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FileNo.050320

今日、午前10時53分 それは突然やってきた。日曜の朝ゆっくり起きて遅い朝食をとり、のんびりしていたところだった。青天の霹靂とはこういうことである。“ユサユサ!!ユサ!!!”と目に見えない巨大な力が突然襲いかかってくる。“ビルの両端”と“私の両肩”を わしづかみにして、“これでもかこれでもか!!”と情け容赦なく揺さぶる。立っていられる状態ではない。余りの激しい揺れに、座り込んで椅子につかまってしのぐ。壁の本やファイルがみるみる崩れ落ち、床が見えなくなるほど散乱する。隣の部屋からは、棚の食器が落ち、壊れる音が聞こえる。私はただひたすら、この悪魔が通り過ぎていくのを、呆然として待つだけだった。過ぎ去ってほっとしたのも束の間、震度3の余震が1時間に3回きた。これが、単なる震度3ではない。さっきの悪夢を甦らせる不気味な震度3である。これを書いている今も“ユサ、ユサ”と何度も来ている。めまいがしそうだが、この経験は今この場で書かねば価値も半減する。

テレビ・ラジオでは、直後から地震情報が流されている。即刻ヘリが飛んで、空からの映像を伝える。震度6弱の激しい地域だった天神では、福ビルの窓ガラスが割れ、警固公園に多くの人が避難している。博多駅では新幹線がストップしている。交通機関は軒並みストップし混乱しているようだ。一番激しかったのは家屋倒壊などの被害がでた玄海島だが、地震計が無いのではっきりした震度も分らないという。玄関のチャイムが鳴った。“こんな時に誰だろう”と思ったら、近所の人が“大丈夫ですか”と声を掛けてくれた。この人は、阪神大震災を経験した人らしい。やはりこういうことは、経験がものを言うのかもしれない。あっちこっち電話をかけようと思ったがかからない。ケータイも当然つながらない。どうも地震発生直後に規制がかけられたようだ。こんな時に、災害時の伝言ダイヤルを使うんだろうが、どうすればよいのか分らない。せめてテレビのテロップやラジオで、やり方の手順を詳しく流してくれると有難いのだが・・・。

福岡は比較的地震は少ない。マグニチュード7クラスの地震は、有史以来記録が無いそうだ。そういった意味で、どこか切実さに欠けていたと言えるだろう。と言っても、この恐怖は体験しなくては分らない。このページのタイトルは“震度6弱”とせず、あえて“震度6”とした。こんな大変な思いをしたのに“弱”などという字を使う気になれなかったのである。報道によれば今回の地震は、全く想定外で起こったそうだ。場所的にもそうであるが、発生も東西に押し合い圧縮された力が働き横にずれて起きたという。福岡で活断層といえば“警固(けご)断層”だが、今回の福岡県西方沖の発生場所は、この“警固断層”の延長線上にあるそうだ。しかし、海の中の為分りにくく、推測はしていたが把握は出来てなかったという。玄海島は、まさにこの“警固断層”の延長線上の真上ある。“災害は忘れた頃にやってくる”と言うが、全く想定外となると話は違う。ただ、ただ自然災害とはそういうものなのだと思い知らされる。

今のところ、死者は一人と報道されている。まだマグニチュード6、震度5クラスの余震の可能性もあるそうだ。時間を追うごとに被害の状況は明らかになっていくだろうが、これ以上の被害が出ていないことを祈るばかりである

(本震の直後に、震度5クラスの余震の可能性があるとのことだったが、丁度1ヶ月後の4月20日本当に震度5強の余震があった。朝6時すぎ飛び起きたが、さいわい我が家は何の被害もなかった。私の居住地は本震が震度5強、余震が震度5弱だった。)
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本震の前に起きる「初期微動」をとらえて、本震を予告するシステムが実証試験で成功したと報道されていた。これは、人間が揺れを感じない初期微動を「ナウキャスト地震計」で感知、震源や地震の規模を即時に分析して、大きな揺れがくる前に「何秒後に震度○」と予告するシステムという。実証実験の成功で、実用化に向けて大きく動き出している。初期微動から本震まで16秒、インターネットを通じて、各家庭のコントローラーに速報を流す。16秒は短いような気もするが、いろんな自動制御装置と組み合わせれば、大きな効果が期待できるそうだ。パニックにならなければ一階に居住している人なら、16秒もあれば避難できるだろう。(050428)