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Ｈ１４・７・１８［　巨人：横浜　］7回裏、トップバッターは4番松井。ピッチャー森中の第５球、１４０ｋｍのストレートに松井のバットが唸りをあげた。豪快なスウィングにボールはドームの天井に向かって高々と舞い上がった。このときＴＶカメラは、横浜のライト・ロドリゲスをとらえていた。一瞬何が起きたのか分からなかった。ロドリゲスは、両手を大きく広げて「オー、ノー」状態である。テレビは、別の角度のカメラをスローで再生した。高々と舞い上がったボールは、なんと天井のシートとシートのつなぎ目に吸い込まれていった。ドーム始まっていらいの快挙（？）である。審判は2累打を宣告した。ドームの規定で天井に当たったり、通り抜けたら2累打らしいが、私には納得いかない。この快挙に、ありきたりの規定など適用してほしくない。ドーム始まっていらいの貴重な出来事であり、空前絶後の可能性もある。ここは特別のジャッジで「ホームラン」としてほしかった。そうすれば、判例としてドームの記録に残り、多くの人の記憶にも残ったであろうに・・・。

しかし、松井は「泰然自若」2累ベースで次に備えた。バッターは清原。ライトへのフライに、松井はタッチアップで、3累を落とし入れた。（拍手）しかし、ここで終わらないのが松井である。豪快さにプラスこの機動力。元木の浅いライトフライに、一瞬の迷いもなく本塁へ突入した。テレビで見ているとまさに「激走」であった。ボールの返球もよかったが、松井は身体を精一杯伸ばし、キャッチャーのグラブをかわして、手の先でホームベースにタッチ。審判は大きく手を広げ「セーフ」を宣告した。（大拍手）幻のホームランに終わったエンタイトル2ベースを、気迫で取り返した「1点」である。見せてくれるではないか。プロはこうでなくてはいけない。ナインから「ナイスラン」の掛け声があったそうだが、松井いわく「ナイスランよりナイスバッティングでしょ」

「簡単そうに見えてね、実はこれが一番難しい。何より価値があると思ってるんだ」
「だって、全然休んでないんだよ」
「行けるところまでいきたい。この記録、自分だけのものじゃなくなってきたから」
これは1181試合連続出場記録に対する松井のコメントである。松井の言うとおり価値ある記録であり「勲章」でもある。プロというエリート集団のなかにあって、日々強靭な身体と精神を維持できなければこの記録はありえない。しかも、球界のトップを維持してのことである。新しい鉄人の誕生である。「優秀な選手は、ケガが少ない」。そこには、プロとしての自分を厳しく律するだけの精神的強さがあり、それがケガをしない卓越した運動神経をサポートする。更に、これだけのすごい事なのに、松井のコメントに気負いがないのがいい。

ホームランバッターなのに、通算打率も3割を維持している。4番バッターなのに2累から3累、ホームへ激走する。厳しい自己管理で1181試合連続出場した。三冠王の可能性も見えてきた松井は常に全力だ。プロ野球の顔として、また球界の4番打者という意味もこめて、あの「消えた魔球」は大岡裁きで「ホームラン」にできなかったものか。ファンとして只々残念である。

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ＰＳ:ボールが発見されたが、松井は「いらない」と言った。「えっ」と言った人は、松井の真意が分かっていない。このボールは「野球博物館」に飾られることになった。松井が1181試合連続出場の時に言った「この記録、自分のものだけじゃなくなってきたから」というコメントは、何事にも通じる。私としては、この快挙に「リアルタイム」で立ち会えたことが嬉しい。