PC乗っ取り
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File No.121012

「犯罪予告遠隔操作・誰もが無実の容疑者に」。これは昨日(10/11)の新聞の見出しである。インターネットで犯行を予告した疑いで男性が逮捕され、釈放された。この男性はネット上から無料ソフトをダウンロードしていた。その中に新種のウィルスがプログラムされていたのである。このウィルスの入ったパソコンは、第三者から遠隔操作が可能で、全く本人が気づかないまま犯罪者にされてしまう。それをテレビで再現していたが、別のパソコンを自由自在、思い通りに操作していた。ウィルス名は「BKDR_SYSIE.A(バックドア シス アイイー エー)」と言い、外部から操作可能になるような"侵入口"を作る「バックドア型」という種類である。かなり高度な技術で作られているようで、不正な動作が実行されたあと、自動的にプログラムが消去され痕跡を残さない。我々は市販のウィルスソフトを入れて安心しているが、犯人はそんなことは百も承知でやっている。今回の事件がそのいい例である。

他人のPCを乗っ取って犯罪に使うことを「踏み台」と言う。こういう「踏み台」とか「ボット」という言葉は知っていたが、実際に事件としてメディアで見たのは今回が始めてである。今回は犯行予告だけで、実際には実行されなかったので大事には至らなかったが、問題は犯人が分からないことである。ひとつのPCを踏み台にして、また別のPCにアクセスする。こうしていくつかのPCを経由し、しかも海外のサーバー経由となれば犯人の特定はほぼ無理である。PCの所有者だからといって、簡単に逮捕することはできない。さらにややこしいのは、それが真犯人であっても「否認」されると決め手を欠くことである。こんな巧妙化するサイバー犯罪に対して、警察も「サイバーフォースセンター」という専門の組織で対応している。しかし1万件に迫ろうとする表面化したサイバー攻撃に対し、不正アクセスの検挙数は年間で100人程度だという。サイバー犯罪の拡大に、追いついていないのが現状である。

2007年公開の「ダイ・ハード4.0」という映画がある。ブルース・ウィリス主演の、ダイ・ハードシリーズ4作目の作品である。この映画では、全米のインフラを監視するシステムがサイバーテロによって乗っ取られる。交通、通信、金融システムなどあらゆるインフラが、テロリストによってコントロールされ、一瞬にして大混乱に陥る。この"ファイアーセール"に、ニューヨーク市警総合テロ対策班のジョン・マクレーン警部補が挑む。アメリカの国防省は、国防戦略上"サイバー空間"を第5の作戦領域としている。つまり、陸・海・空・宇宙につぐ領域としているのである。映画にみるように、国の根幹をなす重要なインフラに、サイバー攻撃がなされれば、社会はマヒし想像を絶する事態になる。アメリカの国防長官は「深刻なサイバー攻撃に対し、我々は武力紛争法の下、軍事力による反撃を行う権利がある」と言っている。

日本は往々にして危機管理意識が薄い。野放し状態のスパイ同様、サイバー攻撃のターゲットとして、実に狙われやすい国である。個人的な愉快犯ぐらいならまだしも、本当にテロリストが狙ってきたらひとたまりもない。日本の警察庁や内閣府などへのDDos攻撃(大量のデータを送りこみ処理不能にさせる)、防衛産業である三菱重工への不正プログラム感染など、実際にサイバー攻撃がなされている。重要なインフラを担う企業が参加する「サイバーテロ対策協議会」や、先端技術の企業の「サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク」など、官民一体となって取り組みはなされているようだが、事の重要性から言えば米国のように、軍事的な位置づけにするべきである。国民の生命や財産を守るという観点から考えても、そうあることが適切と言える。何事にも動作のにぶい日本である。そうすることで飛躍的に危機管理意識は上がるのではないか。





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2012・10・17 PC犯罪予告が大変なことになっている
真犯人と名乗る男から、13件の犯罪予告をしたというメールが弁護士に届いた。その内容には、遠隔操作の手口や、これまで表面化していなかった予告などが詳しく書かれていた。問題はその犯罪予告によって、誤認逮捕が続出していることである。新しい形の犯罪に捜査側も「犯人と言い切る自信がなくなった」と、警察や検察に動揺が走っている。捜査の在り方も問われようが、問題は1秒にひとつのウィルスが作られているというネット犯罪にどう対処していくかである。


2012/10/14 今津人形芝居
今年の今津人形芝居は“さいとぴあ”で開催された。例年今津小学校で開催されている本公演がないので心配したが、来年はまた小学校で開催するという。地元で公演し、地元の人たちが家族づれで楽しんでこそ価値がある。郷土の伝統芸能というのはそういうものだ。
今年も子供たちが頑張った。特に人形の動き、浄瑠璃に注目し、注意深く観てみた。あの重たい人形を操り、細やかな感情を表現する。母を想う切ない子供の心を、子供たちの真剣でまっすぐな語りが、感動を増幅させる。よくぞここまで仕上げた。毎年本当に楽しみに観させてもらっている。