映画「メカニック」を観て 映画のページへ

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File No.110830
証拠を全く残さず、あたかも機械のように暗殺をやってのけることから「メカニック」と呼ばれる殺し屋アーサー・ビショップ。演じているのは「トランスポーター」シリーズで人気のジェイソン・ステイサムである。ステイサムのイメージは、トランスポーターのフランクでかなり確立されている。黒のスーツに身を包み、黒のBMWを操るクールな運び屋。自ら課した三つのルールで、いかなる状況をも切り抜け、契約を厳守する。今回の殺し屋アーサーも、プロフェッショナルとして「仕事に妥協がない」「自分のやり方を確立している」「緻密で完璧な計画をクールに遂行する」などの共通点が見られ、ステイサムのイメージに沿っている。この映画は1972年、チャールズ・ブロンソンの同名の映画のリメイクだそうだ。当時観た訳ではないが出演者を見ると、スティーブ役に、ジャン=マイケル・ヴィンセント、サラ役に、ジル・アイアランドと実になつかしい名前が出てくる。今回リメイクとは言え観た印象は、すべてにわたって現代のハードなアクション映画に仕上がっている。

多くのボディガードが四六時中護る麻薬王の自宅。殺し屋・アーサー・ビショップ(ジェイソン・ステイサム)は、屋内プールで水泳を楽しむ麻薬王を水死と見せかけ、鮮やかに暗殺をやってのける。「君は冷酷なマシーンだ。君より上はいない」と、指令を出す闇の犯罪組織からも絶対の信頼を得ている。そんなアーサーに次の仕事が来る。そのターゲットは、組織の幹部ハリー・マッケンナ(ドナルド・サザーランド)だった。ところが、このハリーはアーサーにとって、今の仕事に就かせてくれた恩人でもあった。銃を向けるアーサーに「君で良かったアーサー。苦悩するがいい」とハリーに言われながらも、非情に仕事を遂行する。ハリーには、素行不良で将来を案じていたスティーブ(ベン・フォスター)という息子がいた。結局、アーサーは、スティーブを傍に置き、殺し屋の教育をする。射撃を教え、実際の殺しを目の前で見せ、スティーブは殺しのテクニックをマスターしていく。しかしついに、スティーブは、父親を殺したのはアーサーではないかと疑いを持つ・・・

私の感覚だが、ステイサムは、ブルース・ウィリスにブルース・リーの味付けをしたような印象である。日本にも、ブルース・ウィリスやステイサムのような俳優がいないとは言わないが、やはり肉食系と草食系という国民性の違いだろう。同じようなことが女優にも言える。仕事において男と肩を並べ、一歩も引けを取らないような女性を演じる女優が実に多い。ちょっと思い浮かんだだけでも「Xファイル」スカリー捜査官のジリアン・アンダーソンや、「トップガン」美人教官のケリー・マクギリスといったタイプである。デブラ・ウィンガーもそんな感じだったかな。それとは少しイメージが違うが、やはり強い女性のイメージで言えば、レネ・ルッソ(リーサルウェポン3の内務調査部警官)やアニー・ワーシング(24のFBI捜査官・ルネ)、レナ・ヘディ(ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズのサラ)などが思い浮かぶ。日本で言えば天海祐希さんのようなイメージかな。

アーサーは、仕事と割り切って冷酷に仕事をこなしていく。「トランスポーター」のフランクも同じである。ところがどちらも、心のどこかに隠れている人間味が、ほんのちょっとだけ顔を出す。「トランスポーター」では、「依頼品は開けない」というルールを破って、バッグの中の女にジュースを飲ませてやる。このちょっとしたルール違反が、とんでもない方向に展開していく。家を総攻撃され、壊滅状態になったときフランクが「ルールを破っちまったばっかりに・・・開ければ必ずやっかいなことになる」と言う。今回も同じようなことが言える。ハリーを暗殺したが、やはり、心のどこかにハリーへの断ち切れない思いがあったのだろう。「周到な準備が勝利を招く」と刻印されたハリーの拳銃を捨てきれず、隠し持っていた。そんな殺し屋にあるまじきセンチメンタリズムが、やがて決定的なほころびへと展開していく。だが、そもそもスティーブを傍に置いて教育すること自体が、冷酷になりきれなかったことだとも言える。さて「メカニック」と呼ばれた男は・・・・



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職業・殺し屋
精密機械につき、取扱注意

「メカニック」


2010年アメリカ(2011年8月公開)93分

監督:サイモン・ウェスト
出演:ジェイソン・ステイサム

2011/08/30 民主党新内閣の幹事長は輿石だって!!!!
ニュースを見ていた日見子いわく「このひとつだけで、新内閣はアウトだわね」。
私もそう思う。せいぜい日本が沈没しないように、祈るばかりである