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「台北カフェ・ストーリー」
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File No.110919

今(9/16−9/25)、福岡市で「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」が開催されている。これは、1989年に開催された「アジア太平洋博覧会」を起源とする「アジアマンス」の主要事業のひとつである。"アジアフォーカス"というタイトル通り、上映される作品は、アジアの映画である。今回、私が観た「台北カフェ・ストーリー」は、タイトルからも分かるように「台湾映画」で、去年の東京国際映画祭でも上映された作品である。映画の内容からすれば、大人の女性のための映画といえる。監督が「私は美術を学んできた」と話していたように、全編を通してこの映画を彩る色彩感覚が見事だった。会場からの最も優れている質問に、プレゼントがあったが、監督は「色彩に関する質問があったら、その人にしようと思っていた」と言っていた。その色彩をさらにファンタスティックに仕上げているのが、BGM的にゆったり流れるジャズ風の「シャドウ・オブ・ユア・スマイル」だった。

原題は「第三十六故事」であるが、英題は「Taipei Exchanges」になっている。つまり映画のストーリーを展開させていくのは、Exchange「交換する」である。友達や客が持ち寄った様々な品物(骨董品?ガラクタ?)を、カフェに来た客が"物々交換"していく。物とモノを、客の価値観で交換していく訳だが、そこには人間の本質に迫る大きなテーマが流れている。セリフの中に出てくる「物の価値は、人の心が決める」、「彼らの心が、価値を決めたんだね」などである。ドゥアルがつくるエクレアは「ひとつひとつ違う。食べものにも、人にも個性がある」と言ってるように、人間の「価値観」は千差万別である。いづれにせよ、映画の中で言っている「人は評価を求めるもの」と言うところに行きつく。V.E.フランクル著「人間とは何か」の中にこんなことが書いてある。「人間は価値を求める存在だ。真の喜びは価値実現の喜びである」。映画のクライマックスでは、文字通りこの「価値実現の喜び」を表現したと言えるだろう。

映画鑑賞後のトークで会場から、今回の震災における台湾の方々からの暖かい支援に対するお礼の発言があり、会場から大きな拍手が送られた。台湾の人はなぜこんなに暖かいのかという問いに対し、監督は「人が悲しんでいたり、楽しんでいたりしていると、すぐに伝わってくる。その人たちに寄り添って、自分の気持ちを表すのが得意な国民性です」という。その言葉に台湾の人の"豊かな心"を感じた。台湾と日本のかかわりからいって、映画の中で登場する日本の唱歌「ふるさと」は自然だったのかもしれない。カフェを訪れた日本人の客は、母親が教師で、カフェにあった本に載っていた歌を、昔、教えていたという設定である。そもそも私がこの映画を観てみようと思ったきっかけは、予告篇で「ふるさと」が日本語で歌われていたからである。歌っているのは、中孝介(あたり こうすけ)さんで、あの独特な哀愁のある声が唱歌「ふるさと」を、より心に沁み込ませてくれる。監督は、日本人の感覚を的確に把握していると思われる。

ドゥアルは、自分の夢を実現させるために開いたカフェだが「ものごとは思い通りにいかないものよ」と思い悩む日々だった。そんなある日、男がカフェに35個の石鹸を持ち込んでくる。彼はカフェに来るたびに、その石鹸にまつわる物語を話してくれる。妹から「本当かどうか、分からない物語よ」と言われながらも、魅かれていくドゥアル。デザインの才能のあるドゥアルは、ひとつひとつの物語のイメージを絵にしていく。ところがある日、彼は石鹸と一緒に、ドゥアルの絵までも持って行ってしまう。私はこれこそ究極のExchangeではないかと思う。価値が存在するのは「物」だけではない。男は"物語"を持ってきた。男は、それによって引き出された"ドゥアルの豊かな感性"と交換したのである。私は、会場で質問しようと手を上げたが、残念ながら指名はされなかった。質問しようと思ったのが「海外の多くの人が鑑賞し、その贈られたすばらしい評価を、監督は何とだったら交換しますか?」



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「台北カフェ・ストーリー」

監督:シアオ・ヤーチュアン
主演:グイ・ルンメイ
2010年作品 82分
あらすじ
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OLをしていたドゥアルは、自分の夢であるカフェを開く。それは、おいしいコーヒーと手づくりのティラミスを出す、優雅なカフェになるはずだった。ところが、お客が来ない。そこで、妹のチャンアルが「物々交換」を始める。そのユニークさが話題となり、客は確実に増えていく。しかしそれは、ドゥアルの夢見たカフェのイメージではなかった。そんなある日、男が35個の石鹸を持ち込んでくる。一つの石鹸にひとつの物語を語ってくれると言う。ドゥアルは次第に、その物語に魅かれ、心を満たしていく。
台北カフェ・ストーリー」は、この後9/21(T-JOY博多)と9/24(JR九州ホール)に上映される。

2011/09/20 日台120km感謝の遠泳
東日本大震災に200億円の義捐金を送ってくれた台湾の人たちに、感謝を伝えるために6人の若者が台湾までの120kmを泳いだ。6人は、17日朝7時与那国を出発し、19日朝9時半まで、30分交替のリレー形式で、約50時間をかけて泳ぎ切った。到着時、台湾側からもスイマーが海上で迎えてくれたという。6人の若者たちは、台湾の人たちの歓迎の中、被災した3県の知事からの感謝状を無事渡し、支援にお礼を述べた。泳いだ若者のひとり鈴木さんは「台湾の人の笑顔に出会えて疲れが吹き飛んだ。今後も日本と台湾が手を取りあえる関係を持ち続けたい」と語った。