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File No.120705

今日の新聞の第一面で「ヒッグス粒子 ほぼ確認」と大きく報じていた。"ほぼ"と書いているように確定ではなく確率は99.9999%だという。去年あたりから近々確認されるのではないかという雰囲気だったが、やっとCERNが発表に踏み切った。発表では「ヒッグス粒子とみられる新粒子を発見した」と言っている。まず間違いないのだろうが、仮にその物質がヒッグス粒子ではない新粒子だったとしても、それはそれで大発見である。1964年にヒッグス粒子の存在を提唱して約40年、ついに標準理論の完成だ。標準理論は、宇宙の物質の成り立ちを説明する理論である。我々が認識できているすべてのものが、クォークとレプトンで出来ている。これにグルーオンなどの力を伝える粒子があり、これらの粒子に質量を与えるのがヒッグス粒子である。考えてみれば素粒子という目には見えないようなもので、宇宙を解明するというのだから科学者はすごい。


ビッグバン直後、宇宙が急速に膨張して冷えると、「相転移」によって宇宙はヒッグス粒子によって満たされた。これはノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎氏の理論が基になっている。それまで質量がゼロで、光速で飛び回っていた素粒子はヒッグス粒子によって質量を与えられ、素粒子が集まり、原子核ができ、原子ができ、銀河が生まれ、地球に生命が誕生したのである。所詮、人間を含め地球上の(だけではない)あらゆるものは、宇宙空間に漂う物質で出来ている。その物質というのも、宇宙のエネルギーのわずか4.4%にすぎないという。ところで、私には質量というのが、いまだよく理解できていない。[質量=重さ]と思いがちだが、そうではないようだ。宇宙空間は無重力だから、重さは無くふわふわと浮く。それでも質量が無くなったわけではない。もし仮に今、我々から質量が無くなれば、光速で飛び交う素粒子に分解してしまうのだろうか。


欧州合同原子核研究所(CERN)は、1周27kmの「大型ハドロン衝突型加速器」(LHC)で、繰り返し実験を行った。光速近くまで加速した陽子を衝突させ、ビッグバンを再現し、このとき発生するヒッグス粒子を観測するのである。2010年からは7兆電子ボルトで、今年4月からは8兆電子ボルトという高エネルギーで実験したという。しかし、ヒッグス粒子が誕生する確率は、100億回の衝突で1回しかなく、それもすぐに壊れて別の粒子に変わるという。やはり、1100兆回の実験データを解析したというのもうなづける。確認した新粒子は、標準理論で予言されているヒッグス粒子の性質と一致しているという。今後、さらにデータをとって、今年中には確定させたい意向である。これほど実験に苦労している訳だが、実際のヒッグス粒子は、ビッグバン直後に宇宙をヒッグス粒子の海にするほど発生し、いまも宇宙空間を満たしている訳だから想像を絶している。


ところで、今回の発見についてCERNの司会者は「歴史的な出来事だが、始まりにすぎない」と言った。他にも「新しい物理学の幕開けになるかもしれない」など標準理論の先を見据えたコメントが目に付く。これからの研究のために、CERNを超えた、新しい施設が必要である。今回の発表を受けて、福岡県知事は、次世代加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の建設候補地として「誘致実現の機運醸成につながることを期待する」とのコメントをだした。もっと積極的に、具体的に動かないと厳しいと思うが・・・。CERNに投じられた資金は約1兆円で40ヵ国がその費用を負担している。巨大な加速器は建設費だけで5000億円を超すという。もちろんそれが目的ではない。九大は「素粒子・原子核研究特区」という研究グループをつくり、ILC誘致の中心的存在にしたいという。福岡の地で、宇宙の謎が解明されるという夢を持ちたい。



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