消費者教育を受ける権利 | 随筆の頁へ トップ頁へ file-No. 040125 |
昨日の新聞で気になる記事が二つあった。その一つは、一昨年高校3年生を対象に実施された「学力テスト」の分析結果である。数学と理科の学力がふるわなかった結果に関係者は、深刻な事態であると重く受け止めていた。当然到達しているべき学力に達しないまま巣立っていくのである。テストと同時に実施されたアンケートでは、4割の生徒はほとんど家で勉強をしていないという。文部省は「標準時数にとらわれず、必要な時間を確保して基礎・基本を徹底すること」と都道府県教委に呼びかけるそうだ。更に今日の新聞では、小学3年生で、9割が鉄棒の「逆上がり」が出来ないと出ていた。少子化がすすみ、昔風にいえば“乳母(おんば)日傘で、蝶よ花よと育てられ”で、高額な小遣いやお年玉で、欲しいものはすぐ手に入るという、過保護な生活が目に浮かぶ。これは学力の基礎・基本が習得できていないということと無関係ではなかろう。
もう一つの記事は、「出会い系利用・デート商法」に関するものである。国民生活センターによると、「デート商法」についての相談件数は2002年度に2124件と、98年度の約4倍に急増しているそうだ。悪質な手口は次第に巧妙になり、出会い系サイトでメール交換しながら、男性の収入や職業などのデータを集め、実際に合う相手を選び出すという。そういった被害を受けながら、消費生活センターに相談に来るのは、ケータイに“うとく”充分な説明もできない“母親”が多く見られると言うから、学力にも増して、事は深刻である。いま時、ケータイなら小学生でも持っている。アクセスしようと思えば、誰もがいつでも簡単に世界中のネットに入ることができる。そういった時代の流れで、普通高校では教科として「情報」が取り入れられたが、くれぐれも操作方法を習熟することで、精通していると勘違いしないことだ。
国民生活審議会が去年出した報告書「21世紀型消費者政策の在り方について」によれば、「消費者は、自立した主体として市場に参画し、積極的に自らの利益を確保する行動が必要である」としている。消費者は、これまでの「保護される者」から「自立した主体」へと位置づけが明確に変わったのである。そのための消費者の権利として報告書には次のように謳っている。これは1962年ケネディ大統領の提唱した「四つの消費者の権利」と1975年フォード大統領が追加した五つ目の権利がベースになっている。
1 |
安全が確保されること |
2 |
必要な情報を知ることができること |
3 |
適切な選択が行えること |
4 |
被害の救済が受けられること |
5 |
消費者教育を受けられること |
6 |
意見が反映されること |
ここで注目したいのは「消費者教育を受けられること」という項目である。情報が信頼おけるかどうかの判断は、自立した消費者の責任においてなすべきことである。自己責任において、情報を正確に把握し、そこに潜む危険を読み取る能力が必要になる。学力の基礎さえ充分に習得できていない子供たちがいるとすれば、「消費者教育を受ける権利」は更に重要なものとなる。しかし考えてみるに、現代の子供たちの能力自体が昔より劣っているとは思えない。激しく変化する社会、少子化による過保護。大人たちが作り上げた社会の流れのなかで翻弄されているだけではないのか。その結果をさも近頃の子供は・・・と論じるのは、違っているのかもしれない。消費者問題は社会がつくった“ツケ”であり、その解決に猶予はない。消費者教育のあり方も、当然即戦力の消費者を育てることが求められる。
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消費者保護基本法改正案了承・・・「消費者の権利」重視 |
自民党の内閣部会は十三日、消費者行政の基本となる「消費者保護基本法」の議員立法による改正案と、企業の不祥事などを内部告発した社員らが、解雇などの不利益な扱いを受けないよう保護する「公益通報者保護法案」をそれぞれ了承した。与党間の調整を経て、今国会に提出される予定だ。 |
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