マイナンバー制度について 随筆のページへ

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File No.120303

政府は先月「共通番号制度法案」を閣議決定し、国会に提出した。国民一人一人に番号が付けられ、個人の納税や社会保障に関する情報が一元化される。通称「マイナンバー制度」と呼ばれるこの制度は、2015年からの運用を目指している。導入の目的を「国民の利便性の向上、行政運営の効率化」としている。これまで保険証や年金手帳などバラバラだった情報をマイナンバーの付いたICカード一枚に集約し、手続きの効率化や課税の公平化を図るものである。今考えられている情報の範囲は「年金」「医療」「介護保険」「福祉」「労働保険」「税務」の6分野としている。これらは今後、問題点を国会で徹底的な審議がされるはずだ。ただ、所得や資産を正確に把握し、公平で公正な課税や社会保障の実現は、我々が最も望むところである。「 10、5、3, 1 」(トーゴーサンピン)」という言葉がある。「1」は何かというと、政治家である。政治資金をはじめ恵まれている政治屋さんたちがうらやましい限りである。

国会で、この所得の捕捉についての質疑応答があった。自民党の河野太郎議員の質問は、利子所得の捕捉についての質問だった。野田首相は「一般論はその通り。ただ所得の捕捉でどこまでしっかりできるかということは、今でも限界がある。完全に捕捉ができないと新たな給付すべきでないと言ってしまいますと、具体的な対応は状況を見ながら判断するしかない」と答弁した。大綱を実際に読んだわけではないが、聴くところによるとこう書いてあるという。「すべての取引や所得を把握し、不正申告や不正受給をゼロにすることなどは非現実的であり、番号を利用しても事業所得や海外資産、取引情報の把握には限界があることについて国民の理解を得ていく必要がある」。つまり、どんな制度を導入しても、所得の捕捉は無理なことらしい。無理なものは仕方がないから国民はそれで納得してくれと言っている。"財政規律は無理だから、とりあえず増税します"そんなところで政治は進んでいく。

一元化された自分の情報は、いつでもチェック出来るようになる。いつ、誰が、どんな目的でアクセスしたか分かるという。制度の基本理念には「個人の権利・利益の保護、自己の個人情報の簡易な確認方法等と国民生活の充実」が掲げられている。グーグルの情報一元化が問題になっているが、情報を一元化するということは、それだけ危険が伴うことになる。第三者委員会を設置したり、情報を分散管理し、徹底したセキュリティシステムを構築するという。しかし、アメリカの軍事機密でさえ、担当していた人物が漏えいしていた。ゆるゆるの日本の情報漏洩は枚挙にいとまがない。問題は人的トラブルである。ましてや、マイナンバーは、その人が何か行動するたびに付いて回り、多くの人がその番号を目にすることになる。自分で自分の情報を、しっかり管理できる人がどれくらいいるだろうか。世の中は高齢化に向かってまっしぐらである。どんなに罰則を強化したところで、逮捕されなければ何の効果もない.


"「歳入庁」については検討しますから、とりあえず増税法案通して下さい"と、何事もワンパターンである。「歳入庁」は、年金保険機構と国税庁を統合するというが、財務省の言いなりの政権が、本当にやれるのか。マイナンバー制度を導入しても、所得の捕捉の実効は上がらないのではないか。課税への不公平感は無くならないのではないか。目に見える番号制度になったことで、プライバシーの侵害が起きないか。情報管理のできない人への、なりすまし詐欺が横行しないか。心配することは山ほどある。心配ばかりしていては前に進めないというなら、国民が納得するだけの丁寧な説明が要る。住基ネットが莫大な費用をかけて、年金支給の本人確認にしか使っていないというのでは話にならない。やる価値があるかどうかは、メリットとデメリットの比較であり、危機管理である。私は、マイナンバー制度の導入に、決して否定的ではない。ただ、政府への信頼が問題なだけである。



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2012/03/04 最高裁が裁判員裁判の無罪を支持
先月13日、「覚せい剤取締法違反」の上告審で、最高裁が逆転有罪の二審を見直し「裁判員裁判の一審尊重」の判断を示した。「明らかに不合理でなければ一審判決を尊重すべきで、裁判員制度の導入後はよりその必要がある」との判断である。最高裁は「バッグ内のチョコレート缶に覚せい剤が入っていたことを知らなかった」という被告の説明について、「明らかに不合理だとはいえない」とした。つまり二審は一審の誤りを充分示せてなかったということである。
映画「ドラゴンタトゥーの女」で、ジャーナリストのミカエルは、悪徳業者ヴェネストラムとの名誉棄損事件に敗訴するが、ヴェネストラムの実態を知るヘンリックはミカエルに「君の調査は正しい。証明出来なかっただけだ」と言う。つまり今回の二審もこういうことだろうと思う。
上記とは全く別の「覚せい剤取締法違反」事件だが、3月2日の控訴審で大阪高裁は、一審の裁判員裁判で下した無罪判決を破棄して差し戻した。高裁の判断は「客観証拠の通話記録から被告の関与は強く推認でき、一審の事実誤認は明らか。多くは密輸に関する通話と強く推認でき、信用性は高い」と指摘した。
いづれの裁判も一審と二審の判断は180度違っている。「一審の事実誤認は明らか」という部分が重要である。つまりここに三審制の意義がある。どういう審理にしろ、違う目を通して、限りなく真実を追及することが本来あるべき姿である。一審の裁判員裁判を尊重しつつも、控訴、上告で十分審理してほしい。