可也山(かやさん)登山 随筆のページへ

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FileNo.060908


前々から登りたいと思っていた「可也山(かやさん)」に登った。糸島を車で走ると、どこからでもこの可也山が見える。365mの低い山ながら実に形がよく、志摩町のシンボル的な山になっている。そのたたずまいから別名「小富士」とか「糸島富士」と呼ばれる。前々から登りたかったと言っても、登山が趣味とかというのではない。趣味どころか私の人生に、登山の記憶は全くない。ただ、可也山だけはその歴史などからも、一度は登ってみたいと思っていた。低い山とは言っても、車は登山道入り口までなので、まるまる歩いて登らねばならない。一応、この数ヶ月、気合の入ったラジオ体操や、腹筋、マンションの階段の登り下りなど、少しは準備をしてきた。さて、いよいよ決行である。登山口に「遊歩道」という標識があった。「な〜んだ、遊歩道か〜」とちょっと拍子抜けの感じだったが、頂上まで1850m、初めての登山が始まった。


登りだしてみると、遊歩道などとはとんでもない。かなりきつい登りが続く。見上げるような階段が目の前に立ちはだかると、戦意喪失しそうになる。それでも、もう6〜7合目まで登っただろうと思っていたら、何のことはない「山頂まで1100m」の標識があった。「
ク〜(-_-;)」。やっと「石切場跡」にたどり着いた。「山頂まで900m」。ちょうど5合目である。ここにはベンチが用意されており、ほっと一息。巨大な岩を眺めながら、ゆっくり休む。可也山は古くから花崗岩の産出で有名だった。一番有名なのは、1617年建立の「日光東照宮の大鳥居」だろう。黒田長政公がこの可也山から切り出し献上したものだ。「志摩郡御山」から切り出されたという古い記録があるそうだ。よほど良質の石なのだろう。他にも可也山から4kmほどのところにある「支登支石墓群」の巨石も可也山の玄武岩と花崗岩が使われている。さて、座っていては頂上は近づいてこない。




第一展望所まで来た。「水源の森」というかんばんが立っている。「私たちの日常使用している水は、森林から造られています・・・・・右記の標板があるところは“水源の森”に指定された森林です。みんなで“水源の森”を大切に育てましょう」と書いてある。昔からこの可也山から湧き出る水が、麓に住む人々の農業など、生活の基盤を支えてきた。可也山の麓には「一の町遺跡」がある。掘立柱建物などのある大規模な集落跡だ。この遺跡は、魏志倭人伝にでてくる「斯馬国(しまこく)」ではないかと思われている。唐の時代の本「翰苑(かんえん)」には伊都国の傍に「斯馬国」があると書かれている。この遺跡の南側には湧水地点があり、その東側では、農耕儀礼として「水(辺)の祭(祭祀)」が行われていたという。当時の人にとって、この可也山から湧き出る水は極めて大切だったということが分る。



やっと山頂近くまで来た。「可也神社」の石祠(せきし)が見えてきた。この神社には神武天皇が祀られている。可也山は、そのきれいな姿から神奈備山(かむなび:天孫が降臨した峰)とされ、古くから信仰の対象だったという。私もジーパン姿ながら、気持ちだけは正式参拝をした。その横に何やらいっぱい書いてある。もう消えかかって最後だけしか読めない。“天平八年(736)新羅に使いする人の歌に「草枕 旅を苦しみ 恋おれは 可也の山べに さ男鹿鳴くも」があります”と書いてある。遣新羅使が糸島の海岸で詠んだ歌のようだ。

山頂にはテレビの中継局がある。NHK・TNCなどの共同アンテナだ。上の写真は、最近開局したデジタル放送の中継局だそうだ。そして遂に「可也山山頂 標高365m」の標識があった。山頂の展望所は、その先100mのところにある。展望所に行くと、絶景が目の前に広がる。\(^o^)/山に登りきった達成感と目の前のすばらしい景色で疲れも吹っ飛ぶ。山に登る人はこの感触がまた山に登らせるのだろう。さて十分に景色を楽しんだあとは、恐怖の下山が待っている。何が何でも下りなければならない。すばらしい景色で吹っ飛んだのは精神的なものだけ。初心者の私の足はガクガクしている。セミや小鳥の大合唱の応援を受けながら、ゆっくり、ゆっくり下りていく。天に向かってまっすぐに伸びた木々の間を吹き抜けてくる風は、ひんやりとして気持ちがいい。下山したところにある自販機で買ったコカ・コーラが乾ききった“のど”にしみわたった。
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可也山付近地図と眺望

@志登支石墓群付近より

A志摩町東貝塚:小富士園付近から

B前原市中心街から

2006/10/24 TV「ジャポニカロゴス」より
「山」の読み方「・・・さん」と「・・・やま」の使い分けのルールは?
 「・・・さん」  → 神の山・信仰の対象の山  富士山・可也山
「・・・やま」  → その他の山 浅間山・嵐山

日本に「山」とつくのは 13.530 あり、内「やま」が11.424、 「さん」と呼ばれるのが 2.106 あるそうです。

( ちなみにこの問題、タモリさんは正解でした。m(__)m )