九州新幹線が見えてきた | 随筆のページへ トップページへ File No.100630 |
![]() JR博多シティ |
新博多駅ビルの名前が「JR博多シティ」に決まった。地上10階、地下3階、延べ床面積20万㎡と現在の駅ビルの7倍近いという巨大な複合商業ビルが出来る。一日の来場者は10万人、そこで働く人たちだけでも6~7千人と予想されている。まさに博多シティと名付けるにふさわしい偉容を誇る。阪急百貨店、東急ハンズなどのほか、週末には終夜営業もするというシネマコンプレックスなども入る。すでに工事の進捗率は70%を超え、内装などの仕上げに入っている。先日、このビルの開発を直接担当された方の話を聞いた。詳しい話に興味は尽きなかったが、何よりも嬉しく思ったのは、実に楽しく仕事をされていたことだ。きっと、一日中居ても飽きることのない、楽しいシティが出現するに違いない。 |
![]() 新鳥栖駅 |
![]() 久留米駅 |
![]() 新車両「さくら」 |
左の写真は、2009・01・13博多駅11番ホームで撮影した新車両「さくら」である。すでに博多―新八代間の軌道工事はすべて完了しており、9月から3か月間いよいよ時速260kmの試験運転に入る。車両はN700系をベースに開発されたが、筑紫トンネルなど急こう配があり全車にモーターを付け、最急こう配35パーミル(注)に対応している。しかし新車両のコンセプトは「和のもてなし」であり、徹底的に快適性、居住性にこだわって作られている。我々は客として、九州新幹線に何を望むかと言えば、一義的にはそのスピード(山陽300km、九州260km)であろうが、それにも増してそのハイレベルな快適性、居心地の良さそのものを楽しむということにもある。 |
![]() (在来線)船小屋駅 |
![]() 筑後船小屋駅 |
現在工事中の新しい駅舎を撮影(すべて2010年6月に撮影)してきた。率直な感想を言わせてもらえば、120kmに7つの駅は本当に必要か。平均すると駅間はわずか17kmくらいである。今さら言っても仕方がないが、「筑後船小屋駅」は本当に必要なのか。在来線の船小屋駅は「無人駅」である。無人駅の場所に、巨大な公園をつくり、新幹線の駅をつくる。この公園を利用するのが県南の人たちが中心であれば、新幹線に乗って来る人などほとんどいないのではないか。どう考えても納得いかない。「筑後船小屋駅」周辺の整備だけで県は今年度16億円の予算を計上している。県営筑後広域公園は、その面積は大濠公園の5倍の広さだという。西側スポーツゾーンだけでも120憶円の税金を使っている。旧態依然とした大型公共工事を目の当たりにすれば、地方分権による税源移譲など時期尚早である。(因みに、あのケチな事業仕訳で「はやぶさ2」の開発が中止に追い込まれたが、その当初予算は17億円だった。この意義ある17億円を3000万円まで削ったのを見れば、不必要な駅周辺の整備に16億円というのが、いかに税金の垂れ流しかが分かる。これが政治の現状である) |
![]() 新大牟田駅 |
![]() 新玉名駅 |
![]() 熊本駅 |
新幹線の新車両「さくら」と「つばめ」の登場によって、787系リレーつばめが姿を消す。来年3月以降、リレーつばめや有明などの787系は、783系と一緒に日豊線を走ることになる。現在走っている旧国鉄時代の特急485系が古くなり入れ替えになる。「きりしま」や「にちりん」が、787系や783系になればかなり快適になるだろう。鹿児島本線は新幹線の開通で、787系が姿を消し、基本的には特急は無くなる方向のようだ。新玉名駅のできた玉名市議会では、去年"特急の存続か代替列車の運行を求める"という決議をしていた。どう対応するか、JRも頭の痛いところである。熊本駅で、新幹線と並行するように工事が進められていたので、聞いてみると、在来線を高架にする工事だという。新幹線の全通、JR博多シティなど華やかな一方、通勤・通学といった地域の生活を支える役割もおろそかには出来ない。 |
![]() 博多駅で発車を待つ リレーつばめ |
![]() 久留米駅を出発後に リレーつばめとすれ違う |
![]() 熊本駅を発車する リレーつばめ |
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九州新幹線の建設基準 | 博多-新八代間の構造物の種類と延長 | ||
最高設計速度 | 260km/h | 切取・盛土 | 6km(5%) |
最小曲線半径 | 基本 4000m | 橋りょう | 17km(14%) |
最急勾配 | 35‰ | 高架橋 | 61km(50%) |
軌道中心間隔 | 4.3m | トンネル | 37km(31%) |
電車線の電気方式 | 25,000V(交流) | (最長トンネル=筑紫トンネル12,115m) |
(注)35パーミル(‰)=列車が1000m走って35m上ることを意味する。 |
2010/12/11 九州新幹線・停車駅と乗車料金 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
停車駅
建設費を地元自治体が一部負担していることから、地元の要望と時間短縮の両立を図ったという。本数は関西直通が1時間に1本、九州内型は1時間に3本(内1本が鹿児島中央行き、2本が熊本まで)。なお、深夜や早朝時間帯の博多-熊本の特急は残し、通勤時間帯の博多-熊本県北の特急は長洲駅発着で検討中。 |
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九州新幹線各駅の4月の1日平均乗降客数 (2011・06・23JR九州発表) | ||||
駅名 | 乗降客数 | JR九州の想定 との比較 |
地元自治体の想定 | 昨年4月の実績 |
新鳥栖 | 1450 | ▲14.7% | 4200 | - |
久留米 | 2500 | ▲7.4% | - | - |
筑後船小屋 | 650 | ▲31.5% | 1700 | - |
新大牟田 | 700 | ▲39.1% | 2300 | - |
新玉名 | 900 | ±0% | 3900 | - |
熊本 | 12550 | ▲4.1% | - | - |
新八代 | 1950 | ±0% | - | 1550 |
新水俣 | 1000 | ±0% | - | 750 |
出水 | 2050 | 2.5% | - | 1700 |
川内 | 2650 | 3.9% | - | 2350 |
鹿児島中央 | 13100 | 12.4% | - | 8350 |
新駅が苦戦している。特に気になっていたのが「筑後船小屋駅」である。当初から疑問視されていた新駅だが、案の定という実績が出ている。地元自治体の想定1700人に対して650人は達成率38%である。以前、筑後船小屋駅で客待ちをしているタクシーが「列車ごとに3~4人の客を見込んでいたが、1~2人の利用しかない」と言っていた。大体予想と実績のギャップ通りである。38%という実績は、想定が甘いというより、ほとんど予測という体をなしていない。所詮、公共工事の予測数字など、こんなものである。無理やりつくった新駅だから、対外的に少ない数字が出せなかったか、列車の停車本数を確保するため水増ししたかである。利用客数の実績は、今後停車本数増減の尺度となる。ところが、自治体の要望は逆で、「停車本数をもっと増やしてくれ」と言っている。本末転倒である。乗降客を増やす努力をして、実績をつくるのが先である。1000円高速が無くなって、公共交通機関は、快適な旅を提供して、巻き返しを図りたいところだ。重要なのは、スピードに対して対価を払う客を大事にすることだ。 |