TVドラマ「北の国から」を観て
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このドラマも今回最終回を迎えた。1981年普通のドラマから始まり、21年の永きに渡って創られてきた。このドラマの最大の特徴は、父親「黒板五郎」と二人の子供「蛍」と「純」の成長が、現実の時間の経過とシンクロして創られてきたことである。俳優「中嶋朋子」と「吉岡秀隆」はスタート時、小学校2・3年生であった。それから21年の歳月が過ぎ二人も30歳を越した。今回出演していた「蛍」の子供役「快」君は、現実の中嶋朋子さんの子供であることからも、その時の流れを感じることができる。これは脚本家・倉本聡が心血を注いで書き綴った壮大な大河ドラマである。
昔、ウィスキーのCMに「何も足さない、何も引かない」というのがあった。倉本聡は、ドラマを貫く基本を「何が普通なのか、何が本来の姿なのか、分からなくなってきた時代。本来の姿は何なのかを見せることが、北の国からの意義である」と言っている。私は北海道旅行をした時、富良野を訪れた。自分の目で富良野の景色や町のたたずまいを見たかったのである。ドラマの中では火事で焼失した五郎の丸太小屋が残されていた。そこには「灯りは小さくても、いつもあったかい 北の国から 倉本聡」と書かれていた。人間の本来あるべき姿を、このドラマを通して感じたいと思う。
今回のドラマのサブタイトルは「遺言」である。五郎は、子供たちへ「自然とともに生きよ。そうすれば死なない程度に恵みを受けられる」とメッセージをおくる。五郎から二人の子供へという形で、我々が次の世代に何を引き継げるのかを表現したものであろう。大量生産・大量消費・大量廃棄で、地球環境はバランスを失いつつある。「地球温暖化」「オゾン層の破壊」「熱帯林の減少」「砂漠化」あげればきりがない。ドラマの中には富良野の景色が随所に挿入されている。厳しい自然であるがゆえの心打つ風景。この自然と共存し、人間が生きていく為に必要なだけの恵みを受けるという原点を理解しなければならない。
私が、このドラマの中から感じたことをいくつか挙げてみよう。
1、廃棄物だけで造った家
五郎は、廃棄物だけで家をつくる。資源の有効再利用である。循環型社会には、最適生産・最適消費・最小廃棄のシステムを構築しなければならない。これを推進する基本法として「廃棄物処理法」「建設工事資材再資源化法」「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」などがある。「資源有効利用促進法」では2004年施行を目指す自動車リサイクル法が検討されている。世界第二位の車生産国である日本。その資源の再利用は最小廃棄に大きく貢献するはずである。
2、水力発電・バイオ発電
五郎の家の電気は、小川の流れを利用した水力発電である。自分の必要とするだけの電気を、環境に負荷をかけずに得ている。また、ふん尿による発電も取り上げていた。実用には今一歩という描き方であったが、バイオマスも積極的に推進すべき一分野である。政府は、新エネルギーの一定利用を電力会社などに義務付ける特別措置法案を来春施行の予定だ。環境負荷の少ないエネルギーは、地球が必要としている。
3、トドと漁師の対決
唐十郎扮する漁師が、五郎に食べさせたいとトド漁に出て遭難する。しかし、見事にトドと対決し仕留めて帰ってくる。一対一の対決で、必要な分だけ獲る。これこそ食の原点である。百獣の王だって、サバンナのハンターだって、自分達のお腹を満足させるだけの狩しかしない。大量に作られるハンバーガーが、土地をやせ細らせ砂漠化を進めていることをどれだけの人が知っているだろうか。
「北の国から」の台本の裏には「君たちに残せるものは・・・」と書いてあった。このドラマを通して送られたメッセージを受け止めれば、人間本来の姿が見えてくる。