日本沈没? 随筆のページへ

トップページへ

File No.091209

衆議院総選挙直後の9月6日、私は次のような随筆をアップした。

さて、先日の総選挙では民主党の大勝と、自民党の歴史的大敗に終わった。今、着々と民主党体勢に向け準備が進められている。しかし、民主党の方針について、懸念されるところは「安全保障」の問題である。鳩山代表は「対米依存型の政治ではなく、より自立を促す外交を作り上げる」として、マニフェストにも「対等な日米同盟関係」を謳っている。しかし、対等な日米関係というなら、それなりの基盤の確立が必要である。憲法を改正し、更なる自衛隊の強化をはかり、集団的自衛権を認めることもそのひとつと言えよう。国民の安心で豊かな暮らしを守る基本は、しっかりした安全保障に裏付けられなければならない。ところが実態は、公約とは裏腹に、社民党との連立を視野に、全く反対の方向に進んでいるかのように見える。次の「防衛計画大綱」が心配である。野党であれば理想を掲げて、反対を唱えていればよかろうが、与党になればそうはいかない。民主党内だけでも一枚岩ではないのに、ましてや308議席の端数にも満たない党の理想論に振り回されるというのは如何なものか。

更に10日後の9月16日には、亀井大臣の起用についての報道で次のような文を追加した。

今朝の西日本新聞に、『幻の「亀井防衛相」』というタイトルが大きく出ていた。鳩山氏側近が、国民新党幹部にこんな意向を伝えたという。「民主党内は安保政策で意見が分かれており、防衛相は党外の人がいい。社民党の福島党首も入閣するので、これを抑えられる亀井さんの起用は面白い人事です」。これに国民新党側は"好感触"だったという。ところがここから迷走が始まる。亀井氏は、米国流の新自由主義やイラク戦争を厳しく批判してきた人ということで、国民新党幹部に米大使館関係者から「本当に亀井氏なのか」という問い合わせの電話が入ったのである。結局、米国の意向も反映してか、亀井防衛相は実現しなかった。今回のこの迷走劇は、実に民主党の安全保障政策の事情を表している。民主党内も一枚岩ではないのに、社民党と連立を組んだことで、いよいよ"どうしてよいやら"状態である。防衛省幹部は「亀井氏が起用されれば、民主党は安保政策から逃げたということになる」と言ったという。国民を守る根幹が、こんなことでいいのか。しかも「面白い人事です」とは何事か!

さて、あれから3か月、不安は現実のものとなりつつある。普天間基地移設問題で、アメリカが怒っている。せっかく長年かけて作り上げてきた辺野古移転も、あっという間に海の藻屑である。寝た子を起こし、ぐちゃぐちゃにして、さて解決策はというと何もない。連立の社民党は、党首選出で党内をまとめるのに、ことさら持論をぶちあげる。国益そっちのけで、社民党の言いなりになっている民主党に与党という自覚はあるのか。"米中接近"の昨今とシンクロして"日米離反"では、日本の先行きを心配する人も多かろう。これでは、安保条約があるから、有事の時だけアメリカに守ってくれとは、口が裂けても言えない。社民党連立うんぬんより、民主党自体が防衛力増強など気にしている風もない。そんな状況下で、絶対に戦争はしないと言っているそうだが、そうなると、尖閣列島を中国が我が物顔に支配しようが、北方領土をどうされようが、ただただ見守って「友愛、友愛・・・・」と“うわ言”のように言い続けるのだろうか。あっちにも、こっちにもいい顔をしようとしていては、国のかじ取りなど出来ようはずもない。


民主党は「核密約」について、その存在を認める方針のようだ。「非核三原則」のうち「核兵器を搭載した艦船、航空機の領海通過や寄港、飛来」の部分である。戦力は、外交交渉のバックボーンという一面があるが、それは即ち有事の際、主導権を握れるかどうかである。そのため軍隊は、いつ如何なるとき有事が発生しても、即応態勢がとれるよう、24時間常に臨戦態勢にある。その即応態勢が鍵を握っている軍の艦船が、日本に寄港するからと言って、わざわざアメリカ領で核兵器を下ろして、立ち寄るなどあるわけがない。インド洋で日本が給油した艦船が、その油でどこに行ったかが、かんかんがくがく議論される。どの部分が日本の油で、どの部分が自前の油など分かろうはずもない。日本が給油した油だから、行く先が制約されるなど、常に臨戦態勢にある艦船にはありえない話である。素人の私が考えてもわかることだ。ことほど左様に、日本では建前が幅をきかす。「核密約」を究明するなら、「密約は存在するが、実効性はない」などとあいまいにせず、安全保障上必要であると、堂々と現実に即して今後に備えるのがよかろう。


かつて、福田元首相は「かわいそうなくらい苦労してるんですよ」と腹の底から絞り出すように言っていた。今、民主党幹部は、その言葉を思い出しているだろうか。「ブーメラン効果」とはこんなことを言うのか。今朝の新聞によれば、菅副総理と亀井大臣の間で激しい言い争いがあったという。菅氏が「亀井内閣でも福島内閣でもない」と、少数の連立与党に不満を爆発させた。これに対し亀井氏は「民主の人がいくらじだんだ踏んでも単独政権ではない。連立というのは数の多少にかかわらず並立だ」と言い放った。激論は20分も続いたという。このところ亀井氏は「今の民主党は、私の言うことに何も反対はできない」と豪語しているらしい。財源の苦労など知ったことではないと言わんばかりに、ただただ財政支出上乗せをごり押しする。過日、独断で官僚OBを郵政社長にしたのを見てもよくわかる。これは選挙で郵政関係者の票を取り込んだ小沢氏への"ごますり"と、小泉元首相への"意趣返し"がぴったり一致したということだろう。日本を動かす政治がこんな低レベルでいいものか。連立で迎合し「党益あって国なし」、優柔不断の民主党に明日はない。

