外国人による
日本語スピーチコンテスト
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File No.111020

現在、福岡市の外国人登録者は、2万4千人を超え、福岡都市圏には約8000人の外国人学生さんたちが居住するという。これに伴い、そうした人たちをサポートする多くの日本語教室や日本語学校がある。日本に来て間もない人達が、そこで日本語を学んでいる。先日「外国人による日本語スピーチコンテスト」が開催された。日本語教室、日本語学校で学ぶ人たちが、意見を発表し競い合った。今年は過去最多の申し込みがあったと言う。出場者は、いづれ劣らぬ達者な日本語を操り、堂々たる発表であった。私は、日本人であるから、発表者の提言内容、構成、態度などを事も無げに見聴きしていた。しかし、考えてみるとこれは、私が外国語で、文章の構成や提言をまとめあげ、演壇に立って発表するのと同じである。私にはとても無理である。そう考えると、このスピーチは、かなりレベルの高いものであることがわかる。しかも日本語は難しい。ひとつの文を、どこで区切って話すかといったことが、かなり難しいことのようだった。

台湾から来た人は、お父さんも留学した経験があり、日本文化にとても興味を持っていると言い、中国からの学生さんも、お母さんが"日本の勤勉で穏やかな文化を勉強してきなさい"と送り出してくれたという。発表では、文化の違いについての意見が多く聴かれた。ある人は、日本の若い女の子がスカートをはいて自転車に乗っていることに驚き、またある人は"冬の晴れた日、なぜこんなに空が青いのか"と、大都市の澄んだ空気にびっくりしたという。モンゴルから来た人は、モンゴル人はみな草原のゲルで暮らしていると思っているようだが、余りに知らなさすぎる。ウランバートルは100万都市であり、モンゴルの識字率は97%であると、モンゴルに対する正しい理解を求めた。博多港国際ターミナルに勤めている人は、「まごころ」で向かい合うサービスを学び、またある人は、事故における日本人の優しさに触れた。国は違っても、お互いが深くかかわりあうことで分かりあえる。韓国の人が「ヒトはみんな違って、みんな同じです」と言っていた。実に言い得ている。

「日本は中国人をいじめたので怖かった」と中国の人が言い、韓国の人は「メディアは、日本に批判的。誤解を招くメディアの報道に問題がある」と発表した。一般の国民は、政府の方針やそれに沿ったメディアの報道に刷り込まれる。昨日、テレビを見ていたら"世界の中でこの国だけには負けたくないという国は?"というアンケートに、日本人の二人にひとりが「韓国」と答えた。驚いたことに、それはあの覇権主義の「中国」をはるかに超えていた。しかもスポーツに限れば約9割の人が「韓国」には負けたくないと答えた。その理由は「韓国が日本を敵視しているから」だった。韓国が何かにつけ日本に対して取る異常な敵対行動を、日本人は敏感に肌で感じ取っている。ところが日本に留学して、生の日本に接すると「自分の視野がいかに狭かったかが分かってきた。隣国に対する厳しい報道をするメディアが問題」と初めてそれが間違いであることに気づくのである。

先日、九州7県が共同で、「地域活性化総合特区」指定を目指して「九州観光『おもてなしの輪』創造特区」を国に申請した。これは外国人観光客の受け入れを強化するためである。ところが、この特区を進めていくにはアジア言語の通訳ガイドが不足しているという。そこで、通訳案内士法の規制緩和で九州限定の「有償ガイド」の創設も合わせて申請した。これが認可されれば、留学生が通訳ガイドをすることができる。旅行者は安心して、心行くまで日本を楽しむことができ、留学生自身も日本の良さをより深く理解することになる。日本語教室や、日本語学校に通う人たちは、外国に行って、積極的に人生を切り開こうとする人たちである。その知的レベルと、生きるエネルギーは高い。日本の文化をより深く知るということは、即ち台湾の学生さんが発表していたように「多くの日本人と交流を深めることで理解しあえる。将来日本と台湾の交流を深める仕事をしたい」ということに行きつくのではないか。

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第9回 外国人による日本語スピーチコンテスト
2011年10月16日 ふくふくプラザ

第1部:日本語教室学習者のスピーチ
 (出場者:10名)
 (採点方法:聴講者による投票)
第2部:日本語学校学生のスピーチ
 (出場者:14名)
 (採点方法:審査員の先生による採点)

表彰(1部・2部ともに)
最優秀賞、第1位、第2位、第3位

主催:日本語スピーチコンテスト実行委員会
共催:福岡市、(財)福岡国際交流協会、福岡外国人学生支援の会