航空管制官 随筆のページへ

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File No.121111

テレビで「TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜」という連続ドラマが放映されている。これは東京国際空港(羽田空港)を舞台に、航空管制官の活躍が描かれている。航空管制官を描いた地上波連続ドラマは初めてだという。すでに第4話まで放映されているが、私は第1話からじっくり観ている。管制塔、ターミナルレーダー室など、普通見ることのできないところで、どんな機器をどう使って、どんな判断を下しているのか興味深い。もちろん管制官たちの、緊迫した状況で安全を確保する姿が一番の見どころである。第1話ではバードストライクで片肺飛行。ダウンバーストの回避。第2話では不審者、不審船による滑走路閉鎖。第3話では機械トラブルなどによる、離着陸機の混雑。第4話では積乱雲の中をレーダー誘導など、毎回見ごたえのあるストーリーになっている。深田恭子ちゃんの可愛さも、見どころである。彼女は、カメラアングルを選ばない完璧な顔立ちをしている。

「航空管制業務とは、航空交通の安全を図り、その秩序を整える。すなわち、衝突を防ぐことと、航空機の秩序ある流れの促進とその維持を行うこと」(第1話)。航空管制官は"世界でもっとも困難な職業"と言われているという。ドラマの中で言われる管制官に関する部分を拾ってみた。(第3話)「航空機はオートフライトできますけど、管制に自動化はありません。一人一人に高い能力が求められます」。(第1話)34Rへのゴーアラウンドのあと、結城(時任三郎)が言う。「管制官は結果がすべてだ。人間は必ずミスを犯す。大事なのは今回のようなミスが起きた時に、チームワークでカバーしあえる管制を、どう築いていくかだ。それだけは忘れるな」。そんなチームワークを伺わせるシーンもある。「西川君の操縦する航空機はたくさんの管制官が見守っているんだから、安心して操縦して。一人じゃないんだから」。


羽田空港
(手前がD滑走路)
羽田に4本目のD滑走路の運用が始まり、来年3月には発着枠が1日25便増枠になる。ドル箱の羽田便であるから、航空会社はどこもこの枠がほしい。そこでJALとANAが激しいつばぜり合いである。ANAは「経営破たんした企業に、発着枠を受ける資格はない」と言っている。ANAの主張には一理ある。JALは2012年3月期決算で、純利益1860億円という、史上最高の利益をあげた。しかし、JALは国の企業再生支援機構から3500億円の出資をうけ、5200億円の借金は棒引きで無借金状態になり、しかも繰越欠損金によって法人税は免除である。こんな不公平は最初から分かっていたことだ。何も手を打たない政府も政府だが、これで儲かりました、株式も再上場しました、羽田の発着枠をくださいというJALにも納得がいかない。他社と同じ土俵で、公平なビジネスができるようになってからの話だろう。政府は枠の配分対象にJALを加えるつもりのようだが、JALの方から辞退すべきだ。ドラマではJALのB777が使われているが、下心が透けて見える。


