第41回・日展 | 随筆のページへ トップページへ File No.100430 |
今年もまた、福岡市美術館で「日展」(2010・04・24〜05・16)が始まった。毎年楽しみにしている展覧会である。美術館に行く前に、まず天神に出て、先月開業したばかりの「福岡パルコ」を覘いてみた。天神は、パルコの開業で、若い買い物客が増えているという。 パルコ1Fには文具・雑貨の「Smith」がある。この店は新宿など東京都内とその周辺が中心で、九州は初上陸である。調べてみると、コンセプトがなかなかいい。ホームページにはこう書いてあった。 「一本のペンと一枚の紙から生まれる文化は無限大です。つまり文具は、道具であると同時に文化の入口でもある。私たちのつくる文具は、実用的であるだけでなく、使う人の慣性や想像力を自由にするものでありたいと、考えます」。 店内には、そのコンセプト通り、実用性とデザインの両立を重視した商品が並べられていた。見て回るうち、日付スタンプ「MINI DATER」が目にとまり購入した。 先日、「天神ロフト」が、「イムズ(4F)」に九州初の「ミニロフト」をオープンした。テーマは「女性のための美と知と楽しさ」だという。以前トヨタのギャラリーがあった場所なので、広さはだいたい想像がつくだろう。文具にも結構スペースを割いていた。「ちょっと寄って」というときに便利である。 新聞報道によれば、西鉄「インキューブ」(ソラリアステージ)も増床して秋にオープンするという。5Fもインキューブになり、拡張後は「天神ロフト」とほぼ同じくらいの店舗面積になるらしい。文具・雑貨でも天神地区は激戦区である。 |
スミス福岡店・福岡パルコ1F (九州ではここだけ) |
過日私は「視覚」のページでこんなことを書いた。
4月23日の西日本新聞で、「日展」開催に先立ち、作品などの紹介があった。その中に日展・中山理事長がこんなことを書かれていた。 「・・・私たちが生命を維持するために摂取するときの脳の働きと、芸術にふれ美しいと感じるときの脳の働きは、つかさどる部分が同じだそうです。つまり、私たちは芸術にも生かされているのです。ぜひとも皆さん、美にふれて新たな生命力を得ていただきたい。・・・」 思ったとおりである。「美」を見極める力は、すなわち「人間の生きる力」いうことのようだ。 今回、私は佐藤哲氏の「ひととき」(洋画)、原田彪氏の「長い道」(彫刻)に魅かれた。「ひととき」は文部科学大臣賞を受賞した作品で、アートガイドの授賞理由には「現代女性のいきいきとした表情を、力強い色彩と筆勢で、演奏会前の期待と不安な様子を正面から構成し、たくみに表現した秀作である」とあった。事前に新聞で見たときから、かなり期待していた作品である。実際に観てみると、よくぞここまで微妙な心の動きを表現できるものだと、しばし立ち尽くした。見事な作品だった。帰りに記念にとハガキを買ってきた。 彫刻の「長い道」は、新聞の「郷土の作家たち」で紹介されていた。これも期待していた作品だ。子供をしっかり抱き、大地を踏みしめる母親の立ち姿。その表情は実に力強い。母に寄り添うように立つ子供も、しっかりと自分を持っている。遠くを見つめるまなざしは、あたかも「山の彼方の幸」を目指しているかのようである。題に「長い道」とつけた作者の思いが、実によく表わされていた。 丁度、作家自身によるギャラリートークが行われた。波多野雅子氏(作品:有明の風)と、瀧井利子氏(作品:父のいた作業場)のお二方だった。直接、作家自身から話を聞くと、作品に対するその思いの深さがよく分かる。瀧井氏は、人が「こんな汚い場所」という父の作業場だが、自分には素敵な場所であるという。父への思いと、父からの自立という二面が表現のベースに流れている。波多野氏は、虫が食い朽ちた杭にも美しさを感じるという。それは、その杭が持つ自分の使命を全うした姿であり、それに自分の人生を重ね合わせることによって、「美」を感じるという。やはり、美術の才能のある人は、我々には及びもつかない鋭い感性があるようだ。 |
|
日展アートガイドと 入場券の半券 |
佐藤哲「ひととき」 (会場で購入したハガキ) |
原田彪「長い道」 (西日本新聞掲載分より) |
美術館を出て、大濠公園を歩いていると、先日オープンしたばかりの「スターバックス」があった。公園を散策して、コーヒーで一休み、というのが実にいい。座席数は屋内41席、テラス席32席の計73席だそうだが、テラス席が多いのは、公園のコーヒーショップらしさと言える。せっかくだから、テラス席でゆっくりしてきた。大濠公園に来た時には寄ってみたいと思うが、平日でも長蛇の列だったので、この人気ぶりだと休日にはかなり待つことになるのではないだろうか。 |
スターバックス大濠公園店 テラスでコーヒーを楽しむ |
随筆のページへ | トップページへ |