映画「ザ・インタープリター」 随筆の頁へ

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File No.050603

ニコール・キッドマンの美しさに、ますます磨きがかかり冴えわたっている。ふちなしめがねでヘッドホンをつけた通訳ブースの姿、黒のジャケットとパンツで国連内を颯爽と歩く姿、髪を無造作に後で結わえた姿。どのカットも「ニコール・キッドマン ショウ」みたいである。一点非の打ち所のない、完全無欠の美と言えばほめ過ぎか。暗く重たい過去を背負う役柄が、整った顔立ちをいっそうキリっとさせる。今回ニューヨークの街をバイクで走るシーンがある。ニコール・キッドマンのヘルメットにサングラス姿もまたいい。聞くところによると、乗っているバイクは「ローマの休日」でヘップバーンが乗っていたのと同じらしい(?)この映画は、映画史上はじめて、国連内で撮影された。ヒッチ・コックの「北北西に進路を取れ」での国連シーンは、撮影許可が下りずセット撮影だったそうだ。今回アナン事務総長は、安保理15人のメンバーが許可を出したら、という条件付きで許可したと言う。「シルヴィアが国連の理念に共鳴している人物」であることも事務総長を動かした一因のようだ。そのシルヴィアは、映画の中の架空の国「マトボ」の出身となっている。「マトボ」は独裁者による大虐殺が行われた国という設定である。映画の最初に、少年が無表情に平然と銃で撃ち殺すシーンは慄然とする。こういう問題は、やはり国連が機能するところである。

国連と言えば、今 日本の「安保常任理事国」入りで揺れている。本音では理事国を増やしたくない米国だが、日本の常任理事国入りは支持している。アナン事務総長からも、日本の理事国入りを容認するような発言があっていた。しかし中国と韓国は反対している。多数派工作も余談を許さない状況にあるようだ。イラク戦争に突入したときは、米英と仏独露が対立し国連が機能しなかった。映画の中では、国連内のツアーのシーンがあって、加盟国が191カ国などの説明をしていた。戦後60年、相変わらず戦勝国の五カ国だけが強大ではバランスを欠く。日本をはじめアジア、アフリカなどを代表する国の常任理事国入りは必要である。日本は拒否権に固執してないようだが、真に国連を機能させるなら、拒否権なんて無くせばいい。とは言うものの、提案すればそれこそ拒否権を行使されてつぶされるだろう。

最初この映画の題名を見たとき、一瞬コンピュータ関係の映画かと勘違いした。昔々、初期のパソコン時代、今では全く耳にしなくなったBASICやインタープリタ、コンパイラ、マシン語といった言葉が普通に使われていた。「インタープリタ」も「コンパイラ」もBASICやCOBOLなどで書かれたプログラムを、マシン語に変換するソフトだ。「インタープリタ」はプログラムをマシン語に変換しながら作業を処理していく。今回のニコール・キッドマンの職業「同時通訳」は確かに「インタープリタ」である。映画の中では、「『晴天の霹靂(ヘキレキ)』って訳せる?」『難しいわね』などという会話が出てくる。これに対し、前もって全てを翻訳する「字幕スーパー」は「コンパイラ」と言えるだろう。「晴天の霹靂」の会話も、どういう英語か分らないが、前もって翻訳していた訳だ。先日の新聞 (05/05/14西日本新聞)に「字幕屋も時代とともに」という字幕翻訳家・太田直子さんの随筆が載っていた。偶然だが先日、買ったDVDの「ボディガード」は、太田直子さんの字幕作品だそうだ。随筆は、「臭そうな物には全部ふた」という用語の規制に対し、字幕屋生命を懸けても譲れない一線、という自分の信念の間で戦っている様子が伺える興味深い内容だった。彼女の「控えめながら、妥協せず」という言葉に重みと深さを感じた次第である。

映画のなかでニコール・キッドマンがショーン・ペンに対して「うそつき」というシーンがある。「うそつき」といえば、テレビ番組「トリビアの泉」の「ガセビア」のコーナーだ。このコーナーで、ガセネタを紹介したあと、女性が毎週違う場面設定で、カメラに向かって「うそつき」という。『ニコール・キッドマンのシーンを「トリビアの泉」で使ったらすごいだろう。だがとてもそんな予算はないよな』なんて思いながら見ていた。なんてったって「シャネルNo.5」のCMでは、370万ドルのギャラで、ギネスに載るくらいだから・・・。今回の映画のパンフレットの最終ページには腕時計「OMEGA」の広告が出ている。「NICOLE KIDMAN MY CHOICE」下の隅に小さく¥1.785.000と書いてあった。

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STORY
監督:シドニー・ポラック
出演:ニコール・キッドマン、ショーン・ペン
ニューヨークの国連本部。シルヴィア・ブルーム(ニコール・キッドマン)は忘れ物を取りに、通訳ブースに戻った。そこで何者かが「先生は生きてここを出られない」と“クー語”で話すのを聞いてしまう。数日後マトボのズワーニ大統領が国連で演説をする。先生とは大統領のことを指している。彼女の周りに不信な人物が動き始める。暗殺計画を聞いて乗り込んできたのは、シークレットサービスのトビン・ケラー(ショーン・ペン)たち。捜査が進むにつれ、シルヴィアの過去が明らかになっていく。ブルックリンで亡命生活を送るクマン・クマンは、暗殺の動機が十分にある一人。そのクマン・クマンに会うために、同じバスに乗ったシルヴィア。クマン・クマンから「濡れ衣だ」と聞きバスを降りる。その直後、テロによってバスは爆発する。