てくてく 地図記号 随筆のページへ

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File No.091201

先日、1:50.000地形図(平成18年12月国土地理院発行・福岡)を片手に歩いた。天気がよく小春日和の気持ちのいい日和を選んだ。歩いたのは、JR筑肥線の駅で言えば「下山門駅〜九大学研都市駅」(福岡市西区)である。直線なら約5kmだが、実質10kmくらいは歩いただろう。実は地形図を片手に歩こうと思ったのは、半年ほど前だったが、夏の暑い日に歩くのもどうかと思っていたら、あっという間に紅葉も終わり頃になってしまった。きっかけは「月刊・地図中心」2009年6月号の特集記事だった。「これでよいのか国土の記録!日本の地形図が変わる」という特集で、2009年3月に開催された公開シンポジウムの様子が載っていた。このほかにも8人の方々が、地形図に関する意見、思いを述べられていた。

「地理空間情報活用推進基本法」なる法律が2007年に公布・施行された。これは、地形図を従来の紙ベースから、コンピュータによるデジタル化へと大転換するものである。「デジタル化は時代の要請である」と国土地理院は言う。確かに、衛星測位による地図作成は、紙ベース地形図に比べれば、正確性、迅速性において遥かに優れている。しかも、この情報をインターネットで公開し、みんながダウンロードして、利用者の情報と重ね合わせて利用できるようにするという。デジタル化された地図は、ネットやカーナビや携帯によって、日常的に我々の身近なものとなってきた。この現状を思えば、時代の要請であることに間違いはない。「社会の情報基盤としての地図」に転換するのである。

一見いいことだらけのデジタル化地形図だが、シンポジウムでは何が問題かを浮き彫りにしている。紙ベースの1:50000地形図、1:10000地形図の更新停止、1:25000地形図の修正・刊行周期の大幅後退に異議を唱えているである。識者たちは、デジタル化がいいか、紙地図がいいかという二者択一ではなく、それぞれの良さを活かした地図政策を望んでいる。つまり、デジタル化がすなわち紙ベース地形図不要論にはならないと言っているのである。詳細は書かないが、新しい地図政策への要望と課題として次の4項目があげられていた。 (1)初等中等教育現場への配慮の欠如(2) 地図を作成・活用できる人材育成への視点(3)電子地図と紙地図の相違に関する国民教育の必要性(4) 地図の保存と利用のあり方・・・である。

デジタル化に転換するにあたって、基盤地図情報の精度が全国統一基準ではなくなるという。統一基準による国土の実態の把握は、伊能忠敬、柴崎芳太郎などの先人たちが血のにじむ努力で築きあげてきたことである。そうして積み重ねてきた紙ベース地形図は、その地域の有り様を描いた地誌であり、その時その時の日本を現した貴重な文化財であると識者たちは言う。それを表す国土地理院の地図記号は、日本独自のものであり、その時代その時代を記録してきた。最近追加された、老人ホームや風力発電の風車の記号などを見ても、時代を敏感に反映していることがわかる。「月間・地図中心」の内容を充分理解できたわけではないが、知り得た知識を思い浮かべながら「てくてく地図記号」と題して一日を楽しんでみた。



1:50000 福岡 (平成17年要部修正)

地図記号は「月刊・地図中心」平成18年1月号:「特集・地図記号400」より引用しています。



(1)生の松原

(2)壱岐神社
生の松原は、海岸沿いに遊歩道が整備され、景色を楽しみながらウォーキングをしたり、散策している人たちと出会う。九大演習林の一部が公園として開放されているので、地形図には、九大演習林と表示されている。地図記号は当然「針葉樹林」である。壱岐神社に、生の松原の地名の由来が書いてあった。神功皇后が松の枝を逆さにして戦勝を祈ったところ、松の枝が根つき、生き返ったという逆松(さかさまつ)の伝説にちなんで名付けられたという。


