次期主力戦闘機はF−35 随筆のページへ

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File No.111214

今朝のニュースで「次期主力戦闘機はF-35に」となっていた。正式には16日の安全保障会議で決定する。ところが、F-35は候補のひとつではあったが、いまだ完成していない機種である。しかも不具合があり、更に不透明な状況にある。防衛省は、空の守りに空白が生じる可能性を承知で、あえてF-35にしたということになる。3機種が候補に挙がって検討されてきたが、結局のところ空自の腹は決まっていたのではないのか。もしそうなら、その最大のポイントは、やはり先進のステルス性だろう。3機種のうち第5世代機はF-35だけである。周辺諸国を見ると、中国もロシアも第5世代を開発中である。これが本格的に実戦配備されると、もはや4.5世代機ではいかんともしがたい。中国の海洋進出を懸念し、アメリカは、アジア・太平洋地域の安全保障を最優先としている。尖閣諸島の守り、シーレーンの確保を考えれば、今後の米軍との連携はより重要になってくる。米軍との共同運用と周辺国への抑止を考えれば、F-35ということなのだろう。

それほど欲しかったF-35であるが、その性能を見るとうなづける。これからの戦闘は、いかに敵のレーダーに探知されず、いかに速く敵の情報を捉えて、敵を見る前に攻撃するかという戦いである。F-35は、そのフォルム、機体の継ぎ目、電波吸着材などが、敵レーダーへの反射を最小限にする。さらに、機内燃料タンク、ウェポンベイなど徹底してステルス性を追求している。情報面では、イージス艦にも見られるように、把握した周囲の状況に、地上からの情報、AWACSからの情報など、あらゆる情報を瞬時に統合しパイロットに与える。それだけではない、編隊を組んでいる各機と情報をやりとりし共有するネットワーク機能も有している。F-35に搭載されているシステムのレベルは高い。日本は憲法九条というしばりがある。敵を叩くには、相手を上回る情報能力が絶対条件である。F-22が喉から手が出るほど欲しかった空自としては当然の選択だったのかもしれない。

いかに優れていようと未完成ではどうにもならない。ただ、空自が導入しようとしているF-35Aは、実戦配備は先の話だが、すでに米空軍に納入されたとも聞く。ところがこの期に及んで、金属疲労試験の結果、機体に多数の亀裂が生じる恐れがあるという。今さら何を言うか!である。米国防省は、調達計画を2年延長するという。F-4をだましだまし使っても、もはや限界である。防衛省が予定する2016年度導入は、はっきり難しいと思われる。しかも、共同開発国でないことも致命的である。それでも防衛省が、F-35に固執するのなら、空白を生じさせない方策を示してほしい。仮につなぎとして、残り2機種から選択するとすればどうなるか。冷静にタイフーンとスーパーホーネットを比較すれば、タイフーンが優れているというのが一般的な見方である。特に、日本にとって最も重要な任務である要撃戦闘能力はスパホに勝っているという。とは言え、日米関係を考えれば、やはりユーロファイターという選択肢はないだろう。

防衛省は機種選定にあたって「製造・修理への国内企業の参画」「機体整備など納入後の支援体制」という評価項目が入っている。これは日本の防衛産業にとって非常に重要であることを示している。いまや戦闘機の性能は、敵を見る前に決着がつくほど高性能化している。そういうアビオニクスの面から見れば、科学技術の発展という意味合いも出てくる。高性能化で開発価格が高騰し、複数の国が共同開発しなければ無理な状態である。日本はF-2の終了で、完全に生産ラインも止まってしまった。F-35は、「武器輸出三原則」の足かせで、共同開発が出来ず、結果として馬鹿高いものを買わされることになった。F-35を導入するとして、どれだけ日本に情報を開示してくれるのか。今後の交渉力ということもあろうが、防衛省の評価はどうだったのだろうか。少なくとも今後のために「武器輸出三原則」の見直しは是非ともやっておかねばならない。今の政権が積極的に見直しに取り組んでくれることを期待したい。

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2012/01/10 アメリカ・新国防戦略を発表
年頭にあたりオバマ大統領が新国防戦略を発表した。その指針によると、中国の台頭が米国の安全保障に潜在的な影響を及ぼすとし、軍事力をアジア太平洋にシフトする。アメリカが、経費削減と安全保障の両立をさせていく上で、より重要になってくるのは周辺国との同盟関係である。特に日米同盟は、さらに緊密な協力が必要になってくる。同盟強化と、日本の自立のためにも、憲法改正を急がなければならない。

2011/12/28 武器輸出三原則・緩和へ
政府は27日、武器輸出三原則を緩和する官房長官談話を発表した。新基準は「国際共同開発・生産への参加」「平和貢献・国際協力での装備品供与」を例外として認めるというもの。これまでは個別的に例外を設定してきたが、今後は「包括的に例外措置を講じる」となっている。もちろん「平和国家として国際紛争を助長することを回避する」という基本理念は堅持される。

2011/12/21 次期主力戦闘機にF−35を正式選定
2007年11月、私がここの随筆で「もしラプターがだめなら、いっそ選定を先延ばしして「ダイ・ハード4.0」に登場した“F−35ライトニングU”にしてはどうだろう。」と書いてから4年経った。昨日(12/20)の安全保障会議で、やっと次期主力戦闘機にF−35が選定された。防衛省は既に2012年度予算に4機分の予算を計上している。今後42機を導入する予定である。あとは、何とか予定している2016年に納入されることを願うばかりである。

2011・12・19 F-35の16年度導入は間に合わない?
防衛省は、F35開発遅延を懸念して、米政府に納期順守の確証を求めたという。ところが、米政府の確証を得たところで、何の足しにもならないらしい。それは米国内法に“米軍が運用する前に武器を購入する国に対しては、支援態勢が整わなくても、米政府は免責される”という規定があるからだそうだ。つまり、期限内に納入されたとしても、故障したら部品交換すらできないという。まだまだ紆余曲折がありそうだ。

2011・12・19 中国国家主席が「戦争への準備拡大を」と発言
中国の国家主席が「軍事闘争への準備を拡大、深化させるべきだ」と発言した。さらに、軍の優れた伝統の発揚や海軍近代化の推進なども指示したという。最近、中国のメディアも「海上の軍事衝突が近づいている。面倒は伴うが、反撃せざるを得ない」という武力行使も辞さない社説を掲載した。周辺国は、突発的な軍事衝突を警戒している。

韓国EEZで違法操業していた中国漁船が、韓国海洋警察隊員を刺殺した。中国漁船が船団を組み攻撃する様は、もはや海賊である。自国の漁場は、乱獲で資源が枯渇し、なりふり構わず他国の漁場を荒らしまわる。自国の需要を満たし、金が稼げるから、少々の危険は承知の上で違法操業を繰り返している。

中国のメディアの「反撃せざるを得ない」という言葉に全てが象徴されている。中国のインターネットには「もともとは中国の領海だ。中国政府は反撃すべきだ」という発言があるという。つまり中国には、周辺国の海洋権益を荒らし回っているという意識は全く無い。自国の領海で正常に操業しているのに、周辺国が邪魔をしているとしか思っていない。

韓国海洋警察は、今回の事件で“実弾発砲”という強硬措置を表明した。中国国家主席の発言をみれば、今後中国の周辺国への海洋侵犯はさらに拡大していく。オバマ大統領は「アジア・太平洋地域は、とてつもなく戦略的に重要。プライオリティ、トップ」と発言している。オーストラリアに海兵隊も配備する。振り返って日本はどうなのか。本当に“ため息”が出る。