リゾート特急「ゆふいんの森」 随筆のページへ

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File No.120629
これまで九州内の“列車の旅”をいろいろ楽しんできたが、今回はリゾート特急「ゆふいんの森」と、これまで乗っていなかった路線を楽しんだ。ルートは次の通り。
博多(1)鹿児島本線(2)久大本線日田(3)日田彦山線田川後藤寺(4)後藤寺線新飯塚(5)筑豊本線折尾(6)鹿児島本線博多

乗車券(博多→日田)

ゆふいんの森(キハ71)
乗ったのは初代「ゆふいんの森」。博多から日田、由布院を通って別府を往復している。私は今回、後の行程の都合で、博多→日田間に乗った。外観はもとより車内も徹底したリゾート特急としてつくられている。前後部からの広々とした眺望、ハイデッカーの客室からの眺めは実に爽快である。車内は木をふんだんに使い、上質のくつろぎの空間を演出している。特にセミコンパートメントでは、ゆっくり景色が楽しめる。客室乗務員のもてなし振りも実に洗練されている。

後方の展望車・社内アナウンス中

ビュッフェは大忙し
今回乗った初代「ゆふいんの森」は「キハ71」である。その根強い人気に支えられ、そのデザインを踏襲した「キハ72」も登場した。JRの路線で夜行列車を除けば、ビュッフェがあるのはこの「ゆふいんの森」だけと聞く。2号車のビュッフェと3号車のサロンが繋がっている。ビュッフェで買ったコーヒーを、サロンでゆっくり楽しんだ。搭乗の記念写真用に、日付をいれたパネルと帽子が用意され、客室乗務員が撮影してくれる。はずかしながら、私も一枚撮ってもらった。

この写真は吉永小百合さんが、昭和39年にヨーロッパを旅行したときのものである。パリ−ロンドンを走る豪華列車“ゴールデンアロー号”に乗っている。
小百合さんの次の映画は「北のカナリアたち」というサスペンスである。過日、共演した小池栄子さんが「笑っていいとも」に出演したとき、小百合さんが鉄ちゃんであることを話していた。予め時刻表でロスのないように乗継ぎのプランを立て、列車の旅を楽しんでいるという。なんか嬉しいよね。




宝珠山橋梁

列車から見た景色
「日田彦山線」「後藤寺線」「筑豊本線の直方から折尾」は今回初めて乗る路線である。特に「日田彦山線」は緑の鮮やかなこの時期が見ごたえがあっていい。大行司から筑前岩屋間にある橋梁は、鉄道の撮影スポットとして人気がある。左上の写真は、社団法人・九州建設弘済会の「土木遺産in九州」に掲載されていたものである。この橋梁は経産省主催の近代化産業遺産に認定されている。この橋梁を渡るときの、車窓からの眺めが撮影できた。
これは筑前岩屋−彦山間にある「釈迦岳トンネル」(全長4379m)である。「九州鉄道検定」のテキストブックにはこう書いてある。『昭和11年の着工以来、悪質な地質による難工事、戦争の激化による工事中止、落盤事故発生などで、19年の歳月を経て完成したトンネル』。悪質な断層とひどい湧水、想像以上の水圧で困難を極めたという。

田川後藤寺駅
後藤寺線へ乗り換えるため、田川後藤寺駅で降りた。奥に平成筑豊鉄道の車両が止まっていた。この駅はへいちく・糸田線の終点にもなっている。
田川といえばユネスコの世界記憶遺産に、日本で初めて登録された山本作兵衛さんがいる。この田川で炭鉱事務所の宿直警備員をしながら、炭坑画を描き続けた。作兵衛さん自身が、死と隣り合わせの過酷な炭坑夫をしてきた。それだけに死んでいった多くの仲間たちへの思いがその絵に込められている。
明治時代、九州鉄道についで営業を開始したのが「筑豊興業鉄道」である。当時、石炭の輸送に鉄道が大いに活躍した。増大する需要に、単線では賄いきれなくなり、九州で初めて複線化されたのが「筑前植木−底井野信号所(現在の筑前埴生駅付近)」間だった。筑豊興業鉄道は、その後九州鉄道と合併、国有化などを経て、現在の筑豊本線になった。
さて折尾駅に到着。再開発とレトロな駅舎の保存で揺れているようだがどうなるのだろうか。ここでは鹿児島本線(上)と筑豊本線(下)が立体交差をしている。これは明治時代、九州鉄道と筑豊興業鉄道がそれぞれ折尾駅を開業させた名残りである。

レトロな折尾駅舎

立体交差



218km、約6時間の旅が終わり、無事博多駅に到着した。帰りがけに東急ハンズで、文房具(ファイル)など、少し買い物をして帰宅した。
ところで乗車券は、旅の記念に取っておきたいもの。出札口で「記念に頂きたいんですが」と駅員さんに申し出れば、(乗車記念・使用済・JR九州)のゴム印を押して渡してくれる。今回も4枚の乗車券と“ゆふいんの森”の記念スタンプをファイルした。

最後に「徹底解析!鉄道ビジネス」(洋泉社・2012年3月8日発行)に載っていた経営収支を紹介しよう。これでは「営業係数」によって、それぞれの路線がランキングされている。これをみると公共交通機関として頑張っているのがよくわかる。
「営業係数」とは、100円の収入を得るのにいくらの経費がかかっているかというもので、
計算式は次の通り。
営業費用合計/営業収入合計×100=営業係数
(ただし、これは2008年のデータから算出されたものである)
路線 営業係数
鹿児島本線 87.2
久大本線 121,7
日田彦山線 116.6
後藤寺線 101.5
筑豊本線 149.4
JR九州の今年3月期決算は、九州新幹線全線開通やJR博多シティ効果もあって、過去最高益をあげた。しかし鉄道事業だけみれば104億円の赤字と厳しい状況にある。

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