柔道女子48キロ級のYAWARAちゃんこと田村亮子選手(トヨタ自動車)が決勝でリュボフ・ブロレトワ(ロシア)を破り、3大会連続の五輪出場で悲願の金メダルを獲得した。今まで畳の上で涙を見せたことのなかったYAWARAちゃんが、勝利の判定を受ける前に涙した。実況のアナウンサーは「涙の笑顔」と表現した。バルセロナ、アトランタとも銀メダルだった。今度のシドニーでは「最高でも金メダル、最低でも金メダル」と自分自身を叱咤激励し、日本中の期待を背負って来た。96年アトランタ五輪の決勝で、北朝鮮の選手に「効果」で優勢負けしたとき、畳の上で放心状態だった姿が今も目に浮かぶ。その決勝戦のビデオを見ることができるようになったのは10カ月後だった聞く。年齢的な体力の衰えに加えて、ケガなどによる「けいこ不足」という現実に、その精神的重圧はピークに達していたに違いない。 | |
この日、2回戦から登場、趙順心(中国)と対戦。なかなかポイントを奪えなかったが、残り2秒で有効を奪い、薄氷の優勢勝ちとなった。3回戦のルスニコワ(ウクライナ)戦では本来のペースを取り戻し、相手に注意が与えられて優位に立つと、2分25秒に払い腰で一本を奪った。準決勝の相手は、チャ・ヒョニャン(北朝鮮)。両者2度の指導を受け苦しい展開となった。決め手のないまま試合は進んだ。一方、順調にいけばYAWARAちゃんと決勝で顔を合わせるはずの、サボンは早々とまさかの敗退であった。その可能性は、YAWARAちゃんも例外ではない。オリンピックには魔物が住んでいると言われる。アトランタでもそうであったように、無名の伸び盛りの選手が勝つことも希ではない。しかも相手は北朝鮮。不安がよぎる。しかし、そこは百戦錬磨のYAWARAちゃん、残り30秒から攻勢をかけ3−0で判定勝ちした。決勝では、ブロレトワ(ロシア)と対戦。わずか開始36秒で鮮やかな内またで1本勝ちした。「一瞬だったんで自分でも覚えていません。みなさんの応援が一本を取らせてくれました」とYAWARAちゃんはコメントした。しかし、スローで見ると、素人目から見ても、はやい動きの中 一瞬のチャンスにこれしかないという技を繰り出している。これぞ天才の動きであろう。YAWARAちゃんの柔道人生を掛けた思いが魔物までも味方にした。 | |
優勝した瞬間、大、大、大拍手を送った。 そしてYAWARAちゃんと一緒に泣いた。 日本中が幸せに包まれた。 表彰台にあがったYAWARAちゃんは、 君が代を聞きながら、何度も目を閉じ チャンピオンの喜びをかみ締めた。 その胸に去来したものは何であろうか。 慮るにあまりある。 一足先に"心"で「我が家の栄誉賞」を送ろう。 |