羽田に4本目のD滑走路ができたことで、年間30万回だった発着回数が、段階的にではあるが1.5倍まで増える。羽田は今でもラッシュ時には、2分に1機が着陸するという。しかもD滑走路ができたことで、たとえば南風の場合、A(16R)、C(16L)で離陸し、B(22)、D(23)に着陸するという運用になる。この交差の管制はかなり難しいことになる。シミュレータでかなり訓練を重ねてきたようだが、管制官たちは相当神経をすり減らしているに違いない。「ゴーアラウンドして下さい。離陸機が滑走路に誤侵入しています」。さらに難しいのが、旅客ターミナルと滑走路を行き来する航空機が滑走路をひんぱんに横切ることである。結城「D滑走路が新たに出来てからは、俺たちの負担は大きく増えた。国はそんなことを考えやしない。出来るだろうの一点張りだ」。ドラマを観ていると、管制官の業務が実にアナログなのがわかる。言ってみれば、交差点で警官が手と笛で交通整理しているようなものである。こんな羽田で管制官たちが、年間6000万人の安全を守っている。
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第6話 「究極の選択〜1人の命VS200人の命」
最高に面白かった。緊迫した中で管制官が、冷静に正しい判断を下す。それは緊急事態を切り抜ける時の次の二人のセリフに象徴される。
佐藤 「航空機を安全に下ろすにあたって、リスクを最小限にすることを考えて判断するのが俺たちの仕事です。大臣の命だって大切に決まっている。しかし、後方には200人の命が乗っているんです」
結城 「この状況では近藤の判断が賢明です。判断に間違いはありません。このままJプライムを先に下ろします」
その究極の選択をしなければならなかった状況を箇条書きにしてみよう。
1、 羽田空港は、25ノット以上の横風が吹き、16Lと16Rが使えない。
2、 D滑走路は、着陸機からのオイルもれで一時閉鎖されている。
3、 使える滑走路は「22」一本だけ。
4、 近隣の成田も風が強くランウェイクローズ。静岡も雨で視界が悪く着陸は困難。
5、 国土交通省大臣を乗せた政府専用機が、オーストラリアへ向け離陸した。ところが離陸後40分、機内で大臣が脳梗塞で倒れ、心肺停止状態になる。一分を争う緊急事態で、政府専用機は「エマージェンシーを宣言します。いますぐ引き返す。緊急着陸を要請します」。
6、 その直後にJプライム機からもエマージェンシーがかかる。乗客200人を乗せたJプライム機は、エンジントラブルで片方のエンジンが停止。電気系統の火災の疑いがあり、もう片方のエンジンも火災の可能性がある。
7、 両方の飛行機の羽田までの距離は、政府専用機が60マイル、Jプライム機が70マイル。
8、 この状況では、政府専用機の方が羽田に近い位置にあり、しかも先にエマージェンシーを宣言しているので、政府専用機に優先権がある。
9、 ところが、政府専用機はオーストラリアまでの燃料を積み、わずか40分しか飛んでいない。これでは重量オーバーで、着陸の規定をクリアできていない。このまま、着陸すると車輪を折ったり、滑走路をオーバーランする可能性がある。もし事故になれば、後方で待っている多くに機が行き場を失う。
10、 政府専用機から、緊急着陸なので、羽田に向かいながら、燃料を投棄したい旨の許可を要請してくる。しかし、そうすると後方のJプライム機に燃料がかかり、運行に支障をきたすため許可できない。
11、 政府専用機には心肺停止状態で、一刻を争う大臣が乗っている。Jプライム機は、動いているエンジンがいつ停止するか分からない。使える滑走路は、近隣を含めて、羽田の「22」のみ。ここで「究極の選択〜1人の命VS200人の命」である。
12、 「Jプライムを先に行かせよう。政府専用機の燃料投棄は許可せず、Jプライムの後についてもらう間に消費してもらう」「着陸の危険がある航空機を滑走路に下ろすことはできない」
上層部からの激しい指示を受け付けず、Jプライム機を先に下ろす。
しかしその結果、近藤はマスコミの激しい非難にさらされることになる。



2012・11・29 羽田発着枠配分、決定へ
国土交通省は、来年3月末から1日25便増える羽田空港の発着枠の配分基準を決定した。経営破たんしたJALは3便程度に抑え、ANAの8便と大きく差をつけた。残りは新興航空会社4社へそれぞれ3〜5便程度を配分する。新興航空会社のうち九州関係では、スターフライヤーに5便程度、スカイネットアジア航空に3便程度になる見通し。羽田便はドル箱路線で、1便で20〜30億円の売り上げ増が見込めるという。

第3話、交流会(パイロット・CA・グランドスタッフ・整備士・管制官)での発表
「飛行機が飛び立ち、目的地に着陸するまで」
みなさん、航空機が離陸して、着陸するまでの間、多くの管制官がサポートしているのをご存じでしょうか。
1機の航空機が飛び立つ場合、まず空港内にある管制塔の管制官が離陸を許可。
 「JAL517 離陸許可します」
車輪を格納するまでを担当。
空港内にあるターミナルレーダー室の管制官へと引き継がれて
 「JAL517 出発レーダー確認しました」
その後、各空域をコントロールするACC(航空交通管制部)の管制官へ引き継がれ、
 「JAL517 方位270度で名古屋に飛行してください」
 「高度24000フィートに上げてください」
予定の飛行ルートを案内していきます。
そして、航空機が目的の空港に近づくと、離陸とは逆の順番で、
ターミナルレーダー室、管制塔へと引き継がれ、無事に着陸します。
尚、地上走行は管制塔のグランド管制官が行います。