ブレーンワールド 随筆のページへ

トップページへ

File No.120309

去年9月、「ニュートリノが光より速い」という観測結果が発表された。3年間、15000回のテストを重ね、観測ミスや統計誤差ではないと確信しての発表だった。それでも物理学を根底から覆す衝撃的なことであり、他の実験で検証してほしいと言っていた。タイムマシーンが可能になるかもしれないとみんなが大騒ぎした訳だが、それから5か月、間違っているかもしれないという発表があった。その理由は、「実験装置をつなぐ光ファイバーケーブルの接続に緩みが見つかったほか、実験全体を制御する時計が正しく作動していなかった恐れがある」というものだった。アインシュタインの相対性理論を覆す実験結果にしては、何とも締まらない話である。これまで相対性理論と矛盾した観測がなかったことから、システムのエラーではないかとの見方も根強くあった。ところが再度行おうとしている検証実験では、ニュートリノがもっと速い可能性も残されているという。


超弦理論から発展した「ブレーンワールド」という仮説がある。私が、これを知ったのは「ニュートリノが光より速い」という発表がきっかけだった。実験結果をこの仮説で説明できるというので、白水徹也著「宇宙の謎に挑む、ブレーンワールド」(2009年9月第一刷・化学同人発行)という本を読んでみた。もちろん物理学者が必死で模索する理論であるから、ど素人の私に理解などできる訳もないのだが、平易に書かれているので、おおまかなイメージだけは描けた。「ブレーンワールド」のアウトラインはこんな風である。我々の存在する四次元空間は、高次元時空を運動する「膜(ブレーン)」である。素粒子は「ひも」の振動の仕方で表わされる。「ひも」には、「開いたひも」と「閉じたひも」がある。「開いたひも」は物質を表し、その両端は、膜にくっついているので我々を含む物質は膜上でのみ存在する。「閉じたひも」は重力を表し、端がないから余剰次元を自由に移動できる。


さて、ではどうやって光より速いニュートリノを説明するのか。ブレーン宇宙論によると、「光」は、折れ曲がった膜上を進むが、「ニュートリノ」は、膜をすり抜けて、近道するので光よりも速いというのである。もちろん本が発行されたのは、実験結果発表の2年前なので、このことについて直接書かれてはいない。ただ「タイムマシンの再考」というところで「膜通信」を例に、基本的な考え方が書いてある。それによると『四次元の通信は光(電磁波)によって行われるが、光であるから当然膜の上を伝わる。ところが膜宇宙では余剰次元が存在し、この余剰次元には重力が伝わる。この重力波は余剰次元を伝播するので、膜上しか伝わらない電磁波より速く伝わる』というものである。つまり、ブレーンワールドには、「タイムマシーン」の時空構造が、組み込まれていると言っている。検証はいまだ出来ていないが、一概に否定はできないだろうとしている。


この本を読んでいて、もうひとつ興味深いものを見つけた。それは「私もあなたもホログラフィー?」の項である。我々の四次元の世界は、単に五次元時空の投影かもしれないというのである。ホログラフィーはレーザーなどを使って三次元の映像を造るものである。立体画像を五次元の重力理論に、レーザーを四次元の物質の量子場に対応させると、ホログラフィーに似ている。つまり四次元の量子場によって五次元の重力理論を映し出す。それは高次元の重力理論は、低次元の物質の理論に等しいということが成り立つのではないかとしている。さらに、注目したいのが「この逆も成り立つ」としていることである。私には以前から考えていた「異次元からの制御」に通じるものがあるように思えた。四次元の世界からの重力波が余剰次元に伝わって、変化した余剰次元の世界が四次元に投影されていると考えたらどうだろうか?所詮、私の幼稚な考えに過ぎないが、ブレーンワールドの理論が証明される日を待とう。


随筆のページへ トップページへ

「宇宙の謎に挑む ブレーンワールド」

著  者:白水徹也
発行所:株式会社化学同人
第一刷:2009年9月10日
金星・月・木星の直列 2012/03/26 19時頃→
雲ひとつないきれいな空に、
見事な天体ショウを見ることができました。

2012/03/17 ニュートリノは光速を超えない
昨年9月、ニュートリノが、光速を超えるという実験結果を、OPERAチームが発表した。アインシュタインの相対性理論の前提を覆し、タイムマシンも可能になると大騒ぎになった。ところがこれを検証をしていたCERNの別のチームが、16日「ニュートリノの速さは光と差がない」という検証結果をインターネット上に発表した。ニュートリノは、光速より100億分の3秒早く到着したが、これは誤差の範囲ということで光速と差はないと結論づけたという。OPERAチームも、5月に再検証を行う予定のようだが、測定機器の不備などを考えると、やはり相対性理論の前提は覆らない可能性が強いようだ。

