本当の選挙権を
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File No.111128

昨日(11/27)の大阪府と市のダブル首長選で、大阪維新の会が圧勝した。相手は、民主・自民などに加え、共産党までもが加わったオール既成政党である。更に、市役所側は職員OBや市議らがフル稼働し現職を支援したという。これを逆に考えれば、よほど現職市長は、自分たちにとって都合のいい首長だったということである。大阪都構想では、大阪市と大阪府の二重行政の無駄をなくし、それを財源に経済を活性化させていくという。橋下氏は、これまで徹底した行政改革で財政再建を進め、慢性赤字の大阪府を黒字に転換させた実績がある。そこには少なからぬ府民の痛みも伴ったはずである。しかし府民は、橋下氏の「市役所をぶっ壊す、既得権益は全部ぶった切っていく」という姿勢を支持した。橋下氏は「政治で重要なのは独裁と言われるくらいの力だ」と強力なリーダーシップをアピールした。大阪の有権者は、座して死を待つより、強い力で現状を打ち破り、変わるであろう未来を選択したのである。

先ごろ会計検査院は平成22年度の決算検査報告を内閣に提出した。今年指摘された無駄の額は、史上二番目だという。毎年の事ながら、あきれるような無駄遣いが報告される。今年は、国が緊急経済対策として、地方自治体に交付した3兆4千億円のうち、2兆円が使われずに貯め込まれていたという。2兆円だぞ!!そんな状況でも、緊縮財政だからとカットすれば、猛烈な反発がくるだろう。国は反発を恐れて、ゆるゆるの配分をした結果がこれである。既得権益の恩恵を受けている奴らは、財政がどうであろうと、自分が痛みを受けるつもりはない。天下りで税金をジャブジャブ使っているのも、各省庁が不適切な経理をしているのも、地方自治体が野放し状態で統制がなされてないのも、みんな周知の事実である。問題は、それを改革しようとする政治家がいないことである。実行力の無い政治家どもは、理想論を"したり顔"でしゃべることだけはうまい。大阪の府民、市民がうらやましい限りである。

地方の緩みきった状況は、目を覆うばかりである。政務調査費の不正支出は、枚挙にいとまがない。繁華街で飲んだ帰りにタクシーを使い、行先はウソを書く。政調費から旅費や受講料を出し、その視察報告書はインターネットから丸写しをする。車のガソリン代、高額な飲食代、はては政治資金パーティー券の購入代とありとあらゆる不正使用がされていた。それにも増して驚くのが、「議員提案の政策条令が過去一本もない」と指摘されると、政策提言機能を強化するため専門組織が必要であると、議会事務局職員の増員を迫ったことである。そもそも議員提案の政策条例こそ、議員たるものの最も重要な仕事である。その能力がないのなら去れ。身を削って財政再建をしようとか、市民のために必死に汗をかこうという気など毛頭ないらしい。今回の大阪の選挙でも、既成政党が束になっても、太刀打ちできなかったのは、市民が既成政党に「どうせ・・・」というあきらめにも似た失望感があったからだろう。

大阪だけの問題ではないのは、みんな分かっている。今の私利私欲、党利党略の国政の現状を見れば、国民は強力なリーダーシップの登場を待ち望んでいる。ただただ、党内融和に腐心し、官僚の言いなりになっているリーダーなどいらない。大阪の有権者は、まさにそういうメッセージを発したのである。こうなるとすぐ迎合しようと国会議員が右往左往することだろう。しかし、それくらいは我々でも見極めることはできる。憲法15条で国民固有の権利として参政権が謳われている。我々は選挙によって市民のための政治を行う議員を選ぶ権利を持っている。どういう政治がなされているかは、我々有権者が投票した結果でもある。大阪では、それまで既成政党の中に埋没していた議員が、新しいリーダーによって動き出した。この流れを国政にも、地方政治にも、ぜひ波及させてほしい。「担ぐ神輿は軽いほどいい」などというふざけた政治にはもう、うんざりだ。我々に本当の意味での選挙権を行使させてほしい。



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