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File No.091021

先日、テレビ番組で" もし電気が禁止されたら、人や生活はどう変わるか "という実験をしていた。これはNUMO(原子力発電環境整備機構)提供で、「電気のある生活のありがたさ」や「原子力発電の重要性」「地層処分」などへの啓発を目的としたものだった。この番組の中で言っていた情報を羅列してみよう。まず日本のエネルギー自給率はわずか4%であること。ところが、我々一般家庭が一日に使っている電気の使用量約10kwhは、世界で3番目に多いということ。世界のエネルギー埋蔵量は枯渇が迫っており、石油はもはや約40年分しかないこと。原子力の燃料であるウランにしても、あと100年分しかないという。ただ、86%を中東に頼っている石油に比べ、ウランは輸入相手国の政情が安定している。しかも、一度使用した燃料の大部分を再度使うことができる。ところが、どうしても再利用できない"高レベル放射性廃棄物"が発生する。この"高レベル放射性廃棄物"の処分方法で、今一番いいと考えられているのが「地層処分」だが、日本ではその処分地がまだ決まっていないということなどであった。

先ごろ「気候変動サミット」で日本は「2020年までに1990年比で25%の削減を目指す」と国際公約をした。2005年比なら30%減目標となる。その削減後の電源構成を見ると現在1%の新エネルギーが14%に、一方火力は61%から31%へ半減するとしている。問題の原子力は、現在の31%を45%まで引き上げる。2005年の「原子力政策大綱」では「2030年以後も、総発電量の30〜40%程度以上を目指す」となっていたから、大幅な引き上げである。原子力発電は、ウランを核分裂させることによって発生する熱エネルギーを利用する。化石燃料を燃やさないので、二酸化炭素を排出しない。これが原子力の大きなメリットである。高い削減目標をクリアするためには、原子力が有効であることは間違いない。今後、九電・川内原発3号機など9機以上の新増設が必要だという。ただ、建設があれば時を経た原子炉の解体もある。これがまたやっかいな問題で、解決の目途がたっていない。原子炉についても、放射性廃棄物同様、出口が見えていないのである。

先日の新聞に、九州電力・玄海原発でMOX燃料の装てんが終わったとでていた。これで11月の試運転を経て、いよいよ12月には国内初のプルサーマルが始まる。川内原発の増設計画などもあり、何事もなく順調にいくことを願うばかりだ。ところが、プルサーマルには反対の声も多く聞かれる。その反対理由の一つに核燃料サイクルへの懸念があげられる。プルサーマルは放射性廃棄物の量を減らすことを目的としている。ところが"高レベル放射性廃棄物"の地層処分どころか、再処理自体が技術的な問題で難航しているありさまだ。さてそうなると、玄海原発の稼働で発生した"使用済み核燃料"はどうなるのか。川内原発が貯蔵プールの増強工事で20年延命するというから、当面は大丈夫としても、循環しなければいづれ最悪のシナリオにもなりかねない。今回実施の3電力会社以外の電力会社はプルサーマル導入を先送りした。そればかりではない。国が5年ごとに見直す「原子力政策大綱」の改定さえも先送りになった。いつ改定するか見通しも立っていない状況のようだ。

その原因の多くはトラブルの多発など、業界全体の杜撰(ずさん)な体質にあるのではないか。そこで以前、三菱重工の航空宇宙本部の部長・浅田氏が書いたものの内容をかいつまんで書いてみよう。これは民間企業として初めてH2Aロケット(13号機・かぐや)を打ち上げ、成功した時のものである。
・・・・二度と同じ様な失敗をしない為にどうすれば良いかがMHI社内で議論され、一つの具体的な結論として品質評価活動が始まった。品質評価活動は、H-IIAロケットの試験機1号機から採用され、号機を重ねる度に評価内容がマンネリ化しない様、常に新しい視点が加えられた。これまでの品質レベルを維持するには自己チェック機能が働く様に第三者的な立場での確認も必要との認識に至った。メンバーが製造現場に張り付いて監督を行うと共に、全ての設計変更や不適合判定の是非についても確認を行っている。この様にして、二重三重の網を掛けて、品質に手落ちが無いかを慎重に判断している。正に社の総力を挙げての判定であった。・・・・ただひたすら、その後の全ての作動が無事に進むことを祈る。・・・打上げ執行責任者のみならず、関係者全員が最新情報を共有し、的確な判断が出来る様、仕組みを整えると共に、万一の事態に備えたリハーサルを何度も行った(抜粋)
この文書から、正に胃が痛くなるような緊張感が伝わってくる。いろいろな問題を抱えながらも、原子力発電は今後のエネルギー政策に不可欠である。この現状を肝に銘じ背水の陣で臨むなら、トラブルで何度も再開を延期した"もんじゅ"のようなことは起きないのではないか。

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