絞扼性神経障害 随筆のページへ

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FileNo.040915
医薬分業について

久英はこの数ヶ月、指先の関節の痛みに悩まされている。痛みだけではない、波はあるものの、両腕のだるさ倦怠感にも襲われている。少々のことなら気にしない久英だが、原因不明のままでは対応のしようもなく、今日病院に行ってきた。

病院では診察の前に、自覚症状の申告から、まずレントゲンを撮った。首筋から手先まで、あらゆる角度から およそ10枚ほど撮影した。診察室に呼ばれていくと、ついさっき撮ったばかりのレントゲン写真が先生の前に並べられている。その写真を見ながら「特に異常はないですね」という。腕を上げたり下げたり、脚気の診断に使う小さな小槌みたいなもので“とんとん、とんとん”と叩いてみたりする。普段の生活状況なども聞いた上で、病名は「絞扼(コウヤク)性神経障害」と告げられた。どうやら一日中、机に向かっているのが原因のようだ。注射と症状(末梢神経障害と痛み)を緩和する薬二種類を出しますということだった。

さて、「注射か〜、いやだな〜」と思いながら待っていると、
看護師さんの大きな声がした。「秋元さ〜ん、秋元久英さ〜ん」。
中に入ると若くて綺麗な看護師さんが注射器を持って待ち構えている。
「え〜っ!!、それって“私”に注射するやつですか!?」
こともあろうに、直径3〜4センチもあろうかという巨大な注射器ではないか。
「そうです。でも針は細いのにしましたから大丈夫です」
人の気も知らないで、簡単に言ってくれる。

「う〜ん、血管が分かりづらいですね」「ここにしましょう。ちょっと痛いですよ」
液が少し入ったところで久英「痛たたたっ!!」
「あっ、ちょ〜っと違ったようですね。一旦抜きますね。ごめんなさい」
 久英は、心のなかで“#うぬ〜、このやろう!”と思いつつも、
 若くて綺麗な看護師さんである「いやー、どこの病院でも苦労するんですよ」
 と、ことさら平静を装う。

「じゃー、右腕にしましょう」「う〜ん、こっちも分かりづらいですね」
「腕の裏側のここにしましょう」
なんと腕をひねり上げられて、不自然な格好で注射することになった。
知らない人が見たらまるで、若い女性にねじ伏せられている中年といった図である。
 しかも、おじさんは「痛たたたっ!!」なんて言っている。
「あっ、ここも違った?ごめんなさい。ごめんなさい」
“#ふぬ〜、てめ〜、このやろう〜!”と思いつつも
「いやいや、いいんですよ」な〜んて、更にだらしない久英。


しかし、ついに若い看護師は「主任〜」と助けを呼ぶに至った。
 ベテランらしいしっかりした知的な顔の看護師にバトンタッチ。
「う〜ん、分かりづらいですね。ちょっと痛いですよ」
  注射針を差し込んで、なな!何と!私の皮膚の下で血管を探しているではないか!
 針が さ迷っている「あっ、ありました。よかった〜」
 顔で笑って、心で泣いて「絞扼性神経障害」の久英の腕には、
 左に一つ、右に二つ、計三つの真っ白いガーゼがあった。

 


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iyakubungyou

医薬分業について

近年「医薬分業」という言葉をよく耳にする。これは医師の処方箋に基づいて、街の調剤薬局で薬が調剤されるというシステムである。今回私も、処方箋をもらい、病院の前にある調剤薬局で薬をもらった。だいたい病院の横には調剤薬局があって、病院ではその薬局を案内してくれる。しかし、本当にこの「医薬分業」というシステムを理解し、充分にそのメリットを活用している人はどれくらいいるだろうか。

本来このシステムは、どこの病院でもらった処方箋でも、自分の決まった調剤薬局で調剤してもらうのが趣旨である。調剤薬局では、医師の処方箋に基づき、薬局の主体的な判断もしつつ、医師とともに、その人に一番適した薬を提供する。つまり自分の決まった調剤薬局によって、すべての病院の薬がコントロールされるところにこのシステムのメリットがある訳だ。

今回私が調剤してもらった薬局は、福岡県を中心に九州だけでも約100店近い店舗を持つ薬局である。こういう店だと、服用することが極めて稀な薬でも、医師は心配することなく、患者に本当に適した薬を処方することが出来るだろう。私自身は、結局のところ病院の近くにある薬局で薬をもらい、もらった薬も完全には飲み終わらないでフェードアウトしてしまうのが常であるが、本当にシステムのメリットを活用して、信頼する薬局を持つことは、非常に大切なことである。