(3)一等水準点

(4)元寇防塁
壱岐神社のすぐ近くに、この一等水準点があった。 立札があるのですぐわかった。「水準点」とは、高さの基準となる点で、基本測量によって設置された一等〜三等水準点のことを言う。 生の松原の一角にある元寇防塁は、13世紀博多湾岸沿20kmにわたって築かれたものの一部が整備保存されたものである。ここの他7か所が国の史跡として指定されている。


(5)ペグマタイト岩脈


(6)JR複線・トンネル
長垂のペグマタイト岩脈は、リチウム、セシウム、ウランなど珍しい70種以上の鉱物が入っていて、国の天然記念物に指定された、と長垂公園に書いてあった。この近くの長垂海浜公園からの眺めは実にいい。 筑肥線が沿岸を走っている。ここは、上りは海岸側の短いトンネルを、下りは山側の少し長いトンネルを通る。普通鉄道(JR)の複線記号は、白い部分が二つ繋がって表示される。撮影したとき丁度103系が来た。



1:50000 福岡 (平成17年要部修正)
(7)今山遺跡

今山は、玄武岩と花崗岩からなる84mの山で、山全体が国指定史跡となっている。弥生時代前期〜中期、玄武岩製“石斧”が製作されたところとして知られる。ここで製作された石斧は、北部九州各地で発見されており、確立された交易ルートで流通した当時のブランド品だった。立札に“筑前今宿歴史かるた 一番”として「今山の 石斧で昔 ひげをそり」と書いてあった。
今津湾
(8)干潟
(9)漁港
弥生時代この今津湾は、志登支石墓群くらいまで大きく入り込んでいた。港の跡は見つかっていないが、西の加布里湾と共に東の今津湾が、伊都国の交易拠点だった。今宿五郎江遺跡からは、中国貨泉や楽浪系土器なども出土している。漁具も多く出土しており、今津湾での漁業も盛んだったと思われる。今も見られる干潟や漁港が、当時の立地条件を思わせる。
(10)中学校・高等学校

(11)工場
福岡舞鶴高校(写真右側の建物)と付属中学校(左側の建物)が同居している。中高一貫教育の私立学校である。地図記号では、○のない文が小・中学校で、○が付いているのが高等学校である。 インスタント・ラーメンで知られる(株)マルタイの工場。サンヨー食品との資本・業務提携が発表され、今朝の新聞では、サンヨー食品と西部ガスが、増資の半数ずつを引受け、払い込みが完了したと出ていた。


←(12)電波塔

今回の“てくてく”まで知らなかったのが、水準点とこの電波塔だ。地形図に記号を見つけて、改めてその存在に気づいた。入口まで行ってみたが、壁面にNTTとそのマークがあるだけで、あと何も確認できるものがなかった。
(13)九大学研都市駅→
この九大学研都市駅から103系に乗って帰路についた。この地形図が最後に修正されたのが平成17年だが、この駅はまだ表示されていない。丁度すれ違いということだろう。結局、この駅は紙ベースの地形図には表示されないままで終わるのだろうか。


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坂本冬美 「Love Songs〜また君に恋してる〜」
「笑っていいとも」と「ぴったんこカンカン」で冬美ちゃん自身が紹介していたアルバム。「また君に恋してる」のサビの部分はCMでよく聞いていた。やさしく語りかけるように歌う冬美ちゃんの声が耳に心地よい。大切に、大切に歌っている気持ちがCDを通しても伝わってくる。「冬美ちゃん、いい曲に出会えたね」と声をかけてあげたいような、そんな曲である。「・・・・また君に恋してる いままでより深く・・・・」流れる歌声で部屋全体を“やわらかな布”で包みこんでくれる。
アルバム収録曲
(1)また君に恋してる(2)恋しくて(3)あの日にかえりたい(4)会いたい(5)言葉にできない(6)恋(7)夏をあきらめて(8)シルエット・ロマンス(9)片想い(10)なごり雪(11)時の過ぎゆくままに(12)大阪で生まれた女
Bonus track(13)また君に恋してる duet with ビリー・バンバン