映画「永遠の0」を観て (ネタバレです。映画鑑賞後にお読みください) |
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この映画は、第6回本屋大賞に選ばれた百田尚樹著「永遠の0」の映画化である。原作は400万部を超える売り上げを記録し、映画は封切から二日間で43万人の観客を動員したという。物語は、孫の佐伯健太郎が、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵の戦友たちを訪ね歩くうち、祖父の本当の思いに辿りつくというものである。「生きて必ず還る」と妻に約束しながら、なぜ特攻で戦死したのか。これは単なる戦争映画ではない。天才パイロット宮部の家族への深い思い、生と死の極限状態へ置かれた特攻隊員の葛藤などを通じて、現代の我々に「生きる」ということの意味を問うている。さらにもうひとつの意味を見いだすとすれば、それは「信念」ということだろう。日本全体が戦争という特殊な環境の中で狂気へと駆り立てられていく。そんな中「臆病者」呼ばわりされ、蔑まれながらも、自分の信念を貫く姿が、常に繋がり合っていなければ不安な昨今の若者への強烈なメッセージとも読み取れる。 |
(あらすじ:映画のパンフレットより) 司法試験に落ちて進路に迷う佐伯健太郎(三浦春馬)は、祖母・松乃の葬儀の日に驚くべき事実が知らされる。実は自分と祖父・賢一郎(夏八木勲)には血のつながりが無く、"血縁上の祖父"が別にいるというのだ。本当の祖父の名は、宮部久蔵(岡田准一)。60年前の太平洋戦争で零戦パイロットとして戦い、終戦直前に特攻出撃により帰らぬ人となっていた。宮部のことを調べるために、かつての戦友のもとを、姉・慶子(吹石一恵)と訪ね歩く健太郎。しかし、そこで耳にした宮部の人物評は「海軍一の臆病者」などの醜い内容だった。宮部は天才的な操縦技術を持ちながら、敵を撃破することよりも「生きて還る」ことに執着し、乱戦になると真っ先に離脱したという。「家族のもとへ、必ず還ってくる」・・・それは宮部が妻・松乃(井上真央)に誓った、たったひとつの約束だった。 |
この映画の主人公は、天才パイロット宮部だが、もうひとつの主役はタイトルにある「零戦」である。山崎監督は零戦についてこう言っている。「米軍機は工業製品で、誰が作っても力で飛ばすことができたが、零戦は工芸品。天才が設計し一流の技術者が作ったので無敵でした。きれいな飛行機で西洋の剣に対しての日本刀。繊細さとはかなさを両方持つ、日本人的な飛行機です」。工業のレベルでは欧米に遥かに劣っていた日本が、格闘性能のはるかに高い戦闘機をつくった。短い半径での旋回、長い航続距離、空母に発着できるなど、戦闘機に求められる優秀な性能を備えていた。アメリカにして「零戦と格闘してはならない」と言わしめた戦闘機だった。初期においてはまさに向かうところ敵なしの零戦だったが、アメリカ軍にグラマンF6Fが登場すると、もはや如何ともしがたい状態となる。戦争末期、零戦で特攻に出撃しても、ほとんどがその目的を果たさないまま散っていった。世界最高だったはずの零戦が、生き残る可能性のない戦闘に出撃していく。そんな零戦に感情移入する人も多いのではないだろうか。 |
「九死に一生の作戦なら喜んで行ける。成功イコール死、こんなのは作戦ではない」。「特攻は"十死零生"の作戦です」。 私はかつて次のようなことを書いた。
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パンフレット |
映画「永遠の0」 2013/12/21 公開/2時間24分 監督:山崎 貴 原作:百田 尚樹「永遠の0」 出演:岡田 准一他 60年の時を超え、届いた「愛」の物語 |
原作本 |
実際に撮影で使われた零戦 (博多駅前に展示) | |