの基本としている。扱っている商品は、デザインや機能が消費者に評価され、長く使い続けられている「ロングライフデザイン」商品である。ちなみにD&Dが正しいデザインとする選定基準は次の通りである。
知る・・・・・作り手を知る
使う・・・・・自分たちでまず使う
引取る・・・買い取れる価値のものを販売する
直す・・・・・直して使い続けられるものを売る
続く・・・・・メーカーにずっと作る気持ちがあるかどうか
大量生産・大量消費社会において、商業ベースに乗せられ、次々と生み出されるデザインの洪水。そんな中にあって、立ち止まり親しまれ続けたものに"心地よさ"と”安らぎ”を覚えることに大きな意味がある。

さらにもう一つのコンセプトは、47都道府県で、それぞれの土地に昔からあり続けているデザインの掘り起こしである。今「佐賀県の観光をデザインの視点からみる」というイベントが行われている。都道府県各1冊ずつ「デザイン・トラベル」が刊行されるという。そもそも生活に根差したデザインは、囲まれている気候・風土に培われ、そこに暮らした人たちの工夫の積み重ねで生み出されたものである。佐賀県のパンフレットには『佐賀県には佐賀県らしい素敵な夢がある』と書かれている。『"らしさ"をデザインの視点で再発見する』。つまりそのデザインは47都道府県、それぞれに生きてきた人達の"心"を写した鏡であり、そこに生きた人たちの"誇り"であると言える。

先ごろ、三菱鉛筆の「消しゴム付き鉛筆・9852番」が発売以来59年のロングセラーで、記念色が発売された。そのとき私は「やはりオーソドックスこそ最強である」と書いた。D&Dにあった文房具も、そんな定番商品ばかりが並んでいる。まずサインペンは「ぺんてる S520」。NASAも使った日本の誇るサインペンである。三菱鉛筆のボールペン「BOXY100」は、洗練されたデザインが今も健在だ。シードの「消しゴムRadar S-60」は、プラスチック消しゴムの草分け。「NTカッターA-300」は、会社のHPにも"A型定番商品"と表示されている。「つばめの大学ノート」は、逆に新鮮なデザインという印象さえ受ける。つばめノートのHPには「自信と信念を貫き通しております」と書かれている。この言葉こそが定番商品を作り続ける作り手の姿勢を言い表している。



D&Dに入るとすぐ右手に「22ハイブリッドチューブアンプ」というアンプが置いてある。シンプルで洗練されたデザインである。そのアンプの説明にはこう書いてあった。『真空管が持っている素朴な美しさをありのままに表現したいと考えました。・・・・皆さんのライフスタイルの中で自由に想い想いのスピーカーやプレーヤーを繋いで、「22」が促す心地よい音質と空気感を楽しんでもらえれば幸いです』。真空管の温か味と、現代のテクノロジーが組み合わされ、それを楽しむ人のスタイルが融合する。そんなところにデザインの理想的な形がないだろうか。我々の生活が1960年代に後戻りすることはない。だから、現代に生み出されたデザインの全てを否定するわけにはいかない。ロングライフデザインが、21世紀の生活空間と融合し、心地よいスタイルを楽しむことこそあるべき姿なのかもしれない。
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D&D福岡にあった文房具の一例
「つばめ大学ノート」

「ぺんてるサインペン S520」

「NTカッターA−300」

「三菱ボールペン BOXY100」

「シード消しゴムRadar S−60」
D&D周辺にて

植物が創作したインスタレーション

風雨が描いたデザイン

時間(とき)が描いた古地図

D&Dのメニュー表





2014/03/02 福岡空港にて
ソチ五輪応援
特別塗装機
「がんばれニッポン」
(JAL JA8978)
B777-200
サッカー
日本代表応援
特別塗装機
SAMURAI BLUE
「夢を力に2014」
(JAL JA8985)
B777-200