統一地方選
随筆のページへ

トップページへ

file-No. 030426

4月13日統一地方選の前半選が行われた。福岡市議選では、自民と福政会のベテラン議員が落選する一方、女性候補8人のうち6人が当選するなど、新旧交代を強く印象付けた。私の居住する区に、常々注目している市議がいる。と言っても私は転勤族で、詳しいことは何も分かっていないのだが、私がO市議を知りえたのは、毎週地下鉄駅の入り口で、自分のレポートを配っているからである。そのレポートによれば、O市議は過去二回最下位当選で、しかも「三期目のジンクス」というのがあるらしく、勝算は全くなかったようだ。ところが、結果は第二位当選の大躍進だった。それにも増して私が注目したのは、当選の翌朝、市議自身が選挙期間中と同じ時間に、同じ場所で、「同じ人数で」、お礼の挨拶に立っていたことだ。逆に投票した人が、手ごたえを感じたに違いない。

選挙前には、市議のレポートも67号になっていた。約一年以上にわたって毎週々々発行し続けたことになる。大きさはA5サイズで、表と裏にびっしり書かれている。一回一枚だが、それでも原稿用紙4〜5枚程度にはなる。これを一年間にすると原稿用紙約200枚以上の膨大な量になる。200枚を一度に読めといっても、ご遠慮申し上げたいが、このレポートのいいところは、電車に乗ってちょっと読むのに丁度よく、話題はタイムリーに伝わるから興味もわく。市議としても、このレポートを出すにあたっては、それなりの働きがなければならないし、首尾一貫した考えもなければならない。逆に言えばその自信があるから出しているとも言えるだろう。レポートという方法で自分の活動状況や考え方を、リアルタイムに報告していることが、大躍進の選挙結果と無関係ではないだろう。

今回の区の投票率は53%だった。それでも福岡市のなかでは一番高かった。考えて見れば、選挙の中でも「市議選」が我々に一番身近な問題を託す選挙である。ストレートに我々の生活を左右すると言っても過言ではない。そういう意味で、我々は選んだ議員の働きや、議会の動きを知る必要がある。家族レベルで市政の動きが話題になってこそ正しい民意を選挙に反映させることができる。市民の行政に対する無関心さを言われるが、無関心なのではなく、知る方法を知らないだけである。O市議のレポートのように、積極的な報告があれば、我々は大きな関心を持って見る。投票率ももっと上がるはずだ。市議は「地盤・看板・カバン」のどれもまったく縁がないとレポートに書いていたが、口利きには熱心だが、肝心の議会には全く意欲を見せないような旧態依然の議員などいらない。我々は、政治のプロではなく普通の市民感覚の議員を求めているのである。

時代は変わってきている。永年、行政と市民のパイプ役として機能してきた「町世話人」の制度も、見直しが提言された。住民の家族構成などを記載した「町内居住者台帳」が個人情報保護の観点から廃止され、この制度が事実上形骸化してきたようだ。街にはアパートが林立し、その駐車場には他県ナンバーが多く見られる。核家族化や転勤族で「隣は何をする人ぞ」である。有権者の価値観も多様化してきている。情報開示のあり方もそういう現実の流れに沿ったものでなければ市民の心をつかむことは難しい。O市議はそういう意味で手本を示してくれた。他の議員は、有権者に対し責務を果たしているのだろうか。「三期目のジンクス」というのがあるとすれば、疑問を持たざるをえない。我々はただ単なる一票でしかないが、「一寸の虫にも五分の魂」見るところは見ている。

随筆のページへ トップページへ