おじさんの料理 | 初めて作ったカレー |
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私は、定年時に「規律ある自由」を楽しみたいと書いた。速いものでそれから7ヶ月余が過ぎた。規則正しい生活の基本は、何と言っても「食事」と「睡眠」だろう。これが一日のリズムをつくる大きな要素だ。食事は毎日ほぼ同じ時間に取っている。睡眠は、夜11時過ぎに寝て、朝5時過ぎに起きるので、毎日6時間で一定している。更に、朝5時過ぎに起きたら、その日の新聞を読み、昨日の新聞をスクラップし、インターネットのニュースや、メールのチェックをする。今流行の大人のDSトレーニングではないが、音読やそろばん、パソコンのゲームなども毎日やって細胞に渇を入れる。これでだいたい8時過ぎになるので、朝食を取る。さてこれからまるまる一日、自由時間になる。本を読んだり、講座を聴きに行ったり、街に出かけたり、写真を撮りに行ったりと結構忙しい。そして、このところ新しく加わったのが「料理」である。
それまでは、せいぜいインスタントラーメンにお湯を注ぐか、お茶漬けを食べるくらいしかやったことがなかった。私がフライパンで料理を作っているなど、今までの私からは想像しがたい図である。近時、巷では「男の料理」などというのをよく目にする。だが「男の・・・・」というのは、どうも私の性分に合わない。先日の報道では、主婦の仕事を年収に換算すると1500万円相当だそうだ。それを踏まえれば、私の料理など「家事手伝い」の部類である。日常の仕事のほんの一部を手伝うくらいの気持ちでやるのが丁度いい。だから、わざわざ料理教室など行くまでもない。その道40年のベテラン料理人がそばにいる。だが、やるとなったら何事も積極的にやることだ。朝と昼は、だいたい日見子の手を煩わせることなく自分のことは自分でやっている。夕食も、大したことは出来なくても、何もしないで待つより、はるかに活気があっていい。
さて、私にどんな料理が出来るのかということになる。毎日のメニューの中で、自分に出来そうなことを無理せず憶えていく。まず、ミソ汁を作れるようになるだけでもだいぶん違う。フライパンで出来る料理と、焼き魚は簡単でいい。焼き魚なら「さば」「さんま」何でもOKだ。フライパンなら「豚のしょうが焼き」「野菜炒め」「麻婆豆腐」など。もちろん「ベーコン」「目玉焼き」「ウィンナー」などは簡単だ。他にも「アサリの酒蒸し」「豚の紅茶煮」「カレイのから揚げ」「若イカの煮つけ」「カレーライス」「スパゲティ」などがある。これくらいあると、定期的にこのメニューが出てくるから、私が出来るメニューの時は私が必ず作る。焼き魚を焼いている間に、ミソ汁をつくり、レモンやネギを切り、大根を下ろす。生意気にも全部同時に出来上がるように挑戦してみるが、なかなかうまくいかない。日見子はもう一品作りながらも、ちょっとネギを切ってくれたりする。
料理を作るとき、普通の服では飛び跳ねて汚してしまう。そこで、「エプロン」を買おうかと日見子に言うと、どうも私のエプロン姿に乗り気ではないらしい。「作努衣がいいんじゃないの。作努衣を買ってあげるわよ」と言う。作努衣なら持っている甚兵衛でいいかもしれない。ところがこれを着て台所に立つと、何だか「そば打ちの名人」みたいな雰囲気になる。「うーん、ちょっと気が引ける」。
人間、歳を重ねるごとに経験してきたことが記憶として積み重なっていく。毎日の生活のほとんどが記憶されたものだけで回転し進んでいく。新しい刺激に乏しくなる分、時間の経つのを速く感じるようになる。30代より40代、40代より50代とどんどん速く過ぎ去るように思えるのは、刺激のないルーチンワークに毎日が溺れていくからだろう。60代で毎日が日曜日なら尚更である。料理という新しい分野の開拓が、定年後の生活に大いに有効であることは間違いない。
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追伸 | |
その後も、着々と腕を磨いている。「サバのみそ煮」「豚汁」「かきフライ」などの他にも、メインではないが「高菜の油炒め」「さばのふりかけ」なども覚えた。今まで全く料理をしていなかった人でも、やってみれば意外にはまる人も多いのではないだろうか。 「さばのふりかけ」などは、手間の問題だけで、単純だが実にうまい。 因みに手順を下記してみる。 1、骨のない刺身用のさば、片身を2切れ用意。 2、普通に魚を焼く。 3、焼き上がったら、皮をはがして身をほぐし、手つきの鍋に入れる。 4、しょう油を大さじ4杯入れる。味の素を少々。 5、最初の5分くらいは、へらでかき混ぜながら、中火で水分をとばす。 6、その後、へらでほぐしながら弱火でじっくり仕上げる。(魚の大きさで違うが約10分くらい) 7、ふんわり仕上がったら、火をつけたままゴマを入れて少しかき混ぜる。 (ゴマの量は好みで。少々多めでもOK) 8、火を止めて、のり(大判2枚ほど)を手で小さくちぎって混ぜる。 9、器に移して、少し冷めるまで置く。 |