涙そうそう
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最近ヒットしている曲で「涙そうそう」というのがある。これで「なだ、そうそう」と読む。テレビの歌番組で聞いて、その情感あふれる曲に思わず聞き入った。すでに50万枚に迫らんとするほどのヒットだそうだ。その後何度か聞く機会があったが、何度聞いても感動的な曲だ。という訳で、是非ともクラリネットで演奏してみたいと楽譜とCDを手に入れた。三線(さんしん)の音色と、「夏川りみ」の透明感あふれる声と、哀愁をおびた曲調が見事だ。
この曲の作詞は、森山良子である。若くしてこの世を去った彼女の兄を思って作詞したそうだ。彼女のその思いの深さは、一行一行に充分表現され、聴く人の心に響く。森山良子といえば、私が若かったころ「この広い野原いっぱい」という曲で一世を風靡した歌手で、今なお第一人者として活躍している。最近では「さとうきび畑」という沖縄の歌を歌っている。この「さとうきび畑」は、沖縄の人たちが太平洋戦争で受けた深い悲しみを歌ったものである。それだけに彼女は、心をこめ丁寧に丁寧に、永く永くうたっている。
つつましく永々と生きてきた人々に、ある日突然、沖縄の地形を変えたというほどの、鉄の雨が降り注いだ。一瞬にして平和を奪い去られた沖縄の人たちは、いまだに「米軍基地」という戦争の後遺症に悩まされ続けている。作曲は、その沖縄のフォークグループ「BEGIN」である。「涙そうそう」とは、沖縄の方言で「涙がとまらない」というような意味だそうだ。森山良子の、兄を偲ぶ思いと、「さとうきび畑」で悲しみを歌う心が、BEGINの心に響き、あの哀愁のある曲が出来たのではなかろうか。
CDには、4曲目に「インスツルメンタル・ヴァージョン」が収録してある。簡単にいうと「カラオケ」である。このインスツルメンタルをバックに演奏してみたが、まったく「涙そうそう」の情感は伝わってこない。つまり、この曲はまず「歌詞」ありきなのである。この歌詞をかみ締めながら演奏するところに意味がある。歌手夏川りみにしても、平坦ではなかった人生でやっとつかんだヒット曲である。作詞した人・作曲した人・歌う人それぞれの人生が、「音楽」を通して融合し、我々の心を揺さぶってくれる。質の高さを感じさせる曲である。
PS:2002年度(第44回)日本レコード大賞の各賞が発表になった。「涙そうそう:夏川りみ」「さとうきび畑:森山良子」が金賞に、作詞賞に「森山良子:涙そうそう」が選ばれた。作詞賞の森山良子に拍手を送りたい。出来れば「森山良子版:涙そうそう」というのも聞いてみたいが・・・。いづれにしても、今年のレコード大賞は是非見たいと思う。
大みそかに行われる「第44回日本レコード大賞」(主催日本作曲家協会)の審査委員会が12月3日、当日の中継会場となる東京・赤坂のTBSで行われ、グランプリ、最優秀歌唱賞の有資格となる金賞などをはじめとする各賞が決まった。審査には在京の新聞社、通信社16社が参加。 | ||
■金賞 「Because of you」w-inds. 「キヲク」Every Little Thing 「貴船の宿」川中美幸 「亜麻色の髪の乙女」島谷ひとみ 「女人高野」田川寿美 「涙そうそう」夏川りみ 「Voyage」浜崎あゆみ 「おんな坂」原田悠里 「きよしのズンドコ節」氷川きよし 「Eternal Place」hiro 「LISTEN TO MY HEART」BoA 「さとうきび畑」森山良子 |
■吉田正賞 水森英夫(「星空の秋子」氷川きよし ほか) ■作曲賞 聖川湧「はぐれコキリコ」(成世昌平) ■編曲賞 HΛL「Free&Easy」(浜崎あゆみ)ほか ■作詩賞 森山良子「涙そうそう」(夏川りみ) ■新人賞 椎名佐千子 day after tomorrow 中島美嘉 Lead |
■企画賞 『越天楽のすべて』キングレコード 「大きな古時計」(平井堅)DefSTAR RECORDS 「愛のメリークリスマス」ファイブズエンタテインメント (五木・孝雄+ハロー!プロジェクト聖歌隊) ■特別賞 小澤征爾 ハロー!プロジェクト ■功労賞 橋幸夫 舟木一夫 西郷輝彦 ■特別功労賞 菊池章子 斎藤茂 高橋圭三 村田英雄 山本直純 |