2012/03/15 九大に素粒子研究班
九大は、理学研究院に「素粒子・原子核研究特区」という研究グループを4月に発足させ、素粒子の世界的研究拠点を目指すと発表した。将来のセンター化、国際共同研究への参加も視野に入れている。2月にはCERNに研究者二人を常駐させたという。大型直線加速器「国際リニアコライダー」(ILC)を福岡、佐賀県境の脊振山系に誘致する中心的な存在にする。いよいよ動き出した。大いに期待したい。私が去年7月に書いた随筆の一部を下記しておく。
2011/07/07 「パラレルワールド」より
去年暮れ、新聞で大きく報道されていたのが「宇宙誕生、脊振で解明・国際研究施設誘致へ」だ。脊振は福岡県と佐賀県の間にあり、東西50キロ、南北30キロの山系である。誘致しようとしているのは「国際リニアコライダー」(ILC)という実験装置である。ILCは地下トンネル内に全長30〜50kmに設置する次世代加速器である。両端から電子と陽電子を光速に近いスピードで衝突させ、ビッグバン直後の高温・高圧状態をつくりだし、発生した素粒子を観測する。脊振山系で計画されている加速器は直線である。これは円形の加速器と比べ、エネルギーのロスが少ない分、高エネルギーが発生させられるという。誘致に成功して、ここで観測した素粒子が、ダークマター(暗黒物質)の解明につながればこれ以上のことはない。九州の地で"宇宙"が解明されるのである。この事業は福岡県と佐賀県の共同事業で実施するようだが、地質調査に着手したかどうか、その後報道を目にしてない。誘致できれば、科学的な成果の期待と同時に多くの研究者や研究機関も誘致でき、その経済的効果は大きく広がる。両県は熱意をもって取り組むべきだ。


2012/03/09 バスケットボール
WJBLの今年の覇者は、またもやJXだった。これで4季連続の優勝である。プレイオフで、レギュラーシーズン2位のトヨタ自動車を3勝1敗で下した。MVPには吉田が選ばれた。JXは全日本総合選手権も制している。JXは選手層が厚い。大神、渡嘉敷がケガで出場できなかったが、吉田を中心に間宮をはじめ、控えの若手も活躍した。ファウルで間宮を温存しても諏訪が出てくるのだから強い。トヨタは第3戦の采配がすばり当たったからか、第4戦では、総替えという奇策に出た。しかし、追い上げもあと一歩だった。矢野も久手堅も川原もみんな、何度も目の前でJXの喜ぶ姿を見せられて悔しいだろう。

富士通もよく頑張った。インサイドに強いJXに対して、外からの3ポイントで攻める。富士通はHCが女性である。岡里HCがなかなか絵になる。チームベンチエリアから、腕組みをして戦況を見つめる。動き回る。いいプレーが出ると、拳を突き上げてサイドラインを走る。タイムアウトでは“行けっ!行けっ!!行けっ!!!”と激しい指示が飛ぶ。そこで天海祐希さんが、先日言っていたこの言葉を贈ろう。「好きなことをやって積み重ねていったら、最後に私らしかったなと思えればいいかなと思っています。人生好きなことばかりではないが、その中で、どんな環境でも、どんな状況でも、その時の自分の精一杯を出せればいいと思っています」。


高校生と大学生が残ったということで、全日本は話題になった。王者JXに決勝に初めて進出したデンソーが挑んだ。JXはリバウンドに強いから大神、吉田も思いっきり切り込んで行ける。一方、デンソーは、リーグ得点王の高田に頼っているから、徹底して高田をマークすれば抑えられる。トヨタ戦でも矢野が徹底的について高田は思うようなプレーをさせてもらえなかった。結局作戦としては、高田が切りこんで、ダブルチームにさせて、空いた外からフリーでシュートみたいな作戦になる。それでも高田はそれ相当の得点を挙げるからすごい。さすがにレギュラーシーズンの得点王である。

NBAでは先日オールスターゲームが開催された。ウェストでは、レイカーズのコービー、サンダーのデュラントなど、イーストでは、レブロン、ウェイド、ボッシュのヒートビッグ3をはじめそうそうたるメンバーである。今回のオールスターのメンバーのほとんどが、オリンピックのメンバーになるという。今回コービーが得点でも、フィールドゴールでも記録を更新した。しかし、ヒートファンとしては、やはりビッグ3を応援していた。最後の最後、ウェイドへのパスがうまくいっていたら、あるいはイーストが勝っていたかもしれない。レギュラーシーズンでもヒートに頑張ってほしい。ウェスタンではやっぱりデュラントのサンダーだろう。