映画「ALWAYS三丁目の夕日'64」を観て

菊池が六子をバカンスに誘った時の「トヨタ・パブリカ」、私にとっても思い出の車だ
映画のページへ 随筆のページへ トップページへ File No.120129

思うに、私は実にラッキーな年に生まれた。戦後モノの無かった時代から、高度経済成長へと向かう時代をリアルタイムで生きた。昭和30年代と言えば、いまや戦後昭和を象徴する風景であり、文化の時代である。エネルギーに満ちたその時代は、即ち私の青春時代そのものだった。今回の映画は、オリンピックが開催され、東海道新幹線が開通した昭和39年が舞台である。私が就職し、田舎から福岡に出てきた年である。映画に出てくる全てのシーンが、私の記憶とシンクロし、懐かしさに包まれた。前2作の大ヒットで国民的な映画になった「三丁目の夕日」だが、今回は前作から5年経ち、登場人物もそれぞれ年を重ねている。特筆すべきは、鈴木社長の怒り狂う姿である。六子が菊池と旅行したことがバレて、「さあー、社長が怒るぞ」と予想はしたが、画面が切り替わると、すでに菊池が吹っ飛ばされ、スローモーションで窓枠をぶち破って表通りに飛んでいく。予想をはるかに上回る映像に脱帽した。

昭和39年、高度経済成長の真っただ中、オリンピック開催に向け、東京は着々と準備が進められていた。あれから5年経った夕日町三丁目では、相変わらず人情味あふれる人たちが暮らしている。小説家の茶川(吉岡秀隆)は、ヒロミ(小雪)と結婚し、もうすぐ赤ちゃんが産まれそうだ。ところが「冒険少年ブック」の連載の方は、新進気鋭の緑沼の新しい感性についていけず、スランプに陥っている。ヒロミは、茶川商店を改造して、小さな居酒屋をやっている。淳之介は高校生になり、東大を目指して勉強中だ。一方、鈴木オートでは、猪突猛進の社長・則文(堤真一)を、相変わらずトモエ(薬師丸ひろ子)がうまい具合に切りまわしている。六子(堀北真希)はベテランになり、社長の信頼も厚く、後輩を指導し、なくてはならない存在になっていた。そんな六子も年頃になった。毎朝通勤で通る医者の菊池(森山未来)に、恋心を抱いている。そんな中、オリンピクを前に、茶川家には白黒テレビ、鈴木家にはカラーテレビが入る。

映画を貫くテーマは「幸せって何だろう」である。もうすぐ"バレンタインデー"がくる。色とりどりのチョコレートが、店先に山のように積まれ、競ってチョコレートを買う姿が年中行事になった。昭和30年代の初め、私の父は年に一回大阪へ仕入れに行っていた。この時の土産は、決まってビニール袋に無造作に入った、ブロークンのチョコレートだった。初めて食べたとき、世の中にこんなにうまいものがあったのかと感動した。毎日、楽しみに少しづつ、少しづつ食べたものだ。去年、国王が来日されたブータンは、世界一幸福な国と言われる。テレビで言っていたのは、ブータン国民が幸せだと思う大きな要因は、幸せのハードルの低さにある。選択肢が少なければ、欲望は小さくなる。欲望を極限まで抑えていくと、生きていること自体に幸せを感じるという。私は、わずかなチョコレートだったからこそ、食べる幸せを感じたのである。

ヒロミは、どんなに茶川が売れない作家でも、「私、しあわせだよ」と寄り添うように生きている。その幸せの原点は第1作にある。茶川が結婚を申し込むために、指輪を買いたかったが、カネがなく指輪のケースしか買えなかった。それでもヒロミは、「つけて、そのいつか買ってくれる指輪をつけてよ」。茶川がつけてくれた目には見えない指輪を、はだか電球ににかざして「きれいだ」と幸せそうに言う。全ての幸せの原点がここにある。日本文化がもっとも大事にする精神性の深さである。幸せとは「満たされている心の状態」をいう。「幸せってなんだろう。金持ちになるとか、出世するとか、それだけじゃないんじゃないか」。今回の映画でも、エピーソードのひとつひとつから、心に沁み入るような温かさが伝わってくる。幸せは相手に求めるものではない。自分の優しさが、相手の優しさを作り出す。そこに幸せのひとつの形が生まれるのである。

映画のページへ 随筆のページへ トップページへ

ALWAYS
  三丁目の夕日'64
2012/01公開/2時間22分
監督: 山崎 貴
出演: 吉岡秀隆、堤真一
小雪、堀北真希
薬師丸ひろ子、三浦友和

「冒険王」の
読者プレゼント

「木刀くん」バッチ

昭和31年の「冒険王」
映画の中の
「冒険少年ブック」はこれが
モデルではないか
と思う

2012/02/06 今日の「Qさま!!」は面白かった
関西インテリ軍団と関東インテリ軍団対決だったが、結果は関西インテリ軍団の圧勝だった。それもQさま初のコールドゲームで、106対0という完全試合のおまけ付きだった。これだと勝った方も、負けた方も気持ちよかっただろう。

難読漢字のコーナーは、「ま」と「お」の付く読み方だった。日見子はそこそこ漢字に強い。今日の問題20問のうち、19問はすぐ読めた。読めなかったのが「蝌蚪」1問だけだった。これを宇治原君は「おたまじゃくし」と事も無げに読んだ。

日見子は妙に宇治原君に、対抗意識を燃やす。たま〜に勝つことがあるから調子に乗る。一度、宇治原君が書いた漢字を見て、「あっ、違う。これが正解よ」と、優越感に浸りながら、傍にあった紙に書いて見せた。

ところが、宇治原君の答えは正しかった。つまり日見子も正解だったが、宇治原君は、はるかに難しい漢字を書いていたのである。さすがである。因みに今日の、絵から推測する四文字熟語「切磋琢磨」は、私も分かった。
2012・02・08 追伸:この番組の視聴率は19.1%だった。クイズ番組としては驚異的な数字である。