新成人、今年は152万人
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file-No. 030130

このところ猛威をふるっているインフルエンザに不覚にもかかってしまった。39度台の熱が丸三日続き「夢か、うつつか、幻か」の世界をさまよった。うつろな意識のなか、テレビでまた荒れた成人式の様子を報道していた。今年の新成人は152万人だそうだ。たしか10年ほど前、第二次ベビーブーム世代が成人するとき、200万人だったと記憶している。その後一貫して減り続けている。当然のことながら「合計特殊出生率」も1.33まで落ち込んでいる。この傾向は今後も続き、平成10年代後半には、150万人を割り込み、20年代には120万人くらいになるそうだ。


動物の生体系は、本能として種を保存できるだけの子供を産む。極端な話、魚なんかすごい数の子供を産むわけで、その中のほんの一握りが成長して親となる。先日テレビで、シャケは卵を3000個生むと言っていた。人間も、幼児の死亡率の高かった昔は、子供10人なんて珍しくなかった。昭和初期の年少者の人口指数(14歳までの年少者の人口を15歳から64歳の大人の人口で割る)は、60%を超していた。戦後、医療技術や生活環境が向上し、平均寿命も伸びてきた。生物学的に見て、本来のセオリから少なくとも戦後の「合計特殊出生率」の低下は自然であろう。


しかし、ここに来て、なぜこんなに急激に少子化がすすんだのだろうか。年少者の人口指数は20%を割り込む勢いだ。昭和30年代の高度成長期を経て、世の中が豊になってきた。電化製品は、家事の苦労を軽減し自由な時間を作り出した。小さい時から、考えうる限りの保護をうけ、高額なお年玉や小遣で豊な物質に恵まれた生活が普通になった。テレビは、バラエティーで笑いに包まれ、街に出れば、ブランド品を買うだけの小遣がある。昔は、年に一度の神社のお祭りを楽しみにしていたものだが、今はそんな楽しさが毎日あふれている。


こういう環境のもとで、女性の初婚年齢は、27才になり、20才代後半の未婚率は50%を超えた。パラサイトシングルという言葉も市民権を得た。「育児の社会化」で出産・育児の負担を軽くします、な〜んて言っても、多少の社会的環境の整備では少子化の歯止めとはなりえないだろう。この居心地のよい社会生活を満喫した人にとって、子供を産んで、育ててという長期間にわたる「がまん、がまん」の重労働はなじまない。核家族化で、出産・子育てに不安な女性も多い。近年の急激な特殊出生率の低下は、極めて人為的であり、動物本来の「進化に対応する適応能力」をはるかに超えたスピードで環境が激変していることが要因ではなかろうか。


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PS:上記随筆をアップしてから半年後、2002年の合計特殊出生率が発表されました。
(H15/06/06西日本新聞より)




出生率最低 1.32   政府予測超す少子化
厚生労働省が五日に発表した人口動態統計(概数)によると、2002年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子供の数)は1.32となり前年(1.33)を下回って過去最低を更新したことが分かった。同省が昨年まとめた「将来推計人口」による02年の出生率予測(1.33)をも下回っており、政府の予測以上のスピードで少子化が進んでいる実態が明らかになった。同統計によると、出生数は115万3866人(前年比1万6796人減)で、統計が残っている1899年以降、最低となった。
[解説]
出生率の低下に歯止めがかかっていないことが、五日公表された2002年の人口動態統計で明らかになった。少子化をくい止めようと、少子化社会対策基本法、次世代育成支援対策推進法が今国会で審議されているが、結婚や妊娠という個人の生き方にかかわる問題に、国がどこまで関与するのか、難しい問題をはらんでいる。従来の少子化対策は、仕事と子育ての両立支援の視点から、保育所の整備などが中心だったが、効果は上がってないことが、今回の統計でもはっきりした。政府は昨年一月に公表された将来推計人口をきっかけに、少子化対策に本腰を入れ始めている。推計は出生率の低下傾向が将来的にも続くとしており「急速な少子化の進行は社会保障をはじめとして社会経済全体に重大な影響を及ぼす」(小泉純一郎首相)との認識からスタートした。国会審議中の基本法には不妊治療への支援も盛り込まれ、推進法は男性の育児休業取得率10%などの数値目標達成を目指している。しかし、女性団体などは「基本法の重点が「生む」ことに傾きすぎて、性の自己決定権を脅かす」と懸念し、国会議員に慎重審議を求める働きかけを強めている。「年金制度を維持するために子供を生むのではない」という女性の反発も強い。「少子化対策元年」と言われる今年。子供を生み、育てやすい社会をどうつくっていくかという国民的な議論が不可欠だ。
「ちょっと一言」
この記事を読んだ妻いわく「長男・長女は昔から素直でおとなしいって言われている。一人しか生まないとなると、みんな長男か長女でしょ。そのおとなしい者同士が結婚してまたまた長男長女しか産まない。更にその子供たちはもっとおとなしい長男長女を産む。まあ、このままだと日本は滅びるわネ」だってさ。
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