フリーター君 随筆のページへ

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FileNo.040229

数日前、地下鉄終点駅でいつものように降り、改札口に向かった。駅構内出口付近で大きな声がする。「英会話の○○○○です!」「ありがとうございます!」若い人がチラシを配っているようだ。随分元気がいい。大きな声が構内までこだましている。「英会話の○○○○です!」「ありがとうございます!」・・・「あんなに“ありがとうございます”と言っているが、チラシを受け取る人はそんなにはいないぞ」と疑問を持ちながら構内を出た。いかにもフリーターといった感じの若者がチラシを配っている。ところが、数人ではあるが私が見る限りみんなチラシをもらっている。私にも差し出されたので、つい受け取ってしまった。後ろから「ありがとうございます!」と大きな声が追いかけるように聞こえるのも悪くない。通り過ぎてなお、遠くまでフリーター君の声が聞こえる。「ありがとうございます!!」・・・

近年、フリーターの増加で、就業構造も大きく変わってきている。税制も、フリーター増加の影響で所得税が対応しきれるか頭を痛めているようだ。終身雇用が崩れ、賃金も年功型から成果主義へ大きな変化を見せている。新入社員は3年間に3割が辞めると何かで読んだことがある。正社員として就職はせず、人材派遣会社から派遣されて働く人も急増している。先週末、経済指標の好転で日経平均株価は1万1000円台を回復、TOPIXも1082ポイントと年初来高値をつけていた。雇用環境も改善傾向とは言うが、先月(1月)の完全失業率は0.1%悪化していた。男性25才未満が前年に比べ0.1ポイント増の10.5%で、若年層の失業率に歯止めがかかっていないのが悪化の要因のようだ。原因は雇用環境だけでなく、個人の価値観の多様化も無視できない。地下鉄出口のフリーター君が、どんな価値観で生きているのか興味が湧く。

フリーター君は、随分効率のよいチラシ配りをしていた。なぜみんなが受け取ったかを考えてみるに、差し出すタイミングや、差し出す位置もさることながら、決定打はフリーター君の持つあのエネルギーだろう。その言葉にチカラがあった。彼の場合、同じフリーターでも、「積極的フリーター」と呼ぼう。私などにはうらやましいことだが、世の中には何をしてでも生きていけるという自信に満ちている人もいる。政府は去年「若者自立・挑戦プラン」を打ち出した。2005年度までの三年間で、若者の職業的自立を促進し、失業者の増加傾向の転換を目指すという。そのプランの中の一つとして、若者の起業・創業支援がある。若年者など30万人以上を対象とした起業予備軍総合支援サービス「起ちあがれニッポン DREAMGATE」がそれである。地下鉄出口のフリーター君みたいな若者が積極的に起業し、世の中に活気を与えてくれることを期待したい。

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