西鉄 1 DAY PASS

(柳川・北原白秋〜佐賀・ナント美術館展)
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File No.130309

西鉄の 「1 DAY PASS」で歴史散歩をしたのは、一年ほど前のことだった。その後このプランは、パワーアップし、続行されている。以前、久留米までだったエリアが、新たに柳川まで拡大された。そこで拡大されたエリアをフルに活用して旅を楽しんだ。今回のルートは次の通り。天神(電車)柳川(バス)佐賀(バス)久留米(電車)天神。出来るだけゆっくり時間をとりたいと思い、朝早く出かけた。7時前、「1 DAY PASS」を購入し、7時発の大牟田行き特急(8000形)に乗りこんだ。もちろん見晴らしのいい先頭車両の一番前の席を確保した。途中、3000形などとすれ違いながら、一路柳川へ。
7時48分に西鉄柳川駅に到着。丁度「柳川雛祭り・さげもんめぐり」が開催されている。街のショーウィンドーには、カラフルな飾り付けがされている。特に柳川の「さげもん」は、古くから伝承されたもので、より一層の華やかさを演出している。もう一つ柳川の名物に「川下り」がある。前日に「お堀開き」の神事が行われたばかりで、堀割は豊かな水をたたえていた。天気は快晴、暖かいそよ風に吹かれながらの川下りは気持ちよさそうだ。私も北原白秋生家を目指し、途中「日本の道百選」に選ばれた道を楽しみながら歩いた。
北原白秋の生家に向かう途中、「白秋道路」という掘割沿いの道がある。白秋が中学伝習館に通学していたという道である。ここを過ぎると、いよいよ生家である。中には白秋を偲ばせる多くの資料が展示してある。生家の奥には「歴史民族資料館」があり、2階に、白秋の生い立ちから、生涯の業績が分かるように展示がなされている。柳川が誇る詩聖・北原白秋ということで、市内にも多くの文学碑がある。西鉄柳川駅には「からたちの花詩碑」があり、掘割の岸には「色にして 老木の柳 うちしだる 我が柳河の 水の豊 けさ」という歌碑が立っている。「白秋道路」の案内板に「この道路は、白秋の詩歌を生んだ路であり、現在も詩情豊かな遊歩道となっています」と書かれていた。ゆっくり散策することで、詩情豊かな水郷柳川が、白秋の感性を育んだことが感じられる。





さて次は、西鉄柳川駅から佐賀市内に向けて、バスの旅である。心地よく揺られ、町並みが通り過ぎていく。筑後川を渡っているとき、遠くに「昇開橋」が見える。この橋は国鉄時代「大川−佐賀」間を走っていた佐賀線の橋梁で可動式である。廃線後も文化財として残され、いまは歩道橋になっている。佐賀市内に入り「片田江」バス停で降りる。佐賀城内には、県庁をはじめ、歴史館、博物館、図書館、美術館といった公共の施設が並んでいる。城内に入ってすぐ、巨大な現代アート(?)でお出迎えである。樹の枝葉を落としたものだろうが、偶然にしてはよく出来ている。ここの一番奥に佐賀県立美術館がある。
美術館では「フランスの宝石箱・ナント美術館展」が開催されている(1/25〜3/10)。説明によれば、ナント美術館は、19世紀初めに創設された美術館で、フランスの中でも屈指の歴史と伝統を誇っているという。その歴史を物語るように、13世紀のイタリア絵画から現代絵画まで、その所蔵作品は幅広い。今回19世紀から20世紀にかけての作品を展示しているが、我々が西洋絵画の歴史をたどるのには、願ってもない展示である。
アカデミズム絵画からバルビゾン派、印象派、キュビスムが並んでいる。サロンの重鎮・ジェロームの「羊の角をつけた女性」があるかと思えば、シャガールの「四季」がある。展示室の中央に立てられたボードの片面には、「ルノワール」と「モネ」があり、もう片方には「ピカソ」と「ローランサン」が掛けられている。順路に従って観ていくと、西洋絵画の変遷が実によくわかる展示になっている。
それぞれの時代に、その時代が要求した絵画があり、またそれを打ち破ろうとして葛藤し戦った画家たちがいた。バルビゾン派は自然の中へ出て、感じるままに風景や農民を描いた。それを更に進めて、印象派は一瞬の光をキャンバスに留めようとした。その後にピカソのキュビスムがあり、現代絵画へと変遷していく。だが必ずしも彼らは、その時代に受け入れられた訳ではなかった。自由な表現に信念を貫いた画家たちの歴史である。この展覧会はそんなところに印象深いものを感じた。
帰りに、いつものように絵ハガキを買った。シスレーの「モレ=シュル=ロワンの運河沿い」(1892年)と、ルノワールの「アネモネ」(1900年)の二枚である。シャガールや、カンディンスキーの「黒のグリッド」などもあれば買いたかったが限られた種類しかなかった。結局買った二枚は、印象派を代表する画家たちだった。部屋に飾るのに、やはり印象派の色彩を選んでしまう。






柳川でも、美術館でも、時間をたっぷりかけて楽しんだ。当初は、時間があれば久留米で石橋美術館に行こうかと思っていたが、久留米に着いたのはすでに5時過ぎだった。
「1 DAY PASS」は、利用の仕方によってはかなり得になる。今回も恐らく3割以上安かったと思われる。加えて改札を通る時、券をかざしてサッと通る、あの感じもいい。
夕方6時過ぎ、無事天神駅に到着。いつものように「INCUBE」を覘いて帰路に着いた。



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