小胞輸送 | 随筆のページへ トップページへ File No.131210 |
今日(12/10)はノーベル賞・授賞式の日である。今年(2013年)のノーベル医学・生理学賞は、小胞による輸送のメカニズムを解明した三氏(シェクマン博士、ロスマン博士、スードフ博士)に贈られた。ところがこの研究に関する報道は、発表当時に一瞬あっただけで、その後雑誌等も含めて全く目にしなかった。ということで調べてみたが、以下十分理解しているとは言い難いので悪しからず。まずはその輸送システムだが、細胞内の小胞体でタンパク質が製造される。このタンパク質は未完成品のため、完成品にするべくこれらを膜で包んでゴルジ体へ輸送する。このタンパク質などの物質を膜で包んだものが小胞である。小胞には目的地だけと融合する特殊なタンパク質が付けられ、確実に送り届けられる。ゴルジ体で完成したタンパク質が目的地へ送られる。また小胞による輸送は神経伝達でも使われ、小胞内の神経伝達物質が正しいタイミングで次の細胞に伝えられる。 |
この流れの中でシェクマン博士は、小胞の輸送をコントロールする遺伝子を発見した。タンパク質などの輸送は、それぞれ配送用のシグナルによって行先が指定される。このシグナルをもつタンパク質をつくる様々な遺伝子があることを発見した。ロスマン博士は輸送先に確実に受け渡す仕組みを解明した。小胞も受け取る側も膜でできている。この膜同士が融合して、確実に荷物の受け渡しを行っている。それは正しい輸送先でしか融合しないようにつくられている。スードフ博士は、神経の活動が小胞の働きで正しいタイミングで次に伝わることを発見した。神経細胞は神経伝達物質を放出することで情報伝達を行う。情報が来ると細胞の外からカルシュウムが入ってくる。これを小胞が感知し神経伝達物質が放出され、次々に情報が伝えられていく。小胞による輸送は、細胞をもつ生物では基本的な仕組みの一つである。そのメカニズムは知れば知るほどそのすごさに圧倒される。ノーベル賞授賞が、改めてそれを気づかせてくれる。 |
テレビドラマ「安堂ロイド」(第7話)で、マシンについてこんなことを言っていた。「基本は1種類のナノマシン。空気中の原子を取り込んで、自己複製し、目的の機能に合わせて分化していく。これじゃ、生き物と同じじゃないか」。つまりナノマシンがすなわち細胞である。地球上に生きる生物は、すべて細胞で出来ている。一つの細胞は1ミリの100分の1ほどしかない小さいものであるが、これが細胞分裂を繰り返すことによって増殖していく。細胞の寿命は長くはない。自己複製して補充していく。よく言われることだが、1年も経てば見た目は同じでも、全く新しい細胞に入れ替わっている。さらに種の保存のために遺伝情報が次の世代に受け継がれていく。最終的に人間は同じ遺伝情報を持つ約60兆個の細胞によって形成される。つまり人間は細胞にとって、細胞が生きていくための巨大な共同社会なのである。だが人間は心をもっているから、人間と細胞は、共生関係と言えるのかもしれない。 |
テレビドラマ「安堂ロイド」では、各回の終盤でこんなセリフがある。「原子還元処理の許可を申請する」「原子還元処理を実行する」。これによって敵のアンドロイドを消滅させる。これは地球上の生物にとっても全く同じである。以前私はこんなことを書いた。「・・・古い部品は壊され、原子分子となって再び宇宙を構成するということを意味している。言ってみれば、生命とは、宇宙で離合集散を繰り返している物質の、ある一瞬に現れた秩序だとも言える」。40億年前、分子状態の無機物が、何らかのエネルギーをうけて有機物を生み出した。永い時間を経て、つくり上げてきたその秩序はすばらしい。個々の細胞が生命活動を維持し、それぞれの細胞同士が絶妙に影響し合って一つの生命体を形づくる。今回のノーベル賞受賞の研究内容のように、その連携プレーは実に見事である。人間はやっとこの芸術的作品を理解する入口に立った。だがあくまでも細胞の上に立とうとせず、良い共生関係を維持していくほうがいいのではないか。 |
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SF映画「ガタカ」(1997年 米) | ||
この映画の時代は、生まれるとすぐ推定寿命と死亡原因が明らかになるような未来社会である。
しかし、ヴィンセントは、遺伝子操作をせず生まれてきた「不適正者」だった。それでも、夢は第1級宇宙飛行士になることだった。そこで闇のマーケットで売買されている「適正者・ジェローム」の生体IDを買い取り、なりすましで宇宙局「ガタカ」に入る。
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