随筆のページへ トップページへ
2009/12/19 何だかなあ〜
新聞に、社民党の福島党首が、地方で講演した様子が載っていた。普天間移設問題で「・・・・私は頑張り抜きたい」と、県外移設をあらためて強調したという。しかし、具体的な移転先は言わず、「鳩山首相が、新たな移転先を探すよう関係閣僚に指示した・・・・」とあなた任せである。その鳩山首相も「先延ばし」をしただけだから、また10年、15年すったもんだの繰り返しだろう。米は、相変わらず宜野湾市に居続け、8000人の海兵隊員と9000人の家族のグアム移転を白紙に戻し、その原因は、日本政府にあると言い続ける。中国、台湾海峡、北朝鮮を考えれば、米にとって現状維持は願ってもないことだ。結局、社民党が、沖縄のためと言って、頑張れば頑張るほど、沖縄の負担がこのまま続く。現実を見ようとせず、理想だけを唱え続ける輩ほど始末に負えないものはない。
今、福島瑞穂だけでなく、亀井静香、小沢一郎は、きっとこんな気持ちだろう。「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」。そこで、謹んで次の言葉を贈ろう。「おごれる者久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。猛き人も遂には滅びぬ。ひとえに風の前のちりに同じ」。
2010/01/27 何だかなあ(2)
名護市長選で、移設反対派が当選した。鳩山首相は「市長選結果は一つの意思と受け止めるが、民意に関係なくゼロベースで臨む」との考えを表明した。これに社民党が即反発したが、その社民党も、大村や佐賀をちょっと見に行っただけで具体的な案はない。防衛省関係者によれば、検討対象の場所はいづれも「過去検討され、地元の反対や環境問題などで選択肢から外れた」という。さらに「日本政府が候補地を固めても、地元自治体が受け入れる保証はない」、「実現可能な案を政府が見つけない限り、危険な普天間飛行場はこのまま残る」とも言っている。民主党・岡田外相でさえ「検討委で良い案が出てこないと現行案とか、もっと悪い現状固定になりかねない」と言っている。
「普天間の無条件返還に、覚悟を持って取り組む」と息巻く社民党よ、どうする!どうする!!どうする!!!やれるものならやってみな。お手並み拝見だ。
2010/02/15 何だかなあ(3)
社民党、国民新党が、移設先の方針を固めた。
提案内容 状況
国民新党案 嘉手納基地統合及びキャンプ・シュワブ陸上部移設。サイパン、テニアンへの訓練移設 名護市長は、沿岸部も陸上部も絶対反対を表明している
社民党案 国外移設(グアム・サイパン・テニアン)及び期限付きで九州(大村航空基地・佐賀空港) グアム側は難色を示している。大村市など地元は各案にはすでに反対を表明している
現状、地元が受け入れを表明するとは考えにくい。しかも問題はアメリカが合意するかどうかだ。米上院東アジア太平洋問題小委員長は「県外への移設は好ましくない」との認識である。提案だけなら誰でもできる。政党なら言ったことに責任を持ちなさい。それが国民に対する責務だ。


2010/02/18 何だかなあ(4)
普天間移設問題、ただいま与党が迷走中。候補地地元は一斉に反発し、それどころか与党内部の意見さえまとまらない。国民新党案(辺野古陸上部案)に、社民党福島党首は反発し批判すると、その批判に対し「検討委員会以外の場で批判するのは如何なものか」と社民党内部から批判が出る始末。国民新党は「(辺野古陸上部案)非常に現実的な案」と言い、首相は「検討する価値はある」と好感触を示した。図らずも自分たちで「辺野古」が一番現実的だと認めた訳だ。長い時間をかけてようやく決まった辺野古沖案を、耳触りのよいことばかり言って、ぐちゃぐちゃにし、反対派の市長まで誕生させておいて、よくも言えたもんだ。かつて首相は「民意に関係なくゼロベースで臨む」と言ってはいたものの、自分の口から辺野古とは言えないのを見て、国民新党が助け舟を出したのではないのか?辺野古が一番現実的であることに間違いはないが、もし辺野古で決まるとすれば、与党は沖縄県民感情を単に翻弄したにすぎないことになる。
2010/02/19 社民党は、国民新党案を「いかがなものか」と批判はするものの、自分たちの方針は決定できず先送りするらしい。だいたい理想を声高に言う輩は、具体的な方策はないに等しかったり、あっても現実とはかけ離れたりしているものだ。だから、よく聞くと現実に立脚していないので、すぐに理論が破たんする。高い理想を言うことで、自分自身に自分が酔っているだけのことである。


2010/02/23 「核 トマホーク退役へ」
西日本新聞の記事によれば、米は原潜に搭載可能な巡航ミサイル「トマホーク」を順次退役させる方針を決定したという。東西冷戦中は、米原潜に搭載され日本にも立ち寄っていた。しかし冷戦終結後は、配備可能な状態で保管されてはいたが、原潜への搭載はされていなかった。核トマホークの延命措置がなければ2013年に退役となる。これにより、日本への核持ち込みの可能性は、ほとんどなくなった。「核密約問題」も「密約は存在するが、実効性はない」などと、あいまいなことで逃げる必要もなくなった。