維新の会・橋下氏・来福 随筆のページへ

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File No.121022

10月20日夕方5時、JR博多駅の駅前広場と空中回廊は聴衆で埋っていた。私は、10分くらい前に行けば十分だろうと思っていたが、とんでもない状況だった。聴衆が待っていたのは日本維新の会代表の橋下氏である。次の衆院選へ向け、全国遊説を始めた初日に福岡を訪れた。満面の笑みで街宣車に上がった橋下氏を、みんなが大きな拍手で迎えた。橋下人気を伺わせる聴衆の熱気であったが、逆に地方に基盤のない新党はその人気だけが頼りとも言える。橋下氏が来ることを、駅前の行き交う人に訴えていたのは、大阪維新の会の府議たちだったという。それだけに魂のこもった有権者へのアピールだった。「飛ばし過ぎてのどをやられました」と、メディアを通してしか見られなかったあの橋下氏が、目の前で声をからして主張を訴えた。初めて国政へ進出する維新の会の実力は未知数である。しかし、既成政党に失望している国民は、大阪府、大阪市で既得権者と死闘を繰り広げた橋下氏を知っている。


橋下氏が約30分にわたって街宣車から訴えた内容は概ね次のようなことだった。
『三年前政権交代した。日本が変わる。そんな高揚感から新しい日本を夢見たのは、わずか三年前。満足してますか?日本国民、福岡の皆さんは分かっている。予算の半分が借金、あれやるこれやるが出来ないのは、みんな分かっている。政権交代で一番重要なことは、皆さんにいいことばかりを言うことではない。日本の厳しい状況をみなさんに訴え、この部分は仕方がないから我慢してください。その為にはわが身を削る。それが政治の役割。いいことばかりを政治が出来るわけがない。

金がないんです。高齢者の人にも適正な負担を求めます。子供の世代に、しっかり税金を回す。若者の活力が生まれなければ、日本の活力が生まれない。既得権を改め、日本が強くなる使い方をしなければだめ。国民ひとりひとりが、どこまで我慢していただけるだが、まずは政治家から、まずは役所からだとみんな思っている。大阪では公務員の給与をカットした。やりすぎてぼろくそに言われている。

我慢するだけじゃ面白くない。その先を教えてくれよ橋下ちゃん。140年前明治維新。明治維新以来の国の形を変える。九州の地も道州制で九州がまとまる。これから九州が生き残れる唯一の方法。今の国の形は、東京に向けて口を開けて待っている。地域が活性化するために自立して、九州がひとつにまとまれば、東京に依存することはない。九州のルールをつくればいい。しかし責任はある。自立する個人、自立する地域、自立する国家を目指す。何から何まで依存する時代はおさらば。道州制を進め、新しい九州をつくり出す。

我々はカネを集められる団体もないし、何もない。維新の会は貧乏集団です。でもやらなきゃいけない。体制を変えるために、既得権からカネを引揚げるために、「大戦(おおいくさ)」をしなければならない。TPPは交渉に参加もしないで、はじめから負けるから参加しない。そんな臆病な国。切った張ったの交渉すればいい。勝負どころではとことんいく。自分の子、孫が誇れる日本にしたい。政権が代わればすぐバラ色なんて、そんな甘いものではない。負担を求めるところは求める。削るところは削る。この日本を一からつくり直す。子の時代に誇れる日本をつくる。組織もなければ、カネもない。頼れるのは、皆さんの一票のみです』


「憲法改正」とか「教育改革」までは踏み込まなかった。街頭演説であるから、シンプルで分かりやすい内容で訴えた。「国の仕組みを変える」「個人、地域、国家の自立」「子、孫の世代が誇れる日本」といった、雑踏の中でも大まかなイメージを記憶させる演説だった。新聞で言えば「大見出し」に相当するものである。国政は未経験であっても、民主党がやる気力もなく、やる実力もないマニフェストで国民をたぶらかしたのとは違う。霞が関がそう簡単に権限を手放すとは思えないが、大阪では強い信念のもと身体を張って、官僚どもを制圧した裏付けがある。大阪都構想が成功すれば、必ず全国に波及するだろう。街宣車から橋下氏の硬軟織り交ぜながらの熱弁は、聴衆を引き付けるのに十分な効果はあったと思われる。地盤の無い中、関係者も手ごたえを感じて、安堵したことだろう。次期選挙でどういう結果が待っているか分からないが、国の形を変えてくれる重要な鍵になることは間違いない。

今の政治は、国がカネを恵んでやるから、国の言うことをおとなしく聞け、という仕組みである。特例公債法案の見通しが立たず、地方が右往左往しているのを見ればわかるだろう。そこで橋下氏は地方が自立するためにも、税源を移すことで、その地方にあった効率的なカネの使い方をしようとしている。ところが、その地方の首長や議員たちを見るに、本当にため息がでる。今朝の新聞にも、鹿児島県議会が「領収書なし・政調費5000万円」と報道されていた。政調費のでたらめな使い方は後を絶たない。身を削るどころか、カネの亡者である。特定企業との癒着で、税金の横流しは公然の秘密である。首長は議会の言いなりで、大阪のように身体を張って戦うなど夢物語である。議会に従順で波風を立てず、国に従順でカネを恵んでもらい、せいぜい観光に力を入れるくらいの行政で平和に首長職を維持している。こんな状態で税源を地方に渡したらどうなるか。結果は火を見るより明らかである。地方が自立するためには、地位やカネに執着などしない、改革に命をかけるような、気骨のある人物が必要である。

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2012・10・28 「民主党!お前が言うな!」
石原都知事が次期衆院選に向け、日本維新の会などと第3極で、政策に多少の違いがあっても連携すべきだと述べた。
「新しい大連合を作って選挙をみんなで一緒にやったらいい」
「大きな政党でないものは小異を捨てて大同につき、選挙で協力しあわないと、その体制の基礎はできない」
これに民主党幹部たちが一斉に反応した。
「全く別々の考えの人が選挙対策で『大同』と言うのは、国民をバカにした野合だ。基本政策は一致しないと、選挙互助会を広げるだけだ」
笑うよね。政権を取るために、主義主張の違うものが集まって、何の根拠もないマニフェストを掲げて、国民をだましたのは、どこの政党でしたっけ?党の綱領すら作ることのできない野合の衆は何ていう政党でしたっけ?
「お前が言うな!」「お前にだけには言われたくない!」

博多灯明ウォッチング2012 (2012・10・20)
「御供所灯明コンペティション」部門の会場と作品