猫 | 随筆のページへ トップページへ FileNo.060628 |
私の居住するマンションは「ペット可」である。とはいっても管理規約第3条には「住居部分での愛玩用犬・猫についてのみ、次の条件で飼育する場合に限り認めるものとする」として、「手かごに入れての持ち運びできる程度の大きさであること」、「バルコニーへは絶対出さぬこと」、「窓を開けたままブラッシングしないこと」などなど、なかなか厳しい。皆が気持ちよく生活する為に守るべき最低のルールとして仕方ないことだろう。そうゆう訳で我が家の猫は、キャリー・ケースに入れて病院に連れて行く以外は、一歩も外に出していない。ときどき窓辺で外の風を感じながら“たそがれている”姿を見るとちょっとかわいそうな気もする。しかし、ものの本によれば、猫は自分のテリトリーで安心して不自由のない生活が出来ていれば十分満足しているらしい。そのためには、質の高さが必要という。ペットといえども人間(猫)らしく生きる権利はある。
我が家は至れり尽せり、猫に奉仕している。巨大なキャットタワーには、4つの踊り場と外を眺めながら安心して休める箱が用意してある。カーテンの奥の見えないところに、ダンボールの箱を置いたら、こちらの目論見どおり、自分でこつこつと入り口の穴をあけ、隠れ家にしている。ダンボール箱にそっと手を入れると“むにゅ”と特等くじが当たる。そこで、この箱を「福引き会場」と呼んでいる。ベッドの下には、ダンボールの箱を組み合わせて、地下の迷路を作っている。一番奥は姫君の安住の地である。“ウォーターファウンテン”という水のみ場も用意した。これがすごい、24時間休みなく浄水する。ただひたすら、姫君が水を飲むのためだけに働いている。今日は、応接用の椅子を、これまたカーテンの奥に用意し、眠るのに丁度いい具合にセットした。トイレだってこまめに変えてやる。ブラッシングも怠りない。質の高さならどこにも負けない。
百獣の王ライオンもネコ科である。猫ってえらいんです。一緒に暮らしていると、肉食動物だった片りんをいろいろ感じる。自分の高さの何倍もあるタンスに、一気に飛び上がる。私が部屋に出入りするとき、ほんの一瞬のすきをついて音もなく入ってくる。獲物を狙って音もなく忍び寄る野生が生きている。先日、テレビで25メートル上の木の枝から落ちる猫の映像が放送されていた。スローで見ると実にすごい。空中で両手両足を精一杯広げ、しっぽをぐるぐる回してバランスをとっている。まさに空飛ぶムササビ状態で見事に着地した。恐るべき運動能力だ。我が家の猫は、きらきらひかる白い荷ひもが異常にお気に入りである。何をしていても、荷ひもを振り回すとすっ飛んでくる。荷ひもの端を両手で“パシッ”と確保して離さない。“捕まえた今日の大事な大事な獲物(食料)”を離してなるものかと言わんばかりである。これもまた野生の名残りだろう。
私たちが食事をしていると、タンスや水屋のうえからゆったりと眺めている。あたかも、下々の食事を“姫”が天守閣から眺めているがごとくである。高貴な振る舞いである。更に、美人であることを自覚しているふしがある。「そこの美人のお嬢さん」と呼ぶと“んっ、私のこと”と振り向く。美人なだけではない。頭もいい。飼って以来全く粗相をしたことがない。爪を研ぐのも決まった場所でしかやらない。更に人が“ふっ”と物憂げにしていると、癒してあげようと、そっと寄り添うに至っては、ただものではない。これで言葉を話してくれれば言うことない。猫の表情から、考えていることを読み取るのはなかなか難しい。世間には猫語の翻訳機で「ミャウリンガル」というのもあるらしいが、「ニャッ」(YES)と「ウンニャッ」(NO)の二語だけでいい。「お腹すいたか?」「ニャッ」。「風呂に入るか?」「ウンニャッ」。何とか本人(猫)の意思を直接聞けないものか。
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“う〜ん”りりしい | “荷ひも”大好き | 右が「きなこ」、左が「あんこ」 |
これは迷子札です。万一のことを考え、裏に住所・連絡先などを書いています。うちの猫は、革製の首輪がお気に召さないようなので、布製の子犬用の首輪を縫い縮めて使っています。やわらかくて首によくフィットしているので、本人(猫)も気に入ってくれているようです。 |