昨日、消費生活アドバイザーの資格更新講座((財)日本産業協会主催)を1単位だけ受講してきた。資格更新のためには、5年間の間に4単位以上取得しなければならない。私はこの4月から新たな5年間の更新期間に入ったばかりなので、1年に1単位づつ取得すれば問題ない。今回受講したのは「最近の消費者関連法規の動き」である。“特定商取引法(特商法)”や“割賦販売法(割販法)”などの改正の動きについて、専門の講師(今回は弁護士)から詳しく学んだ。さてその改正の動きであるが、最近認知症など判断能力が低い高齢者を狙った悪徳商法の被害が後を絶たない。しかも、クレジットを利用し高額の商品を買わせることが更に被害を大きくしている。今回の改正は、特商法と割販法のクレジット取引の問題は、表裏一体ということで、両法律が相互に連携した改正で規制の強化を図っている。他に、通信販売、迷惑メール、消費者団体訴訟制度、長期使用製品安全点検制度などなど、90分で20数頁に及ぶレジュメはかなりハードだった。
どんな内容だったか、特商法と割販法からほんの一部だけ書いてみよう。まず特商法の改正(案)であるが、指定商品・指定役務が廃止になる。これは、商品を指定すると、悪質業者が指定していない商品を扱い、規制が後追いになっていることから、原則として全ての商品及び役務に適用することになる。これには割販法も歩調を合わせ、不動産を除く全ての商品及び役務が対象になる。次に、今回の特商法改正の目玉ということだが、「訪問販売に掛かる通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等の申し込み撤回等の制度の創設」いわゆる過量販売の問題で、高額の被害はこれによって発生している。過量販売で契約が解除になると、クレジット契約も解除になり、既払金を返還しなければならなくなった。登録制になった個別クレジットの業者は、契約者の適正な支払能力を調査し、訪問販売業者の勧誘販売行為の調査も義務となる。クレジット業者への規制はかなり強まった。割販法改正(案)の目玉は、現行「2ヶ月以上、かつ、3回以上の分割払い」となっているものを「2ヶ月以上の1回払い及び2回払い」も規制対象にすることになったことである。
消費者政策で最近の注目は「消費者庁」だろう。福田首相は1月の施政方針演説で“消費者重視”を重要政策の一つに掲げた。現在の省庁ごとの縦割りになっている弊害を打破し、消費者行政を独立した官庁に一元化しようというものだ。現在内閣府にある国民生活局をベースに立ち上げる。国民の安心・安全への不安を強く意識し、消費者重視の行政に取り組もうという気概がいい。甘い汁に群がる取り巻き連中などいない消費者問題は、我々国民の支持が必要だ。消費者庁は、消費者問題に関する「司令塔」として、各省庁に対する勧告権など、強い権限を持って推し進める方針である。国は「安全基準の策定や全国的に展開する事業の策定や全国的に展開する事業の免許付与」を所管し、消費者の身近な相談は、地方分権という一面もあり、市町村によって運営される。食品偽造、中国餃子、製品事故、近時の消費者問題は枚挙に暇がない。ところが消費者行政推進会議によれば、地方の消費者行政は、むしろ弱体化しているという。消費者行政の予算は95年に比べてほぼ半減、03年度に比べても25%減少しているそうだ。「消費者庁」には大いに期待したいところだ。
日本では「公僕(こうぼく)」という言葉は、もはや“死語”となってしまったのか。「居酒屋タクシー」というのはいったい何なんだ。テレビドラマ「CHANGE」(フジ系)で総理の秘書官が言う「自分たちが一番偉いと思っているんだから。官僚は・・・」。選挙もなければ、責任も取らない官僚。官僚にとって大事なのは、自分の出世と天下り先の確保だ。官僚無しでは身動き取れない政治家が更に増長させている。今「消費者庁」の創設は、我々の期待とは裏腹にかなり厳しい状況に陥っている。消費者庁に移管が決まった法律をみると、内閣府、警察庁、公正取引委員会などの所管のものばかり。肝心の省庁は徹底抗戦の様相である。農水相など「いろんな事件が起きたが、組織としてきちっと対応してきた」と言い放ったという。既得権益を奪われることへの強烈な拒否反応である。業界を育てることと、その業界を規制するという、アクセルとブレーキ二つの力を官僚が持てば、まさに“鬼に金棒”である。「省あって国なし」の官僚が、どれだけ国民の目線まで降りてくるのか。「消費者庁」はその試金石である。福田首相と岸田消費者行政相には大いに頑張ってもらいたい。