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File No.101218

政府は昨日、「新・防衛大綱」を閣議決定した。政権が民主党になって、この先10年間の防衛計画がどう示されるか心配していた。しかし、今朝の新聞を見る限り、概ね評価できそうな内容である。尖閣諸島問題、北朝鮮の砲撃などが起きたことも、今回の大綱に少なからず影響したものと思う。新大綱のポイントのひとつが「動的防衛力」への転換である。前回の大綱では「自衛隊の弾力的運用」となっていたが、新大綱では「即応性、機動性、柔軟性、持続性および多目的性を備え・・・高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築する」と強化された。常にあらゆる角度から情報を収集し、状況の変化を察知し、柔軟に部隊を配備する。テロや弾道ミサイルといった緊急事態にも迅速に対応できる体制をつくりあげる。一例をあげれば、陸自に「中央即応連隊」というのがある。この部隊は特殊訓練を受けており、テロが発生すればどこであろうと即座に対処できる機動性をもっている。「特殊作戦群」という特殊部隊も組織されているようだ。要は柔軟な運用で危険を排除するという「動的防衛力」が、日本の安全保障全体の在り方の基本となる。

新大綱の中で、問題の中国については「・・・軍事や安全保障に関する透明性の不足とあいまって、地域・国際社会の懸念事項となっている」としている。これに早速中国が反応した。「無責任な態度で、中国の発展をとやかく言う権利はない」だそうだ。緊迫の元凶が何を言うか!傍若無人の中国に言われる筋合いはない。先日の尖閣問題は、南西諸島の防衛が重要であることを我々に認識させた。大綱では「我が国の繁栄には海洋の安全確保や国際秩序の安定等が不可欠」としている。空母や原子力潜水艦など、海軍力を更に増強させつつある中国は、第一列島線を超えて、太平洋へ進出の様相である。空白地帯だったこの地域への対処も新大綱の重要な柱である。南西諸島に移動式レーダーを配備し、潜水艦は16隻から22隻へ、ミサイル防衛対応のイージス艦を2隻増強する。さらに那覇基地の戦闘機を増やし2飛行隊にし、PAC3も配備するなど、情報収集、警戒監視、即応態勢が強化される。「中期防衛力整備計画」には「南西地域の島しょ部に沿岸監視部隊を配備」としている。中国に対し、日本の主権をしっかり守るという強い意思を示すことが抑止力となる。

航空自衛隊の項では「能力の高い新戦闘機を保有する戦闘機部隊を保持する」となっている。さてF-Xはどうなるのだろうか。詳細は分からないがF-35の開発が大幅に遅れ、はやくても2017年くらいと聞く。F-4の退役時期を考えると、もはやF-35を待ってはおれない状況である。だが、ステルス性を備えた第5世代戦闘機となれば、やはりF-35が有力である。また「ひゅうが」型護衛艦や、次に計画されている「22DDH」の運用面からもF-35がいいのではないだろうか。聞くところによればF-35がF-XXということになり、空白期間を埋めるためにF-2を追加生産するという。F-2の生産が終われば、日本の戦闘機生産技術がなくなってしまう。三菱は相当危機感を持っているようだ。今回の大綱では「武器輸出三原則」の見直しは見送られた。それも、社民党という吹けば飛ぶような党に気を使ってのことである。まったく馬鹿げている。40年以上も昔の冷戦時代の遺物のおかげで国際共同開発に参加できず、日本の技術力が失われ、バカ高い装備品を買わされる。だいたい「武器輸出」という言葉のイメージが悪すぎる。

私は、3年半ほど前に随筆でこう書いた。「日本を取り巻く状況を見渡せば、北朝鮮のミサイルや核実験、中国の異常な軍事費の増大や尖閣列島の問題、台湾問題も微妙だ。いくら中国の首相がにこにこ笑顔を振りまいても、ミサイルは日本に照準を合わせている。・・・・そんな情勢の中にあって、基軸となるのはやはり日米同盟である。憲法で軍隊及び集団的自衛権を認め、同盟の強化を図らねばならない」。この考えは、今も全く変わっていない。今回の大綱では「日米同盟は、多国間の安全保障協力やグローバルな安全保障課題への対応を我が国が効果的に進める上でも重要である」としている。東アジアを緊張させている中国・北朝鮮の同盟に対するには、日米同盟をより強固にする必要がある。このしっかりした基盤の上に立つことで、ASEAN諸国との連携もまた強化される。防衛大綱は、単に方針を示したものである。政府はこれ確実に実行し、基本理念である「我が国の安全及び国民の安心・安全を確保する」ためにまい進してもらいたい。一方、我々国民は国防への危機意識を持って、大綱の実施を厳しく見ていくことが大切である。


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自衛隊の規模は世界と比べてどれくらいか?
   人口 常時 割合 予備役(※)
アメリカ 3億900万人 158万人 0.5%        
中国 13億人 229万人 0.2% 約51万人
韓国 4900万人 69万人 1.4%       
北朝鮮 2400万人 111万人 4.6%     
日本 1憶3000万人 23万人 0.2% 3万4000人
(※)予備役とは⇒非常時だけに軍務につく兵隊。日本では予備自衛官と呼ばれている
2011・01・26TV「池上彰の学べるニュース」より


新・防衛大綱の編成・装備
陸上自衛隊 編成定数 15万4千人
常備自衛官定員 14万7千人
即応予備自衛官員数 7千人
基幹部隊 平素地域配備する部隊 8個師団
6個師団
機動運用部隊 中央即応集団
1個機甲師団
地対空誘導弾部隊 7個高射特科群/連隊
主要装備 戦車 約400両
火砲 約400門/両
海上自衛隊 基幹部隊 護衛艦部隊 4個護衛隊群(8個護衛隊)
4個護衛隊
潜水艦部隊 6個潜水隊
掃海部隊 6個潜水隊
哨戒機部隊 9個航空隊
主要装備 護衛艦 48隻
潜水艦 22隻
作戦用航空機 約150機
航空自衛隊 基幹部隊 航空警戒管制部隊 4個警戒群
24個警戒隊
1個警戒航空隊(2個飛行隊)
戦闘機部隊 12個飛行隊
航空偵察部隊 1個飛行隊
航空輸送部隊 3個飛行隊
空中給油・輸送部隊 1個飛行隊
地対空誘導弾部隊 6個高射群
主要装備 作戦用航空機 約340機
うち戦闘機 約260機

弾道ミサイル防衛にも使用し得る
主要装備・基幹部隊
イージスシステム搭載護衛艦 6隻
航空警戒管制部隊 11個警戒群/隊
地対空誘導弾部隊 6個高射群
(注)「弾道ミサイル防衛にも使用し得る主要装備・基幹部隊」は海上自衛隊の主要装備又は航空自衛隊の基幹部隊の内数