こども病院移転問題 随筆のページへ

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File No.110521

今日(5/21)の西日本新聞は「こども病院・人工島へ」をトップ記事で伝えている。高島市長は週明けにも正式決定するという。「大山鳴動、ねずみ一匹も出ず」である。前々回2006年の市長選では、吉田前市長が人工島への移転を見直すと言って当選したが、結局、2007年に人工島を最適地と決定し、公約違反した経緯がある。こども病院の人工島移転については、根強い市民の反対があり、住民訴訟を起こすまでになっている。そんな状況から、去年の福岡市長選では多くの候補者が、こども病院問題を争点のひとつにした。候補者のひとりだった元佐賀市長の木下候補などははっきり「人工島移転は取りやめる」と訴えていた。しかし、高島候補は、市議会3会派(自民・公明・みらい)の支持を受け、その3会派と合意した公約の中に「こども病院を人工島移転する」として、公開討論の場でもそう発言していた。ところが、これでは選挙に勝てないと思ったのか、「移転には多くの市民が違和感を持っている。市民と納得した上で進めたい」と、選挙直前に公約の中から削除した。

そういう経緯があって市長は「こども病院移転計画調査委員会」なるものを立ち上げた。専門委員や公募で選ばれた市民委員で構成され、全部で7回ほど開かれた。その委員会から先日出された報告は、候補地ごとのメリット・デメリットを一覧表にしたにすぎないものだった。市民委員まで入れて何回も討議し結果"どこが適地かを判断しない"では何の意味もない。推測するに、福岡市としてはすでに決定事項であり、「人工島移転ありき」の委員会で、人工島以外の決定はできなかったということではなかろうか。そう言えば当初の委員会で、患者家族代表や市民委員に事前の資料配布をしなかったり、資料の中身に人工島移転に誘導ともとれる記述があったりと公平性に疑問が持たれたことがあった。それ以前にも市は、人工島を有利にしようと、現在地での建て替え費用の見積もりを、1.5倍に水増しして発表した。指摘を受け調査されたが、大手ゼネコン3社は、そうは言っていないと言い、市は根拠になった文書はすべて破棄したという。

今ごろ言っても仕方がないが、委員会からの指摘などを見ると、移転先候補として、人工島は何としても排除すべきではなかったかと思う。まずアクセスが悪いという問題である。緊急を要する「こども病院」であれば最重要課題だろう。すぐ傍には警固断層という懸念材料もある。天災などで人工島が孤立することも考えられる。宮城県立こども病院の院長は、今回の津波で石巻市の病院が診療不能になった事例などから「どこに造るかは重要なファクターだ」と言っている。液状化現象の懸念も指摘された。地盤改良をすれば問題ないというが、起きてしまって「想定外」で済まされてはたまらない。海岸沿いというより、海の真っただ中であり、塩害も指摘されている。建物自体もたないという。以前、九大の移転先に人工島が検討されたときは、「地盤が軟弱で塩害もあり精密機器の設置は無理」ということだったそうだ。対象が"病気のこども"ということを考えれば、環境には最大限の配慮が必要だろう。委員の一人は「人工島だけはどう考えても安全な場所とは言い切れない」と言っていた。

高島市長は、選挙直前に「ゼロベースで見直す」として、公約から削除した。市長選は、こども病院問題の信任投票という側面もあった。先ごろ人工島移転の賛否を、街頭でアンケートしたところ290人中、288人が反対だったという。これが民意である。こういう経緯と人工島の悪条件からして、そもそも人工島移転という選択肢はなかったはずだ。しかし、すでに決定のようである。人工島をめぐっては、よほど市議会の利権がからんでいるのだろう。「ケヤキ・庭石事件」では、予定もないのに購入して7億円あまりの損害を出し、実刑判決が下った。垂れ流し状態の議会に、チェック機能などなさそうだ。市長選で3会派が、全く行政経験のない新人を支持したのも、その後コントロールしやすいという意図があったからではないのか。しかし、それを選択したのは市民である。国政でも、機能不全に陥っている民主党を選んだのは他でもない国民である。阿久根市で改革ののろしをあげた竹原氏を選ばなかったのも阿久根市民である。政治は、税金をどう配分するかだ。それを託したのが市民なら、それを甘んじて受けるのも市民である。


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追伸:福岡市が何故、何が何でも人工島へ移転させるのか。こんなことを聞いた。多額の借金をして、人工島という大型公共事業をした。借金は、人工島の不動産を売却して、銀行へ返済する計画だった。ところが、不動産がさっぱり売れない。銀行の返済はしなければならない。そこで持ち上がったのが「こども病院の人工島移転」である。もしこれが事実だとすれば、人工島以外への可能性は最初から全くなかった訳である。すべてのプロセスは、見せかけだったということになる。つまり、大型公共工事の借金返済のために、“病気のこどもたち”が劣悪な環境に追いやられるということだ。そうなると次に、こども病院へのアクセスを良くしなければならない、などと勝手な理由をつけて、地下鉄の人工島への延伸という大型公共工事をまたまた言い出しかねない。

2011/06/10 福岡市長の自己採点は「120点」らしい
就任から半年が経ち、その仕事ぶりはどうだったのか。新聞によると従来の市長と比べ、テレビ・新聞といったメディアに登場する回数は突出しているという。ところが庁内から「目立つ事ばかりでなく、市民のための地道な仕事も大切にして」という声が上がっているらしい。この身内からの声は、私が持っていた印象とぴったり一致する。
「こども病院問題」では、市民委員や患者家族代表も入れて、調査委員会を立ち上げたものの、結局何も変わらなかった。単なるパフォーマンスのために利用された患者家族の方の“くやしさ”は、いかばかりであったろうか。変わらなかったのは、このこども病院問題だけでなく「青果市場の人工島への統合移転」もそうだったらしい。

福岡市の財政は危機的状況にある。「経常収支比率」などは、常にワーストにランキングされている。しかし、何か強力に行政改革に切り込むとか、膨大な借金をどうするとか、全く聞こえてこない。それどころか、今は景気が悪いので、逆に公共事業を増やすつもりのようだ。
市長は会見で、記者からの「自己採点は?」という質問に、「120点です」と答えた。これではもう期待する方が無理である。「自己採点は?」という質問の裏には「この半年、ただただ追認するだけで、何も変えることが出来ず、何の改革も出来ていないが、自分ではどう思っているのか」という意味が込められているように思うが・・・・

2011/05/22
今日の「たかじんのそこまで言って委員会」で、沖縄の新聞の事を言っていた。沖縄には「沖縄タイムス」と「琉球新報」があるが、タイムスが朝日新聞、新報が毎日新聞と提携しているそうだ。この2紙はほとんどの沖縄県民の考え方を代表していない。それどころか、できるだけ早く日米安全保障体制を損ないたいと思っているという。沖縄の基地問題はこじれる一方である。新聞を読むときには、その新聞の思想がどのポジションなのか、踏まえたうえで読むことが大切である。私は大手新聞とその系列テレビ局のポジションを次のように考えている。
左翼← ← 思  想  右翼
朝日新聞 毎日新聞 日本経済新聞 読売新聞 産経新聞
テレビ朝日 TBS テレビ東京 日本テレビ フジテレビ
BS朝日 BS11 BSジャパン BS日テレ BSフジ
沖縄タイムス 琉球新報