サイバー戦争 随筆のページへ

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File No.130620
パソコンの故障で10日ほどアナログな生活を送ることになった。図書館から本を借り、要点をノートする。ノートは"アピカのCDノート(紳士なノート)"、ボールペンは、このノートと一番相性のいい"ぺんてるのエナージェル"である。ほぼ50ページほどノートした。傍には"大辞泉"や"現代用語の基礎知識"を置いている。図らずも「IT断食」をすることになった。デジタルに慣れてしまっている我が身としては、多少の不便を感じながらも悪くはない毎日だった。それはデジタルとアナログの間にある距離感であり、人間本来の感覚をよみがえらせるのに必要と感じさせるものであった。と同時に、インターネットから得る情報のスピードとボリュームは、圧倒的であることを改めて実感させるものでもあった。デジタルは、社会全体を飛躍的に便利にしてきた。しかしそれを動かしているのは、あくまでもアナログな人間である。

元CIA職員が、アメリカのNSA(国家安全保障局)による情報収集の内情を暴露するという事件が起きた。この事件は大きな波紋を広げ、アメリカ国内はもとより欧州各国を巻き込んで、情報収集の在り方が議論されている。オバマ大統領は、テロ対策のためやもうえない措置だとして、「完全な安全保障と、完全なプライバシーは両立できない。社会はその問題をどこかで線引きせねばならない」と説明した。9・11以降、アメリカはまさにテロとの戦いの中にある。つい最近もボストンマラソンで、3人が死亡、300人近くの負傷者が出ている。言ってみれば"戦時下"である。「緊急事態基本法」では、基本的人権を尊重し必要最小限にとどめるとしつつも、国民は国からの制約を受け入れなければならない。国家は国民の生命と財産を守る義務がある。プライバシー保護とのバランスを取りながらも、その過程における情報収集は、許容されるべきである。ただし、その情報のセキュリティは、人的脅威も含めて、国民が安心できるレベルでなければならない。

映画「ダイ・ハード4.0」では、アメリカの全てのインフラに攻撃が仕掛けられ、メディアまでも制圧される。しかしこれは今や現実問題である。アメリカの国家安全保障省やニューヨーク・タイムズなどへ、中国が関与したと思われるサイバー攻撃があっている。ところが、米中首脳会談では、米中両国で作業部会を立ち上げ、サイバー攻撃に対する共通理解を深めるという段階で、国際的な規範すらないのが現実である(ただし、サイバー空間においても国際法が適用され、国家主権が及ぶという認識は確認されている)。オバマ大統領は、今年の一般教書演説で、電力網や経済システム、航空管制システムといったインフラに対するサイバー攻撃に懸念を示した。おそらく次に戦争が勃発したときは、サイバー戦争を制した国が、圧倒的な勝利を収めると思われる。後れをとった国は、一瞬にして国家全体がマヒし、なす術もなく敵のミサイルが雨あられと降ってくる。サイバー空間における国家間の戦闘態勢は着々と進行している。

今、日本でも政府機関や防衛産業などを狙ったサイバー攻撃が頻発している。国家機密、先端技術、知的財産がいとも簡単に盗まれ、その全容すら把握できていない。しかも、盗まれるだけではない。日本国内数千台のサーバーは、設定不備のため、サーバー機能を悪用されかねない状態にあるという。かくも日本の危機管理は脆弱なのである。そんな中、政府はサイバーセキュリティ戦略を正式決定し、サイバー攻撃に対する防衛に動き出した。さらに安倍内閣は、日本版NSC(国家安全保障会議)の設置についても、法案を国会に提出した。これまで外務省や防衛省、警察庁など、縦割りだった情報を一元化し、総理が的確かつ迅速な決断を下せるようにしようとするものである。だがこれまでの官僚による縦割りを、横断的に支配するのは相当難しい。NSCを設置したとしても、重要な情報が上がってこなければ形骸化する。日本は「国破れて官僚あり」になりかねない深刻な状況にある。ここはひたすら安倍総理の強力なリーダーシップに期待したい。


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2013・06・22 米、元CIA職員を訴追
米司法省は、スノーデン氏をスパイ防止違反や、情報窃盗などの容疑で訴追した。この訴追によりアメリカは、インターポールに国際手配を要請し香港からの渡航を阻止するとともに、香港当局に身柄の引き渡しを求めることが出来るという。

今回の内部告発は、中国が仕掛けたと言われている。アメリカは、今回の米中首脳会談で「サイバーテロ」を重要課題としていた。それに先立つアジア安全保障会議では、米国防長官が「中国政府と中国軍部が関係しているようにみられる」と中国を批判していた。

今回の内部告発があったのは、米中首脳会談の直後という絶妙のタイミングだった。これで米国は、世界から批判受けることになり、米中の形勢は一気に逆転したのである。中国国内では市民が、中国のために大きな仕事をしたと支持しているという。

アメリカは、犯罪者の引渡し協定に基づき、香港に要請する。だが香港の基本法では、外交・防衛については中国が責任を負うとなっている。事件が政治的な性質と見なされれば身柄引渡しで、米中間の外交問題に発展する可能性もあるとの見方が出ている。
2013・06・24:スノーデン氏は、エクアドルに亡命する模様。
アメリカが香港に身柄引き渡しを求めていたが、香港は米国の文書が要件を満たしていないとして、スノーデン氏の身柄を拘束しなかった。